勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

諦めることは許さないポチ

「ポチさんやい、なんかありがとな」

「何がだ」

 物凄く強引に冒険者ギルドから出て迷宮に向かう中、ポチにそんなことを言ってみた。
 小さいと言われただけで殺気を出すほど怒るのは過剰すぎる気もするが、なんだか嬉しいのだ。
 内容は小さなことだが、誰がか自分のために怒ってくれるというのは、
 改めて考えるととても幸せなことだと感じた。 

「色々と」

「そうか、まぁ、感謝するが良いぞ」

 本日二度目の迷宮に辿り着いた俺たちは早速中に入り込み
 看板など無視してガツガツと進んでいく。
 手紙があった場所には相変わらず散らかっているが、 
 すべて悪魔らしき魔物にやられたであろう人々の物なのでそう簡単に動かす勇気が出ないため
 踏まないように慎重に進んでいく。ちなみにポチは堂々と踏みつけているぞ。

「ん~」

 少し進んだだけでかなり雰囲気が変わった。煉瓦造りなのは変わっていないのだが、
 物凄く嫌な感じがする。特にイラついているわけではないのにイライラとする。
 これも最奥にいる魔物の影響なのだろう。
 と言っても支障が出たりするほどのものではないので無視安定だ。
 ここではスキルが使用不可のため、身体強化等は使えないが、
 エキサラやポチ、ヘリム相手に訓練していたのだがら生身でもなんとか行けそうな気がする。

 武器は勿論、具現化する。
 何時もの短剣をイメージして魔力を流し込み具現化させる。

「よし、何時でも出てくるが良い」

 準備万端。いつでも出てくるが良い。と意気込んだは良いものの、
 あの手紙を書いた人――お父さんと呼ぼう。
 お父さんが一体どこまで敵を倒しきれたのかが重要なのだ。
 流石にこんな序盤でやられたりはしていないだろう。
 現に魔物はいないようだし、一応警戒は怠らないが。

「ポチ、気配は感じる?」

「ああ、と言っても正確な位置までは分からない。
 この壁全体から気配が発せられているからな」

「なるほど……」

 手紙にも書いてあったように魔物は壁から生まれる。
 壁も魔物の一部と考えてよいだろう。
 警告された通り壁には近付かないようにしておくに進んでいくと、
 ポチが何かを感じ取ったようで足を止めるように言ってきた。

「来るぞ」

「お?」

 前方から身体をゆらゆらと揺らしながら全身が真っ赤で身体の彼方此方から
 目玉が覗いているなぞの魔物が現れた。見た目からしてかなり来るものがある。
 それに移動速度はかなり遅いのだが、動くたびにネチョネチョと不快な音を立てている。

「うへぇ……こいつと戦うのかぁ」

 ここで出てきたということはお父さんは此処で力尽きてしまったということだろう。
 最奥までどのくらい距離があるのかわからないため、中間かどうかもわからないが、
 取り敢えずお疲れさまでした。

「確か四肢と頭と心臓を一瞬にして切り離す……」

 よく考えると物凄い無茶を言っていないか?
 身体強化が使えていたのならば人外の動きで可能だったかもしれないが、
 今の俺の状態でそんなに素早く動けるのだろうか。

「取り敢えずやってみるか」

 やってみなければわからない。
 取り敢えず何の策も練らずに突っ込み、勢いに任せて頭を刎ねた
 見た目はグロテスクでもこの最高の切れ味を持つ短剣の前では関係ない。
 急いで四肢を狙おうとするのだが――

「は!?」

 刎ねられた頭が不気味に動き出しもう一体の化け物と化し、
 頭を刎ねられた個体は直ぐに復活していた。

「はやすぎる……」

 急いで距離を取る。

「これ、ちょっと厳しいかもしれないな……」

 そんな弱音を吐くとポチが肩にポンと優しく手を置いた。
 
「?」

「諦めるな。増えたやつは我が処理する。ソラなら出来るぞ
 まだ時間はたっぷりあるからな」

「……頑張る」

 流石ポチだ。諦めることを許してくれない。
 正直に言ってこのままだと何回やっても不可能だろう。
 このままだと。一応スキルを使わなくとも人外並みの力を得ることが出来る方法はある。

「ふぅ……」

 久しぶりにやる為、成功するかどうかはわからないが、
 後処理はすべてポチがやってくれるので安心だ。
 発動条件は……興奮することだっけ……本当にあの御婆さん適当だよなぁ
 とりあえず気分が高まるまで何度でも突っ込んでみるか――。

 ちなみに、ポチは四肢や頭、心臓関係なしに化け物の全体を一瞬にして消し去っていた。
 流石ポチさんだ。

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