勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

手紙を渡そう

「ん~、なんか物凄いことを託されてしまったような気がするぞ」

 軽い気持ちでこの行方不明者多数地帯に足を踏み入れ、手紙を読み、
 正直に言って後悔している。こんなに重たい内容ならば読まなければよかった。 

「気に食わないな」

「ん、何がだ?」

「我とソラの事を大莫迦者と言ったり可哀そうな奴と言っている事だ」

「なるほど」

 確かに手紙にはそう書いてあったが、別に俺たちを限定していっているわけではなく、
 ここに入って来るであろう者たちに送った言葉なのだから、
 そこは気にするところではない。と思うのだが、まぁ、ポチだからね。
 ここは全力でそれに乗ることにしよう。その方が絶対に楽しいに決まってる。

「確かに言われてみればムカつくな」

「ああ、どうせこの手紙を書いたやつも悪魔とやらのペットになっているのだろう。
 悪魔よりそいつの事を一発殴りに行くのはどうだ?」

 ポチから物凄く愉快な提案が飛び出した。
 物凄く楽しそうだ。今すぐにでも最奥に行ってみたいところだが――

「その前にいったん戻って依頼を受けてくるとしよう。
 俺たちの怒りも解消できて依頼も達成できる。一石二鳥ではないか?」

「そうだな――でもどうやって戻るつもりなんだ?
 扉は開かなくてスキルは使えないのだろう?」

 手紙に書いてあったように、確かめてみると本当に扉は開かなかった。
 開かなかったというよりは入り口が消滅していたのだ。そこは暗闇と化し、なにもない。
 それにスキルも本当に使えないようだ。
 だが、俺たちにはそんなこと全く関係ないのだ。
 何故って?そりゃ、俺の横にはスキルなんて一切使えない最強さんがいるのだから。

「スキル以外なら使えるだろう。試してみてくれ」

「ああ、そういうことか。やってみよう」

 そう言い終えた瞬間、ポチの姿は一瞬にして消え去った。
 おそらく魔法か加護を使って転移したのだろう。
 
「成功だな」

 直ぐに此方からは開けられない入り口からポチが現れた。
 
「ああ、でももう一度出てみてくれないか?次はこれをもっていってほしい」

 俺は頑丈なロープをイメージし魔力を流し込み具現化させる――
 そして現れた結構長めのロープをポチに渡した。
 説明は必要ない。ポチはロープを受け取るとなるほどなと呟き再び姿を消した。
 そしてその数秒後に真っ黒で何も見えない入り口から一本のロープが伸びてきた。

「成功かな?」

 そのロープをしっかりと掴んで、よいしょ、よいしょと暗闇の中を進んでいく――
 すると予想通りに暗闇からすんなりと抜ける出すことができた。
 
「色々と抜けているなその悪魔とやら」

「だな。これをやると物凄くつまらなくなるが、
 ここから大量の水を流し込んでしまえば奴らは何もできずに溺死するだろうな」

「おい、それはやめろ。我の楽し――違う、この怒りをどこにぶつければ良いのだ」

「分かってるって」

 何やら楽という言葉が聞こえた気がするが、気にしないでおこう。
 実際に俺も楽しみなのだから。ポチが楽しみであっても不思議ではない。
 それから俺たちは再び階段を上って冒険者ギルドに向かった。
 
「なぁ、ポチ。この手紙どうしたら良いと思う?」

 道中、持ってきてしまった手紙を片手にそんなことを尋ねた。
 
「さあな、そいつの家族にでも渡せば良いんじゃないか?」

「おお、流石ポチ」

 てっきり捨てろとでも言われるかと思っていたが、家族に渡すという処分の仕方もあったか。
 確か手紙に娘の名前が書いてあったからあとは冒険者ギルドの力を借りて
 この手紙を娘さんに届けて上げよう。ああ、なんて優しいのだろうか。
 冒険者ギルドに着くと早速カウンターに向かう。

「冒険者ギルドにようこそ」

 褐色で耳が尖ってナイスバディな闇精霊人《ダークエルフ》さんが元気よくそう発した。
 なんだか懐かしい感じだ。

「えっと、この手紙を渡したい人がいるんだけど……」

「手紙ですか?」

「うん、内容を見てくれれば分かると思うから読んでくれない?」

「は、はぁ、わかりました」

 いきなり子供に手紙を渡されて読めと言われれば悪戯か何かだと思われても仕方がない。
 若干怪しみつつも受付嬢さんは手紙を読みは始めた。
 内容がアレなので結構読むのには時間が掛かるだろう。

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