勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

手紙

「ん~暗い。ポチさんやい明かり頼む」

 ポチが光の球体を中に放り投げると辺り一帯が照らされる。
 そこには沢山のリュックや装備品が散らばっていた。
 
「散らかってるなぁ」

 何か良い物が落ちてないか一応探ってみる。
 まだまだ食べれそうな食料が沢山ある。

「ソラよ。なんか刺さっているぞ」

「ん~本当だ」

 ポチが指さす先には、手紙が短剣に突き刺されそのまま壁に固定されているものだ
 行方不明者が何かを伝えようとしたのだろうか。でも何故入口の近くに……
 そんな事を思いながらポチに短剣を抜いてもらい、手紙を受け取り読んでみる。

 ああ、最悪だ。俺の名前はオウーヌ。王国の騎士でSランクの冒険者だ。
 この手紙を手にしているのは、どこかの国の冒険者か騎士。それか命知らずの大莫迦者だ。
 お前がこの手紙を読んでいる時には俺はもう死んでいる。多分お前も死ぬよ。この迷宮で。
 此処は迷宮なんかじゃねぇ、化け物の身体の一部だと俺は思う。だから出れねぇ。
 何度も出ようとしたが入口は閉まってビクともしなかった。
 
 俺たちは迷宮に新たな道が出たと知り王国の騎士と共に此処に足を踏み入れたんだ。
 数週間分の食料を持って10人で。だが、そこでもう俺たちの命は尽きていたんだ。
 まず俺たちは此処に危険な魔物が居ないか、罠が無いかを調べる為に慎重に進んでいった。
 調査は嘘の様にスムーズに進んだ。そのスムーズ差が不気味だった。
 魔物も居なければ罠もなかった。そして最奥にある扉を開け――俺たちは絶句した。

 そこには化け物がいた。悪魔がいた。奴らは――恐らく行方不明者の誰かだろう。
 その行方不明者の事を奴らは玩具の様に扱っていやがった。
 四肢を切断し、首輪を付けて引きずり――クソッタレ!反吐が出る。
 奴らは見た所二体の悪魔だ。数十人が犠牲になっており、切り取られた四肢は一つの塊となり
 部屋の中央に置かれ、不気味に鼓動を打っていた。

 その光景を目にした俺たちは誰も動くことが出来なかった。
 今まで色んな魔物と戦ってきた俺たちが動くことが出来なかったんだ。
 そして奴らが此方に気が付きた。一瞬にして鳥肌が立った。
 俺は必死になって叫び声を上げてその場から急いで逃げた。
 数人は動けずにその場に留まっていた。だが、そんな事気にしている余裕は無かった。

 俺たちは必死に逃げた――だが、奴らは逃げた先にも居た。
 最初から俺たちを見ていたのだ。壁から何体もわきでてきやがった。
 仲間の断末魔が聞こえる。俺は見向きもせずに逃げた。必死に逃げた。
 入口の部屋にだけは奴らは現れなかった。そして気が付けば俺は一人になっていた。
 情けない。Sランク?笑わせるな。俺は只の人間だ。弱いちっぽけな人間だ。

 情けない本当に俺は情けない。どうやって報告すれば良いのだろうか。
 クタクタになりつつ俺は出ようとした――だが、扉は開かなかった。
 何をしても開かない。スキルを使おうとした。だが、それも叶わなかった。
 スキルが発動しないんだ。どうやら此処はスキルが封印される空間の様だ。

 終わった。俺も此処で死ぬのだと。犠牲になった仲間たちに申し訳ない。
 見捨てて逃げてきたのにこの事を誰にも知らせる事を出来ずに死ぬ。
 それだけはなんとしてでも避けねばならなかった。
 だから俺は手紙を書くことにしたのだ。

 数日間は怖くて動くことが出来なかった。やっと動き出したのは此処に入ってから三日後。
 武器を手に進みだした。あの化け物が現れる事があれば即座に斬りかかった。
 だが、すんなりと斬れたが、奴らは分身したのだ。それを確認した俺は急いで退却した。
 ある程度の情報が集まるまで俺は行動を続けた。
 
 壁には近づくな。奴らは壁から生まれる。明かりをつけるな。
 光があればあるほど奴らは強くなり集まってくる。
 壁に穴を開けて出ようとするな。その攻撃は全て自分に返ってくる。
 俺はそれで左眼を失った。
 奴らを倒すには生半可な攻撃じゃだめだ。一瞬にして頭、四肢、心臓を切り離せ。
 それが奴らを倒す唯一の方法だ。

 後一週間分の食料は残っている。だが俺はこれを残すことにする。
 俺は今から最奥に行く。怖えよ。今すぐにでも逃げ出したい。
 だけどそれは出来ないんだ。次に此処にくる可哀想な奴の為に行動する。
 それが情けない俺が出来る唯一の償いなんだ。

 ああ、怖い。ここまで良く頑張った。さあ、最後だ。俺は行くぞ。
 ごめんなレディア。お前の成長を見守る事が出来なかった。
 情けない父を許してくれ。俺が何処まで奴らを排除できるか分からないが、
 此処から先は手紙を読んだお前に掛かっている。
 無責任だと言う事は分かっている。だが、どうせお前も出られないんだ。
 
 奴らを倒すために協力してくれ。







 



 では、天国で会おう勇敢な戦士よ。

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