勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

水の都

 一度リーン王国に戻り荷物を取り、ギル君と別れ俺とポチは数日間ぶらぶらと歩き続けた。
 現れた魔物は即座にポチによって処理され、特に問題なく進み、
 今、目の前には巨大な水の王国の様な国がある。
 国を囲むように透き通った川が流れており、城壁の天辺からは水が落ちてきており、
 川と合流して流れて行く。城壁からチラリと頭を覗かしている城の周りからも水が噴水の様に出ている。

「涼しそうなところだな」

「どうする?何かびちょびちょになりそうなところだけど、入る?」

「うむ、そろそろ風呂に入りたいからな」

「なら決定だな」

 此処はエリルスの記憶を辿っても全く情報の無い国の為、
 彼女が封印されている間に出来た結構新しい国だと言う事だ。
 正直に言って今までとは違う為ワクワクしている。
 国に入るための唯一の道は川に架かっている橋のみの様だ。

 第一印象が大切なので、出来るだけ怪しまれない様に、
 此処でも姉弟と言う設定で行く。仲の良い姉弟だと思われる様にしっかりと手を繋いで橋を渡る。
 当然だが、門の前には門兵さんがいる。装備は何処の国も似たような感じだ。

「は~い、止まってくださいね」

 今までとは違いかたい感じの門兵ではなく若干軽めの口調だ。
 此方の方が話し安くて良いのだが、国に犯罪者などを入れない為にいる存在と言う事を考えれば、
 かたい口調の方が良いのかもしれない。

「何か身分を証明できるモノありますか?」

「これか」

「おっ、ギルドカードですか。まだお若いのに冒険者とは凄い!
 はいはい!これでも十分ですよ――って、君も冒険者なのか!?」

「うん」

 ポチがギルドカードを提示したため俺も門兵の人に見せると驚かれてしまった。
 Dランクなので大した事はないと思うのだが、やはり見た目の問題なのだろう。

「いや~最近の子は凄いなぁ。ちょっと待っててね」

 門兵はギルドカードを持って小部屋の中に入っていってしまった。
 それから数秒で門兵は戻って来てギルドカードを返してくれた。

「お二人とも犯罪歴は無いようですね。どうぞ、水の都アヴェルアイにようこそ!」

「うむ」

 どうやら、あの小部屋で犯罪歴の有無を確認していた様だ。
 意外としっかりしており安心だ。案の定、此処は水の都らしい。
 至る所に噴水や小さな観賞用の池の様なものがあり、非常に涼し気な国だ。
 国民たちも心なしか肌が潤っているように見える。
 
「何か凄い所だな」

「そうだな、これが全部温泉だったら最高だ」

「温泉ね、探せばありそうだよな」

 意外と温泉好きなポチさん。恐らくエキサラの城が原因だろう。
 残念ながらエリルスの記憶には温泉の国など存在していない。
 だが、だからと言って無いとは限らない。
 この水の国の様にエリルスが知らないだけかも知れないのだから。
 可能性はある。そのうち探してみよう。俺自身も非常に興味がある。

「取り敢えず宿探そうか」

「ああ」

 冒険者ギルドに行って依頼を受けてお金を稼ぐまでは、贅沢な宿には泊まれないが、
 最低限しっかりとしたお風呂が付いていれば満足だ。
 
「すいません!」

「おう?なんだちびっ子」

 取り敢えず適当に声を掛けて宿の位置を聞いてみることにした。
 筋肉で服がはじけそうな程ムキムキで顔がものすごく怖いお兄さんに声を掛けてしまったのだが、
 見た目によらず優しくて安心した。怖い男の人でちびっ子と言ってくれる人は大体良い人だ。

「風呂付の宿ってない?」

「ん、風呂付の宿かぁ、ならパロウってところがお勧めだぞ。
 この先に噴水があるからそこを右に曲がれば着くぞ」

「ん!ありがとう!行ってみるね!」

「おう、行って来い!」

 お兄さんに言われた通りに進み噴水の所で右に曲がると
 確か居パロウと看板の宿屋があった。外見は立派な石煉瓦造りだ。
 これなら恐らく内装も立派だろうし安心だ。

「此処で良い?」

「ああ、問題ない」

「それじゃ、部屋取りは任せたよ」

「ああ」

 中がボロボロと言うギャップなどは無く、普通に立派な造りで良い匂いがする。
 カウンターに行き、ポチに受付をしてもらう。

「はい、いらっしゃ~い」

「取り敢えず一日、二人で一人部屋」

 てっきりおばちゃんがやっているのかと思ったが、カウンターにいるのは
 ポチ(大人の姿の容姿)と大して変わらない若さの女性だった。

「はい。わかりました~ちなみに料金は一人分で良いですよ」

「ほう、何故だ?」

「だって、部屋を一つ貸すだけなんだから一人分で十分でしょ」

「そうか」

 色々と抜けているお姉さんの様な気がするが、安く済むならそれに越したことは無い。
 これで宿をは取れたので次は冒険者ギルドに向かう事にした。

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