勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

次なる場所へ

「ただいま――ってこれは一体……」

「おかえりなさい!」

 勢いよく戻ってきたのは良いものの、目の前には良く知った顔が転がっていた。
 平然としているポチ、元気よくおかえりと言って来るギル君。
 恐らくだがギル君は師匠の影響なのだろう。
 
「これってユリさん?」

「そのような名前だったか。何時もの受付嬢で間違いない」

「……こうなった理由を聞かせてくれ」

 結構仲良くしていた相手だったため、少しだけショックだ。
 何故彼女がこうなっているのだろうか。
 ポチの事だから何かあっての行動なのだろう。

「先にこいつが襲ってきたのだ。理由を聞く前に殺したから知らぬが、
 取り敢えず洗脳の影響で魔王討伐一直線の勇者たちの邪魔をしてほしくなかったらしいぞ。
 私達、とか気になる言葉も発していたな」

「……そっか。少し悲しいな」

 事情は良く分からないが、
 敵意があって安心した。どうやら神の他にも何やら面倒な奴らが居る様だ。
 何時の日か戦う日が来るのだろうか……その時は、絶対に容赦はしない。
 
「ギル君、お疲れさま。無事洗脳は解けたよありがとう
 一仕事終えたばかりで悪いんだけど、この子の呪い解除してくれないかな?」

「はい!わかりました!!」

 色々と気持ちの整理が付いていないのだが、今はそんな場合ではない。
 折角洗脳を解いたのにそれが無駄になってしまうかもしれない。

「なんだ、手加減してやったのに耐えられなかったのか」

「ポチさんやい、次からはスライムを相手にすると思って手加減してくれよ。
 もちろん、こっちの世界でのスライムだからな」

 流石に言い過ぎかもしれないが、ポチには言い過ぎ程度が丁度良いのだ。
 どうせスライム相手と言ってもやり過ぎてしまうのだから。

「呪いの解除終わりました!」

「うむ、ご苦労。じゃあちょっと元の場所に戻してくるから少し待ってってくれ」

 再びシズカの身体を持ち上げてスイスイと移動して先ほどの位置に戻した。
 これで本当に目的は達成だ。此処までやったのだから勇者の面倒を見るべきだと言う人もいるだろうが、
 そんな面倒な事はやらない。後はこいつら次第だ。
 俺的はこのまま何処かに姿を消して数年後に最強になって現れて
 神々をポイポイと倒してくれるとありがたい。

「じゃあな」

 目が覚めて色々と話しかけられるのは非常に面倒なので、さっさとこの場から去る。
 ポチの下に戻り、一応ユリさんの遺体をしっかりと処理して手を合わせてから森を出る。
 
「これからどうしようかなぁ」

「我は何処にでもついていくぞ」

「リーン王国には帰らないんですか?」

 荷物を取るために一度は帰る予定だが、長期滞在するのは危険だろう。
 
「一応王国の兵士たちぶっ飛ばしてるからなぁ、ギル君も暫くは近付かない方が良いと思うぞ
 あぁ、そうだ、これ報酬のお金ね。これで師匠も文句はないだろう」

 今のリーン王国からしてみれば俺は完全なる悪なのだ。
 べつに滞在しても良いが、絶対に落ち着いた日々は送れないだろう。
 ケルベロス討伐で貰った報酬のお金が入っている袋を取り出して
 ポイと放り投げた。慌ててキャッチするギル君だったが、予想以上の重みにバランスを崩したが、
 訓練のお蔭で転ぶことは無く何とか体制を立て直して改めて驚いていた。

「こ、こんなに!?」

「ああ、今回の君の働きは其れ位の価値がある」

「おい、ソラよ。全額ではないのか?良いのか?」

 ポチが言う様に、あの袋には、ほぼ全額が入っているのだが、
 執事服のポケットには金貨が一枚だけ入っているため、数日間は困らない。
 
「ああ、どうせまた稼げば良いだけだろ?」

「まぁそうだな」

「……こんなに……ありがとうございます」

「師匠に自慢してやれ、俺は勇者を助けたんだ!って」

「多分師匠なら何の興味も示さないと思いますよ」

 本当に彼の師匠とはどんな人物なのか。
 弟子が勇者を助けたと言っても興味すら示さないとは……
 そうとうな実力者だと言う事は分かっているが、これは要注意人物かもしれない。

「ん~次は何処に行こうか」

 次行く場所ではリーン王国では全くできなかった情報収集もしていきたいところだ。

「適当に歩いていれば何処かには着くだろう」

「お、それも良いな。冒険らしい」

 今回は記憶を頼って歩くのではなく行きたい方向へとぶらぶらして
 その先にある場所に行く事にしよう。

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コメント

  • ノベルバユーザー212252

    魔王城にいけばすぐにヤミたちの場所もわかると思うんだけど、、、

    0
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