勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

洗脳解除

苦痛は快感へペインプレジャー被虐性欲壁マゾヒストウォール!」

 いきなり勇者マコトがおかしなことを叫び出し、頭がおかしくなったのかと思ったが、
 思い出してみればそんなスキルがあったなーと頭の隅から蘇ってきた。
 これで勇者マコトは一部がもっこりと活性化する代わりに防御力が物凄く上がったと言う訳だ。
 彼を護るような形で半透明の緑色の巨大な盾がグルリと発生している。

「二人とも後ろに」

 防御力が一番戦いマコトが前にでてその後ろにタツノスケ、最後にシズカだ。
 
「――」

 シズカが何やらぶつぶつと呟き始めた。恐らく何らかの詠唱をしているのだろう。
 そんな事しなくても良いのに……って確かアイツのスキルってやばくなかったか?
 ……たぶんポチがいるから大丈夫だと思うがギル君が巻き込まれたりしないだろうか……

「せいやっ!」

 一応不安だったため俺は直ぐに行動に移し、一番邪魔な盾役をしているマコトを
 吹き飛ばそうとしたのだが、予想以上に盾が強く今まで斬れなかったモノはなかった
 具現化された短剣でも弾かれてしまった。
 切り裂く事は叶わなかったが確実にダメージを与える事が出来た様で
 半透明の盾がさらに薄くなり消えかかっていた。

「本当に勇者ってのは異常すぎんだろ。
 下半身もカッチカッチで盾もカッチカッチとか、本当に勘弁してほしい」

 あと数回斬りかかれば確実に突破できるのだが、
 そんな事している間にシズカのスキルが発動されてしまうかもしれないので
 此処は手っ取り早く――

「地面にそのカッチカッチのモノ擦っとけ」

 重力操作《グラビティ・コントロール》でドカーンと勢いよく地面に叩きつけると同時に
 彼の盾はパリンと音を立てて割れていった。
 最初からこうしていれば良かったと少し反省だ。
  本当はもっとじっくりと戦い実力を確かめて行きたかったのだが、
 流石にギル君の命が掛かっているかも知れない状況となれば
 そんな事言ってられないため全員重力操作《グラビティ・コントロール》で地面に沈めた。

「残念だけど、仕方ないかなぁ」

 そんな事を呟きながらシズカの下へと向かい詠唱が中断されている事を確認してから
 彼女の重力操作だけを解いた。

「くっ……強い」

「ふっ、俺からしてみればお前らもかなり強いぞ。
 あと数年もすれば軽くに魔王を倒せるようになるだろうな」

 最強の盾、攻撃、防御に優れている者、最強の遠距離スキル所持者。
 この三人がしっかりと育っていくのならば軽く魔王たちを超えるだろう。
 まぁ、そうなるにはまずは洗脳を解いてやらないとな。
 そろそろポチさんが――おっ、きたきた。

 背後から途轍もない魔力の放出を感じ、同時に禍々しい何かが飛んできた。
 見なくても分かるが、これは完全にやばいやつだ。
 
「な、なんですか……」

 彼女も見ればわかったのだろう。あれはやばいやつだと。
 見る見るうちに顔色が悪くなって汗も大量に溢れ出している。

「何だろうなぁ」

状態異常耐性魔王を倒すのは私だ――っあぁああああっあああ!」

 まんまとキーワードを発した事によりギル君の状態異常解除が発動し、
 彼女を中心に眩い光が放たれ彼女たちから黒い物体が抜けて行くのを確認した。
 恐らくあれが洗脳の元だったのだろう。これで目的は達成したのだが、
 シズカの状態異常耐性のスキルレベルでは発動したところで
 ポチの呪いに叶うはずも無く、禍々しい魔力の塊に呑まれてしまった。

――失明、吐き気、両手足麻痺、酔い、攻撃力低下、防御力低下、魔力低下、混乱、腹痛、
  弱体化……かなりえげつないですね。

「ポチさんやい、手加減……したのかな?」

「ぁぁ……ソ、ラ君」

「おうおう、喋るな喋るな。寝ているが良い」

 気を失う寸前だったのだろう、眠る様に気を失ったのを確認し、
 彼女の事をひょいと持ち上げて後方のギルとポチの下へ向かった。


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