勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

邪魔者から排除しよう

 久しぶりに全力で戦う。そう決めた俺はポチ達から少し離れた位置で
 自分のテンションを上げる作業を始めた。

「魔眼さん、もう一度発動しなおすね」

――はぁ、どうせ変な事考えているんですね。良いですよ。さっさと済ませてください

 日に日に口が悪くなっている魔眼さんの言葉が地面に掘って現れた。
 変な事と言われるのは心外だ。これからやる事は俺が一番気持ちよく戦えて
 最大限に力を発揮するための準備だと言うのに。
 まぁ、魔眼さんの許可が取れた事だし早速やるか――

「魔眼《フルヴュー・アイズ》発動――っ!!」

 何だか魔眼さんの事を呼び名付きで発したのは結構久しぶりな気がする。
 そんな事を思いながら片目に手をやり意味の分からない懐かしいポーズを決めて発動する。

――恥ずかしくないんですか?

「恥ずかしいも何も誰も見てないから良いだろ。
 そもそも見られても……あれ?ちょっと恥ずかしいかも」

 前まではこんなこと思わなかったのだが、歳をとってしまったからだろうか、
 少しだけ人前で厨二を披露するのに抵抗を感じるようになってしまっていた。
 そこまで恥ずかしい!と言う訳では無いがほんの少しだけ抵抗がある。
 例えるならば見知らぬ人の事を友人と間違って声を掛ける程度のレベルだ。

――そうですか、なら人前では余りやらないように。
  ほら、今は私以外見ていませんので早く済ませてください

「あ、はい」

 昔はもっと俺に敬意を払って言葉示していてくれていたはずだが、
 最近はそれを感じられないと言うか年上のお姉さんって感じだ。
 
「我が肉体は全てを弾き何よりも強く素早い最強の身体――身体強化《リインフォースメント・ボディ》!」

――全てを弾くのですか、それはそれで色々と問題があると思いますよ?

 即興で考えた割には結構良い感じになったと自負していたのだが、
 魔眼さんには刺さらなかった様で冷たい反応をされてしまった。
 だが、俺はそんな事は気にしない!
 こうやって自分の中身を曝け出す事に最大の意味があるのだから。

「これぐらいで十分かな」

――そうですか、ならさっさと行きますよ

「……」

 俺は無言で地面に現れた文字を足を使ってごしごしと消してから歩き出した。
 そして徐々に加速して行き――全てを置き去りにして一瞬にして勇者達の前に移動した。
 
「――っ!?」

「そ、ソラ君!?こんな所で何をしているんですか?」

 真っ先に声を掛けてきたのはアサフさん(洗脳済み)だ。
 流石はSランク冒険者だ。驚いては居るものの怯みはしていなかった。
 本当ならば話し合いをしたい所だが、今回はそうは行かない。
 全力で戦って彼女にスキルを発動して貰わないといけないのだから。

 ……まぁ、本当はポチが状態異常系の魔法を放つだけで 
 スキルを発動してくれるだろう――だが、俺が戦ってみたいのだ!
 真の勇者とはどれ程の強さを持っているのか。
 ステータスの数値だけでは計り知れない事だってあるのだから。

 今自分が出来る最高の短剣を具現化する

「ソラ君?――っ!!」

 正直に言ってアサフさんは邪魔なので速攻で片付ける。
 一瞬にして彼の目の前に移動し小さな身長を有効活用し武器を持っていない方の手で
 拳を作り鳩尾目がけて全力で鎧ごと打ん殴る。
 操り人形の様に手足を無気力に揺らしながら勢いよく吹っ飛び
 周りの木々を撒き沿いにして100m程離れた巨木にぶつかり――身体がめり込みつつも
 そこでやっと止まった。

「貴様――っ!」

 結構飛んだな~と眺めていると背後から護衛の人達が襲い掛かってくるのを感じた。
 だが、俺は一切見向きもせずに勇者たちの方へ歩き出す。
 
「ひっ、なんだこれ!?なんだこれ!!やめろ!!やめ――!!」

 こうなるとは思っていたが少しだけ気になり、ちらりと振り向いてみると
 そこには護衛の人達が両手両足そして頭をあらゆる方向に引っ張られ
 悲鳴など無慈悲に引き千切られる瞬間だった。
 骸骨さん、容赦ない……

「さぁ、勇者達よ戦うおうじゃないか――っ」

 やっと邪魔者が消えて勇者達と戦う時がやってきたと言うのに
 背後からポチの魔力が爆発したのを感じ急いで振り返ったのだが、
 特に何も置くておらず直ぐに魔力も収まっていた。

「?」

 一体何が起きたのだろうか、ポチに嫌がらせか?

「はっ!」

「おっと」

 そんな事を気にしていたら急に勇者マコトが斬り掛かって来た。
 中々素早く良い不意打ちだったのだが、それは俺の短剣によって糸も容易く防がれた挙句――

「なっ!?」

 結構良い剣なのだろう。そんな剣が俺の短剣によってスッパリと切れてしまった。
 切れた剣先が地面に落ちる瞬間に俺は次の行動に出る――

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