勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

ギル君の特訓

 依頼関係は全てユリさんに任せてギル君をつれリーン王国付近の草原に来ていた。
 此処ではスライムやゴブリンと言った初心者でも楽々倒せるレベルの魔物がいる場所だ。
 この程度ならばスキル以外が最弱と言っても過言ではないギル君でも問題ないだろう。
 まさかこの世界のスライム相手に苦戦するなんて事はないだろう。

「さぁ、ギル君あのスライムを倒してみるんだ!」

「た、倒すってどうやってだよ!?」

「え」

 おかしい、俺はこの子が何を言っているのか理解できない。
 スライムを倒すのに方法なんて必要なのか?
 
「普通に斬りかかれば倒せる」

「普通ってその普通が分からないんだよ!大体武器もないんだぞ?」

「あっ、忘れてたごめん」

 すっかり忘れていた。確かに武器が無ければ戦いようがない。
 何時も通り短剣を具現化させてギル君に渡す。

「……」

 武器を受け取りスライムの方を向き構えるのだが、緊張してしまっている様で
 暫く無言で見つめ合いながら唾をゴクリンと飲み込んでいた。
 スライム相手に何を緊張しているのか、そう思ったのだが、これが初戦闘ならばそれは仕方がない事だ。
 そもそも優秀な師匠がいるくせに何故此処までダメダメなのか。
 そこが疑問だ。一体この子の師匠はどんな人物なのだろうか。

「……無理だ!」

「なんで!?」

「だって、もし反撃されたらどうするんだよ!痛いだろ!?死んじゃうぞ!?」

「いやいや……大丈夫だって――じゃあ一回だけ俺がやるから真似してみて」

 全然戦ってくれないギル君の為に一度お手本を見せることにした。
 当然、スキルは何も発動せずに短剣だけで戦ってみせる。
 スライムに近付いてギル君の目でも追える様にゆっくりと短剣を弱点目がけて突き刺して見せる。
 一撃でスライムを倒し、コア事破壊してしまった為、魔石のみがそこに残った。

「こんな感じ」

「う、うん……よし、やるぞ!」

 物凄く簡単に倒せてしまったからだろうか、ギル君からはやる気が溢れ出ている。
 その調子で自分の手でスライムを倒すんだ!
 真似をしてゆっくりとスライムに近付いていき――

「やっ!」

 短剣でスライムを真っ二つに切り裂いた。
 当然、スライムは消滅し傷ついた魔石が落ちたのだが、少し思う点があった。
 ……これ具現化させた武器でやったら何の特訓にもならないのんじゃね?
 自慢ではないが、俺が具現化させた武器の切れ味はすんごいのだ。

 そんな武器で戦っていればどんな敵でも何の抵抗も無く斬れてしまうので
 ギル君の特訓にはあまり良くないのではないだろうか。
 今日はもう仕方がないが明日からはそこらへんで買った武器を使わせよう。

「良くやったね!その調子!!」

「や、やった!初めて魔物倒した!!」

 本当にこの子の師匠はどんな人なのか、今まで魔物を倒さずに此処まで育て上げたのは
 正直に言って凄いしその育てかたも気になる。
 魔物を倒さずにレベルを上げる方法……ステータスにかなり偏りが生じるが、
 戦う事の出来ない者からしてみればとても助かるのではないだろうか。

「さぁ、次はゴブリンだ!」

「え」

 そこからはもう大変だった。人型の魔物に変わった瞬間何も出来なくなってしまったギル君。
 お手本を見せてもスライムの様には行かず全く動いてくれなかったのだ。
 そこで俺は良く聞くゴブリンの悪行をギル君にみっちりと教え込んだ。
 すると、彼は許せない!とまんまと乗せられて必死にゴブリンを倒したのだ。
 そこから冗談でゴブリンの巣があるんだけどなぁっと言ってみたら――なんと滅ぼす!と言い
 一人で突っ走ってしまい――当然、ギル君はあっと言う間にゴブリンに囲まれてピンチになり
 後方から俺がこっそりと援護し――なんとかゴブリンの巣も無事壊滅させることが出来た。

 色々とおかしな子だが、 
 ひょっとすると彼は単純で扱い奴あほの子なのかもしれない。
 そんな事を続けて約三日で彼のレベルは上がり――

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ギル

Lv30
体力:1,050
魔力:16,000
攻撃力:170
防御力:45
素早さ:100
運:30

回復ヒールLvMAX

状態異常耐性LvMAX

解毒LvMAX

状態異常回復LvMAX

魔力回復LvMAX

攻撃力上昇LvMAX

防御力上昇LvMAX

剣術LvMAX

この子本当に何者なんでしょうね。覚えたばかりの剣術がもうMAXですよ。
もしかして勇者の子だったりして……まぁ、そんな訳ないですが
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 俺の頑張りで此処まで成長してくれた。
 魔眼さんの言う様に確かに勇者並みの成長だ。
 これで多少の攻撃なら一度喰らっても耐えられる。

 さぁ、依頼を達成してもらおうか。

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