勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

次のステップ

「貴方たちは一体何者なんですか……」

 気を失ったギル君をベッドに寝かせながらユリさんは怪訝そうな表情をした。
 何者なのか、正直に言って自分でも何者なのか分からなくなってきている。
 生きているのかも分からないしまだ人間でいられているのかも分からない。
 だが、それでも俺は俺だ。今ここに居て空気を吸い言葉を発しどうでも良い事ばかり考えているのは
 紛れも無く俺自身だ。

「何者って言われても良く分からないよ
 只、いま此処に居るのだから生きている人間なんだろね」

「……そうですか、なら良いです」

 答えになっていない物凄く曖昧な答えでも納得してくれたようだったが、
 ユリさんはでも――と前置きをして言葉を付け加えた。

「もし、貴方たちが敵になる時が来るのならば私は全力で止めさせて頂きます」

「ふっ、貴様如きが叶うはずがないだろう」

 そんな事は無い。と言いたい所なのだが何があるか分からない。
 ユリさんは此方の事を倒すではなく止めると言う。そういった所からも優しさが伝わってくる。
 道を外してしまったら止めてくれる、それはとても助かる事だ。
 ありがとう。と言おうとしたのだが、ポチが先に口を出してしまった。

「ええ、分かっていますよ。ですが、二人を担当した受付嬢としての責任があるのです
 私の犠牲で少しでも止まって考え直してくれたら嬉しいです」

「大丈夫だよ!敵になったりなんてしないよ!」

 受付嬢としての責任ってなに!?そんな決まりギルドにあったの!?
 やばいやばい、そんな重たい責任があるなら絶対に敵にならないぞ!

「ふふ、その言葉忘れませんからね」

 それからギル君が起きるまで話を進めるに進めない為、
 目が覚めるまでユリさんの下らない世間話や他の受付嬢や冒険者の愚痴などをたっぷりときかされた。
 分かって居た事だが、この受付嬢やはり腹黒い。

「ん……あれ確か……」

「おはよ~ギル君」

「うわぁ――ってなんともない?」

 目を覚ましたギル君に声を掛けただけなのに化け物でも見たかのように驚かれてしまった。
 確かに俺の周りは化け物ばかりだが俺はまだ化け物ではないぞ。
 全く、失礼な子供だな!

「ああ、君のお蔭でね」

「そうか、良かった……あっ、金貨!」

「ああ、はいはいどうぞ」

 この餓鬼、お金の事をやがった。まぁ、最初から上げるつもりだったから別に良いが、
 気絶しておいて直ぐにその発言が出来るとはこの子は絶対大物になるぞ。

「それじゃあ、今回の依頼について話すね――簡単に言うと勇者達を救う事が目的」

「ゆ、勇者?勇者ってあの勇者の事か?」

 一体彼の言うあの勇者と言うのはどの勇者の事を指しているのか分からないが、
 此処は此方の都合の良い様に真の勇者達のことを指している事にしよう。
 受付嬢は表情を少しだけ動かしたがそれ以外の反応は示さなかった。
 あまり会話には介入したら駄目だというギルドの決まりでもあるのだろうか。

「ああ、多分その勇者だ」

「勇者……でも何を救うんだ?勇者は魔王を倒してこの世界を救ってくれるんだろ?」

 正確に言うと、今でもそれは変わってはいない。
 だが、そこには彼らの意思など存在していないのだ。
 意思が存在して魔王を倒したい!と莫迦みたいな事を言っていたのならば俺も救おうとなんてしない。

「そうなんだけどね、実は彼らは洗脳されているんだ。ちなみにアサフさんも」

「洗脳!?」

「ちょっとソラ君!?どういうことですか?」

 あっ、話に入って来た。
 流石に洗脳とまでなると放っておくわけにはいかない様だ。

「どういう事って言われてもそのままだよ。勇者とアサフさんは洗脳されている。
 だから依頼をだしたんだ。高位の状態異常を解くことが出来る者を。
 ギル君、洗脳解けそうかい?」

「洗脳……一度だけ師匠に教えてもらったけど、かなり難しいぞ」

 洗脳を解く方法はエリルスの記憶の中にもあったので知っている。
 まず解くには当然だが状態異常解除のスキルが必須だ。
 普通状態異常ならばそのスキルを習得するだけで解く事が可能なのだが、
 洗脳の場合はキーワードが必要になるのだ。

 予め此方でキーワードのとなる言葉をスキルを発動する際に思い浮かべ
 それと一言一句同じ言葉を洗脳されている側が発しなければ行かないのだ。
 つまり、状態異常耐性を持っていなかったりレベルが低かったら救う事は出来ないのだ。
 洗脳されている側がキーワードと同じ言葉を発すれば効果は発動し、
 周囲1キロ圏内にいる者の洗脳を解くことが可能。

「知ってる。一応手は打ってある。あとは彼女次第だ」

 状態異常耐性を取った方が良いと助言はしておいた。
 俺が出来るのはそこまでだった。後は彼女がどう動いたのか――ってあれ?
 この前洗脳されている事を確認した時に状態異常耐性の呼び名見ておけばよかった!!
 魔眼さんも何で表示してくれてなかったんだ!!くそう!

「彼女次第って……洗脳されているんだろ?なら可能性は――」

「ゼロではない。少しでも可能性があるならそれに掛ける。
 もし失敗した時でも報酬はあげるから心配はしないでね」

「……俺も出来るだけ頑張る」

「うん、ありがとう。じゃあ早速――」

 ギル君が納得したところで次のステップに移動する。
 それは――

「君の事を鍛えようか!」

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ギル

Lv24
体力:50
魔力:10,500
攻撃力:1
防御力:3
素早さ:100
運:30

回復ヒールLvMAX

状態異常耐性LvMAX

解毒LvMAX

状態異常回復LvMAX

魔力回復LvMAX

攻撃力上昇LvMAX

防御力上昇LvMAX


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 体力50、攻撃力1……弱すぎるのだ。
 こんなのスライムに体当たりされたら骨がぼきぼきになってしまう。

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