勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

ギル君のオシゴト

「こんにちは、依頼を受けて頂きありがとうございます。
 早速本題に入りたいところですが、色々と事情があって一人此処に来ることが出来ない状態で、
 宜しければ場所を移したいと思っているのですが、いかがでしょうか」

 相手も子供だが此方も子供の容姿をしているため、舐められない様に子供らしさは残しつつ
 適当に大人らしい事を口にしてみた。
 魔眼で彼の実力は分かっているのだが、一応確かめておかなければ行けない。
 本番になって効きませんでしたなんてあり得ない話だ。

「あ、ああ、良いぞ」

 見た目に反した事を発言された為驚いてしまったのだろう。
 多少動揺しつつ承諾してくれた。
 それからユリさんも同伴しポチがお留守番している宿にやってきた。
 しっかりと受付のおばちゃんには事情を話してから二人を連れて行く。

「ポチさんやい、依頼を受けてくれた人を連れてきたぞ」

「む、もう来たのか。もっと掛かると思っていたぞ」

「ど、どうも……」

「こんにちは、ポチさん」

 俺と会った時とは全く違う反応を示す少年。
 ポチは全く関心が無いようで彼の方を見向きもしなかったが、
 受付嬢の声には反応しあからさまに嫌そうな顔をしていた。
 そんなポチと同じベッドに座り二人にはもう片方のベッドに腰を下ろしてもらい、
 二人ずつ向き合う形になって座った。

「じゃあ、まずは自己紹介から始めるね。
 俺はソラ。今回依頼を出した本人、よろしくね」

「我はポチだ」

 簡単に自己紹介をしていくのだが、流石はポチ。本当に簡単に済ませてしまった。
 次は順番的に受付嬢なのだが、彼女は「私はギルドの決まりとして付いてきているだけなので」
 と言って自己紹介をする事は無かった。

「俺はギル!師匠に金を稼いで来いって言われたから
 手っ取り早く稼げそうなこの依頼を受けた」

 魔眼さんが言っていた様にやはり優秀な師匠が居る様だ。
 ギルにとってはこの依頼は都合が良すぎるぐらいピッタリなお仕事だ。
 状態異常を解くだけで暫く遊んで暮らせるだけの金が手に入るのだ。
 俺だったら一瞬で喰いついちゃうね。

「しっかりと報酬は渡すから心配しないでね。
 じゃあ、早速――君の力を疑う訳ではないんだけどね、今からポチが俺に状態異常を掛ける。
 それを解いて見せてくれないかな?成功したら少しだけお金を上げよう」

 流石に言葉だけで報酬を約束するのには信憑性に欠ける。
 ましてやこっちは子供の容姿をしているのだから。
 その為、少しでも信じさせるために何か成功した時に少しずつお金を上げて行く。
 こんな子供でもお金は持っているのだぞ!と信じさせるのだ。

「わかった!そんなの簡単だぜ!」

「じゃ、ポチあの指輪のやつお願い」

「うむ」

 ポチが指輪を嵌めて此方を呪う準備をする。
 触れただけで呪いが完了すると言う理不尽な指輪だ。
 どんな呪いなのかは分からないが、ポチがひかれるのだから相応の力は秘めているのだろう。
 これで効果が弱かったら泣けてくるぞ……

「行くぞ」

「おう、来い!」

 ポチの手がゆっくりと俺の肩に触れた――その瞬間、全身が燃えるように熱くなり
 本当なら今すぐにでも服を脱ぎ捨てて水でも浴びたい気分になるのだろう。
 だが、残念ながらポチが作ってくれた執事服は加護の影響でそういった事にも対応しており、
 一気に身体を冷やしてくれた。次に起こったのが身体の至る所から血が溢れ出てくる。
 正確には皮膚が破けだした。

 おうおうおう、結構やばい呪いじゃねえか!!
 これ普通の人だったらすぐ死んじゃうよ!?

「ひっ」

「ポチさん!!何をしたんですか!?」

 ギル君は此方を見て物凄い形相になっていた。
 流石のベテラン受付嬢でも物凄く取り乱している。

「二人とも落ち着いて。大丈夫だから。
 ギル君、君の力でこの呪いを解除してくれないかな?」

 エキサラ様のお蔭で直ぐに修復されて行くため全然大丈夫なのだが、
 全身から血を出している人から声を掛けられ混乱している様だ。

「ぎ、ギル君。早くソラ君を助けて!」

「は、はい!」

 ユリさんの発言でやっと我に返り動き出した少年。
 生まれたての小鹿の様に全身がプルプルと震えているが、
 それでもしっかりとスキルを発動している。
 掌をこちらに向け魔法陣が形成されていく、発動まで少し時間が掛かるようだ。

「治れぇええええ――っ!」

 優しい光に全身が包み込まれ身体の中から呪いが抜けて行く――
 光が収まり、そこには血だらけの俺がいるのだろうが、それも直ぐに収まるだろう。
 ポチが掛けてくれている加護の影響で身体や服についてた血が見る見るうちに蒸発していく。

「ギル君凄いね。力は本物だ。はい、これ金貨ね」

 未だに唖然としている二人を置いてポケットから金貨を取り出してギル君に差し出す。

「あ、あぁ……」

 金貨を受け取ろうと手が伸びてきたのだが、それは届くことは無く、
 彼は気を失ってしまった。

「あらぁ……」

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