勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

いらいらぽちさん

 翌朝、三人の勇者たちは神との面会がある為王座の間に訪れていた。
 何時もなら王や兵士たちが居るのだが、今日は誰も居ない。
 事前に誰もつけないと言う事は伝えられている為、
 三人は大して疑問に思う事なくその場で神とやらを待つ。

 待つこと数十分、突然王座に神々しい光が天から降り注いだ。
 王座の間全体を照らすその光を見た三人は遂に神が来たのだと認識する。
 同時に途轍もない存在感が出現し思わず身構えてしまう。

「――」

『やぁ、勇者達。君たちと会える時を待っていたよ』

 神々しい光の中から現れたのは白い翼を生やした青髪の少年だった。
 そう――ソラが知る憎きショタ神だ。だが。身長は170㎝程に伸びてショタとは呼べなくなっていた。
 顔つきも凛としており見た目だけならば途轍もないイケメンだ。

『まぁ、別に話がしたいとかは思ってもいないんだけどね』

「「「――!?」」」

 突然、三人を神の理不尽な力が襲う。
 途轍もない力に押しつぶされ強制的に地面に頭を付けさせられる。
 声を出そうにも叶わず呼吸をするのがやっとの状況だ。
 一体何が何なのか何故神に攻撃されているのか理解できない三人は必死に状況を整理する。

『そんなに睨まないでくれよ。直ぐに楽になるから我慢してくれ』

 床に降り立った神はゆっくりと三人に近付き、掌を向けた。

『君たちの目的は魔王討伐だ。そして我々の駒となる存在だ。
 駒には意思など必要ない。我々の指示通りに戦い続けろ』

「――」

 神の掌から魔法陣が現れ、同時に三人の頭部に魔法陣が現れ収縮していく。
 激痛を最後に三人の意識は途絶えた――

・・・・

「行くぞ」

「あっ、ちょっと待ってください――」

 アサフさんは俺に用があって此処に来たみたいだが、俺はポチによって強制的に連れていかれ、
 結局なにも話せないまま商店街の人混みの中に入ってしまった。
 正直な所、あんな洗脳済み集団と何を話せばよいのか分からなかった為助かった。
 下手な会話をすれば全て神に伝えられるかも知れない。

「ポチ、どうした?何か用事でもあった?」

「いや、そういう訳では無いんだ……只、あいつ等が近付くとイライラするんだ。
 あの気配、無性に殺したくなってしまう――ッ!」

「だ、大丈夫か?」

 ポチは今までに見たことの無い凶暴な顔つきになっていた。
 人間の顔だがまるで獣の様に唸り鋭い眼つきになり、
 今にも標的がいるのであれば飛びついて殺してしまいそうなそんな顔だ。

「あの勇者、前会った時は何とも無かったが……今日はダメだ。
 次会ったら本当に制御できないかもしれん」

「そ、そうか。じゃあ宿に戻るとするか」

「ああ、すまないな」

 前回と今回で違う点は洗脳されていると言う事だ。
 気配と言うのは恐らく洗脳が関係しているのだろう。
 もし、商店街で再びあの洗脳済み達にあってしまうとポチが暴れて大変な事になってしまうため
 急いで宿に戻るのであった。

「多分、だけどポチがイライラする原因は神が影響していると思うんだ」

「神?ヘリム?」

「ん~確かにヘリムはイライラするな。うん、良く分かる。
 だけど、今回のは違う。この世界の神だ。
 勇者は神に洗脳されていたからその気配がポチにとって耐え難かったんだろうね」

「む、そうなのか……」

「この世界の神って碌な奴居ないからね。その気持ちは分かるよ」

 特にあの青髪ショタ野郎は絶対に許せない。
 他の神は知らないが、どうせ皆くそったればかりだ。

「これからどうすれば良い?」

「ん~そうだな~」

 今後勇者達と会う事が厳しくなってしまった。
 外出する際にもいちいち気を配って気配を感じたらすぐに離脱する必要がある為、非常に面倒だ。
 かと言って、会わせてしまえば忽ち勇者は殺されてしまうだろうし……

「もう少し待てば解決すると思う。だからそれまでは大人しくしてようか」

「依頼を募集したやつか?」

「ああ、その通り。上手い事行けば洗脳も楽々解ける!
 既に下準備は出来ているから後は人が来るのを待つのみだ」

「早くしてほしいものだ」

 ポチは暫くお留守番。その間俺は個人で依頼を受けてさっさと実力を認めてもらう。
 少し可哀想な気がするが、ポチには大人しくしてもらわないと。
 帰ってくるときお土産を沢山買ってやろう。

「なぁ、ソラよ」

「ん?」

「万が一だ。万が一、勇者共が此処にやってきたらどうする?」

 そんな事は無いと思うが、可能性はゼロではない。

「そうなったら、力で解決しようか。
 下準備は無駄になってしまうが、結構楽しい経験出来ると思うぞ。
 直接神様を殺すなんて滅多にない経験だ」

 つい最近その経験をしたのだが、世界が違うのだから無効だ。
 直接神様を殺せば洗脳も解けるだろう。
 一番手っ取り早く確実な方法だ。

「ふっ、楽しそうだ」

「だろ?」

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