勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

骸骨さんとおはなし?

「ただいま~」

「遅かったな」

 宿に戻るとポチはベットの上でゴロゴロとしていた。
 シーツや布団がグチャグチャになっており来ている服も乱れて髪もぼさぼさだ。
 恐らく朝起きてから一歩も外に出ていないのだろう。
 全く、誰に似たのか怠け者だ。

「ん」

 ポチが寝ているベットに腰を下ろすと、まるで犬の様にこちらにすり寄って来て
 顔を近づけて身体中の匂いをすんすんと嗅いできた。
 妙にくすぐったくて思わず身体を捩らせてしまう。

「今日は獣臭いな」

「やっぱり」

 やはりあの魔物やアマゾネス達の所為で身体中に獣の匂いが付いてしまっているらしい。
 なんとなく予想は出来ていたが、女の匂いでは無くて一安心だ。
 流石に獣の匂いで怒ったりはしないだろう。

「今日はね、山に行って山賊討伐をしてきたんだけど、
 そこで見た事もない魔物と戯れたり獣臭い戦闘民族と戦ったりしたんだ」

「ほう、通りで臭い訳だ。さっさと風呂に入る事をお勧めするぞ
 既に準備はしてあるからゆっくりしてくるが良い」

「おお、気が利く!ありがとな!」

 流石はポチさんだ。一日中ベットの上でゴロゴロとしていた訳ではないようだ。
 着替えを準備しつつ、この後の予定をポチに話す。

「ポチ、風呂からあがったら骸骨さんに関連で話があるけど良い?」

「ああ、そのことか。別に構わないぞ」

「ん、そっか良かった」

 何だかポチが骸骨さんたちの事を既に知っているかのような口ぶりだった為
 少し気になったのだが、ポチなので知っていっても別に不思議ではない。
 ゆっくりと風呂に入り匂いと疲れを落としてからパジャマに着替えてポチが待つベットに向かう。

「戻ったぞ。ポチは風呂に入らないのか?」

「後でゆっくりと入る。先に話とやらをしようではないか」

「そっか」

 いざとなれば精霊さんの力で解決できるのだろうが、
 それすらもしないと言う事は骸骨さんなどどうでも良いと思っているのだろう。
 ポチらしい。

「骸骨さん出ておいで」

 ポチのベットに腰を下ろして骸骨さんを呼ぶ。
 もう片方のベットの上に姿を現した骨。宿の部屋に魔物がいると言う異様な光景だ。

『どもども~』

「そこに座っていいよ
 早速だけど、どうして骸骨さんたちはこの世界にいるんだ?」

『どうしてってそりゃ~ご主人様から離れるわけにはいかないですからね~
 例え世界を超えようが我々は付いていきますよ』

 予想は出来ていたが気になっていた為一応聞いてみたのだが、
 案の定、付いて来てしまったらしい。俺としては嬉しい事なのだが、

「それってヘリムは知っているのだろうか……」

 ただでさえ魔力が無くてあの二人はこの世界に来れなかったのだ。
 それなのにこの骸骨さん達は此方の世界に来ている。
 当然、その際に魔力も掛かっている。それも数千もの数の骸骨さんだ。

「知っているぞ。こいつらが此処にいるのだから当然だ。
 こいつらの存在はとっくにソラは気付いていると思ったのだが、今日気付いたのか」

『ですです~しっかりと我々が転移出来るだけの魔力も込められていましたからね~』

「そうなんだ……」

 どうやら知らなかったのは俺だけの様だ。
 ポチも中々に意地悪だ。骸骨さんたちが居る事を知っていたのならば
 教えてくれればよかったのに……そんな事を思いつつこの世界に来てからの事を思い出してみると――

「あ、そういえば」

 この前、途轍もない魔力の塊を感じた時、外には一本の骨が転がっていた。
 今思えば骨が勝手に消えたしそもそも骨がある事自体可笑しい。
 あの時はエリルスに会えてテンションが上がっていた為、特に不思議には思っていなかったが
 少し考えれば骸骨さんだと気が付けていたかもしれない。

「魔力を止めてくれたのも骸骨さんだったのか、ありがとな」

『あーそれ大変だったんですよ~一人の骨が欠けちゃうほど大変でしたよ!』

「そっか、大変だったな……」

 一人の骨が欠けるだけであの魔力を止められると言うのは本当に大変だったと言えるのだろうか。
 本当に底が知れない骸骨さん達の力……
 下手したら世界征服なんて面白い事も出来てしまうかも知れない。

『それで話ってそれだけですか~?』

「ん~ああ、それと今日はありがとな。結構助かった。それだけだ」

『そういう約束ですからね。我々は我々の意思で動きますからね~』

「頼もしい」

 大した話はしていなかったのだが、気になっている事とお礼を言えたので満足だ。
 骸骨さんの姿が消えるのを見送ってからベットに横になる。

「なぁ、ソラよ。今の話って我は必要だったのか?」

「……」

 確かに言われてみれば必要ではなかった。

「一人だと心細い……から?」

「そうか……なら、これから風呂に入るのだが一緒に入るか?」

「眠たいので遠慮して――」

 断るつもりだったのだが、急にポチが獣の姿に戻って此方を誘惑してきた!
 俺は誘惑に負けてしまい再び風呂場へと向かうのであった。

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