勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

依頼完了

「き、消えた……」

 九死に一生を得た女王は声を震わせつつもそう呟いた。
 周りの筋肉さんも静かになっており骸骨さんたちがかなり効いた様だ。
 この様子ならすんなりとこちらの要求を聞き入れてくれそうだ。
 力で実力を示すのも悪くはないけど、一切血を流さずにこの依頼を完了すると言うのも
 中々良い実力の示し方なのではないだろうか。 

「うん、正確には姿が消えただけ――」

「貰った――っ!!}

 此方の言葉を最後まで聞くことは無く、骸骨さんがこの場から消えたと思ったのだろう
 女王は今がチャンスだと言わんばかりに剣を持ちこちらに飛びかかって来た。
 だが、骸骨さんはあくまで姿を消しただけであってこの場に留まっている――
 つまり――彼女は死ぬと言う事だ。

「ぁ――」

『本当に愚かだ』

 再び姿を現した骸骨によって心臓を潰されてしまった。
 正確には鋭い手に勢いよく自ら刺さって行き勝手に死んでしまった。
 骸骨さんは先ほどと全く同じ位置に現れたのだが、
 居ないと思い込んでいる女王は一直線を突っ切り、此方にやってきたのだが、
 骸骨さんと言う壁にぶつかって死んでしまった。

「可哀想に」

『本当に何であんなに愚かなんですかね~』

「まぁ、仕方がないよ」

 人間、ピンチに追いやられたら少しでも希望があるなら飛びついてしまう。
 この女王も仲間を護る為に必死だったのだろう。

『残りはどうします~?』

 女王を失った所為で皆戦意を喪失しており武器を捨て小さくなっていた。
 本当は女王も殺すつもりなのなかったのだが、あれは人の話を聞かない彼女が悪い。

「取り敢えず放置で」

 女王が居ない以上ここから立ち去れと言ってもそれを指揮する者が居ない為
 只混乱を招くだけになってしまうだろう。
 ギルドには長のみ討伐したと伝え後の事は全部任せるとしよう。

『わかりましたよ~それで、お話しって何です?』

「あー、それは宿で話す予定」

『宿ですね~あっ!そういえば宿っていえばこの前は激しかったですね~
 どうでしたか?ね?教えてくださいよ!』

 骸骨さんがいると言う事は勿論、あの時も一緒にいたと言う事だ。
 つまり俺の恥ずかしい姿を何千もの骸骨さんたちにみられていたと言う事だ。
 ……恥ずかしい

「さて――お前たちの長は死んだ。これからギルドにそのことを報告に行く。
 恐らくお前たちの大半は捕まえられ罰を受けるか奴隷に落とされるだろう。
 此処でそれを待つのも逃げるのもお前たちの自由だ――以上!ばいばい!」

『あっ、逃げた!後で聞かせてもらいますからね~』

 恥ずかしさを紛らわせる為にそれっぽい事を言い残し身体強化を使いアサフさんを持ち上げ
 一目散にその場から立ち去った。
 しっかりと去り際に沢山出してあった短剣の具現化は解いてある。
 アサフさんの装備は忘れてしまったが、まぁ、仕方がないだろう。

 地味にあの魔物の事を気に入っていた為、お持ち帰りしたかったのだが、
 ポチがいる為、二匹も飼う事が出来ないため諦めて置いてきた。

「ん~」

 リーン王国が近くなってきたのだが、流石に子どもが大人の事を軽々と持ち上げていたら
 物凄い目で見られてしまうのは目に見えている。
 では、どうするべきか――そう考えて導き出した答えは少し乱暴でアサフさんに申し訳ないが、
 地面に足を引きずる形でリーン王国まで運ぶことにした。

 身体強化を使っている為、楽なのだがそれっぽい雰囲気を出すために
 若干苦しそうに運んでいく。
 王国の付近まで来ると此方の存在に気が付いた門兵が走って寄ってきてくれた。

「大丈夫ですか?ってアサフさん!?」

「ちょっと気絶してるみたい。後は任せて良い?」

「はい、此処まで良く運んでくれましたね。後は任せてください」

 どうやらアサフさんの事を知っていた様で身分を証明しなくてもすんなりと話を進んだ。
 門兵にアサフさんを預けて向かうは冒険者ギルドだ。
 報告をちゃちゃっと済ませてポチの下に戻らなくては怒られてしまう。

「――って感じ!」

 冒険者ギルドに向かいユリさんに事情を説明した。

「そうなんですか……では、今から何人かそちらに派遣したいと思うので
 報酬等は明日でも構いませんか?」

「うん、大丈夫だよ」

 長を倒したと言う証拠も証人も居ないので仕方ない事だ。
 どうせなら首でも持って来ればよかったか――ってそんな恐ろしい事出来ないか。
 何はともあれ、一応依頼は達成したので宿に戻るとしよう。

「勇者になれなかった俺は異世界で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く