勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

骸骨さんいっぱい

『全く、世話の焼けるご主人様ですね~』

 目の前に現れた骸骨さんは何処か楽し気にそう言葉を発した。
 予想もしていなかった展開に驚き目をパチクリとさせ呆然とする。
 何故骸骨さんがこの世界にいるのかと言う疑問が真っ先に浮かんでくるのだが、
 そんなの答えは一つしかない。此処にいると言う事は付いて来てしまったと言う事だ。

 そもそも、骸骨さんの存在を忘れてこっちの世界にさっさと来てしまった俺が悪いのだが。
 こんなこと口が裂けても言えない。もし言ったら恐らく許してはくれるだろうが、
 数千単位もいる骸骨たちにネチネチと嫌がらせをされたらたまったもんではない。

「スケルトンだと?」

 流石の筋肉の女王でも突然目の前に現れた骸骨さんには驚いた様で若干の同様が見られる。
 アサフさんも驚いている様で上半身裸の状態で呆然としていた。
 って服まで脱がされるのかよ!本当にそんなことされたら不味い!
 匂いが付いているとか言って今度は身体を作り替えられてしまう!!

「痛っ……このスケルトンがっ!」

 先ほど骸骨さんに吹き飛ばされた筋肉さんが大変お怒りの様だ。
 結果が浮き出る程、力み骸骨さん目がけて勢い良く斬りかかる。

「やめろ!」

 だが、彼女の一撃は届くことは無く、代わりに女王の右ストレートが彼女に決まった。
 グギャアと普通なら出ない様な叫び声を上げて草木の中へと消えて行った筋肉さんを見て
 この女王さんは加減を知らないのか、まるでポチの様だと思ってしまう。
 飛んで行った筋肉さんは恐らく死んでしまっただろう――と思ったのだが、

「何するんですか!?」

 何事も無かったの様に平然と茂みの中から元気よく飛び出して来た。
 力を加減したのか防御力が凄いのか一体どちらなのだろうか。
 傷一つ付いていない彼女を見てそう思った。

「落ち着け。あのスケルトンは只者ではない」

 流石は強者だ。骸骨さんの強さを一発で見抜いた。
 そう、この世界のスケルトンは最弱と言っても良いが、
 向こうの世界のスケルトンは最強と言っても良いくらいだ。

『あー、良く分かったね~そうだよ只者ではない!敢えて名乗るなら――んぎぃ!
 ……ちょっと痛い!やめてよ!』

 傍から見ればただの痛い一人芝居なのだが、事情を知っている側からするとこれは
 恐らく他の骸骨さんに莫迦やってないでさっさと働け!と殴られたのだろう。

『はぁ……さ~て』

 大きなため息を吐いた後急に骸骨さんの雰囲気が変わったのを感じた。
 先ほどまでの軽い感じではなく、骸骨からは魔物そのものの圧を感じる。

『お前たちは我々のご主人様を奴隷扱いしたな?それも性奴隷と――
 当然覚悟はできているんだろうな?』

「覚悟?何を言っている当たり前の事を言ったまでだ。
 寧ろ殺さないだけ有り難く思え。まぁ、用が済んだらどうなるかは分からんが」

『なるほど、相当殺されたいようだな』

「ふん、お前は何か勘違いしている様だな。
 確かに他のスケルトンとは違い桁ハズレの力を持っている。
 正直私が戦っても勝てるか危うい。だが――私は一人ではない。
 お前を殺すことなどは私の部下たちに掛かれば容易い事だ」

 二人は睨みあいながら挑発をしていく。
 そこに俺の入る隙などある訳ないので大人しく観察している。
 女王の言っている事は確かにそうかも知れない。
 だが、一つ間違っている事がある――それは骸骨さんも一人ではないと言う事だ。

『愚か、実に愚かだ』

「お前がな」

『我々が一人?』

 その声は目の前の骸骨さんから発せられてはいなかった。

『愚か』『我々は一人ではない』『お前たちよりも』『何倍も』『存在している』
『我々を殺す?』『不可能』『殺されるのはお前たちの方だ』『我らの主に手を出そうとした』
『その時点で』『お前たちは』『死ぬ事が確定した』『嘆いても』『もう遅い』『愚か』『愚か』……

 次々と彼方此方から声が響、同時に無数の骸骨さんたちが姿を現した。
 その数は優にアマゾネス達を超え完全に彼女たちは包囲されていた。
 その光景を目の当たりにして俺が主で良かったと思った。
 もし立場が逆だったらと考えただけで鳥肌が立ってしまう。

『どうした?先ほどまでの威勢は何処に行った?』

「……っ」

 アマゾネスの誰もがその光景を目に絶望していた。
 あの女王までもが言葉を失い手にしてた剣を手放し戦意を喪失していた。
 ちなみにアサフさんは白目をむいて気を失っている。
 戦意喪失しているしこれぐらいで許してあげようと思ったのだが――

「降参す――」

 女王が降参しようとした瞬間、骸骨さんの手が伸び彼女の口をふさいだ。

『つまらない事言うなよ。どうせお前たちは死ぬんだから楽しませて?』

 余りにも残酷な事を言い放つ骸骨。流石の女王も力が抜け小刻みに震えだしていた。
 全身から汗が噴き出て先ほどまでの威勢のよさは何処にも見られない。
 流石に可哀想に思えて来た俺は声を掛ける事にした。

「骸骨さん。後は任せてくれないかな?」

『え~此処からが楽しい所じゃないですか~意地悪だな~』

 声を掛けると、あの軽い感じに戻った骸骨さん。
 なんだかんだ言ってこっちの方が話しやすい。

「今回は見逃してあげないか?傷つけられたわけじゃないし。 
 それに俺の目的はあくまで山賊討伐であってアマゾネスじゃない」

 正確にはアマゾネスでも無いかも知れないが、
 戦意喪失している相手と戦ってもむなしいだけだ。
 今ならこちらの言う事を聞いてくれるだろう。大人しくこの場を去ってもらおう。

『甘いですね~まぁ、ご主人様の命令ならば仕方がないですね~撤収~』

「後で話があるからその時はよろしくね」

『はぁ~い』

 そういうと骸骨さんたちは姿を消した。

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