勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

アマゾネス

 少し離れた位置には集落があり山賊と思われる者達が普通に暮らしていた。
 かなり規模が大きく人数もそれに比例しているのだろう。
 山賊と言われれば凶悪な顔つきの山賊たちを連想するのだが、
 いま目に映っているのは全員筋肉質の女性のみだ。

 子供もちらほらと居るのだが、全員女だ。
 何処を見渡しても男の姿が見えないのだ。

「女しかいないね」

「ええ、妙ですね――ですが、女性のみなら制圧しやすくて助かります」

 どうやらアサフさんは相手の性別が女性だからと言って手加減するタイプではない様だ。
 男女平等に扱うイケメン。もっと好感が持てそうだ。
 武器に手を添えたアサフさんを見て此方の戦闘準備をしようと思った次の瞬間――

「アサフさん――っ!」

「くっ!」

 突如上空から一人の女性がアサフ目がけて落下してきた。
 その手には剣が握られており間一髪で避けた彼の横すれすれの地面に突き刺さった。
 一応警戒はしていたが、此処まで接近されるまで気が付かなかった。
 こいつはかなり強い……

「ちっ、外したか。まぁ、良い――ん、ゴウ此処にいたのか」

 腹筋がバキバキに割れ腕も脚もムキムキで服装は大切な部分か隠れているだけで
 露出がかなり多い水着の様だ。伸び切った紙は後ろで止められていて
 ポニーテイルになっている。顔は山賊とは思えない程綺麗だが、
 此方を見るその眼はまるで獣の様だ。

「珍しいな我々以外に心を許すなんて……ふむ、そうだな、それに免じて命は取らないでやろう
 美味そ――違う、子どもいる様だからな」

 一瞬、エキサラやポチが言いそうな事が聞こえた様な気がするが気のせいだろう。
 絶対に気のせいだと思いたい。それにしてもこの子のお蔭で命拾いしたな。
 恐らく、この女はアサフさんよりも強い。この場で下手に動けば確実に殺されるだろう。

「さぁ、身に着けているモノを全て置いて――」

 筋肉さんが要求を言う前にアサフさんがスキルを発動しようとしたようで
 魔力が集まるのを感じた――当然彼女がそれを見逃すはずも無く
 地面に突き刺さっていた剣を素早く抜き彼の首元に剣先を突き付けた。

「余計な真似をするな」

「……」

 アサフさんも今の行動で何方が上かを理解したのだろう。
 大人しく武器を外して地面に置き始めた。
 それを確認して筋肉さんは指を鳴らした――すると、上空から何人もの筋肉さんが降って来たのだ。
 そして、俺たちを囲みこみ完全に逃げ場を塞いできた。

「只の山賊ではなさそうですね。何者ですか?」

「さぁな」

「……男の姿が見えない様ですが?」

 身体の彼方此方に隠されていた武器を地面に放り投げながら次々と質問をしていく。
 流石はSランク冒険者だ。全く怯んだりする様子は無い。

「男など用済みになれば殺すまでだ」

「……そうですか」

 その言葉を聞き、俺は戦闘民族アマゾネスを思い出した。
 彼女たちとは若干違う点もあるのだが、やっている事は似ている。
 女王――恐らく目の前にいるこの女性がそうだろう。
 そして彼女の下にはたくさんの女性がいる。
 男は用済みになれば殺し、女は育て上げる。

「お前とお前、こいつを頼んだ」

 彼女が命令を出すと周りに居た筋肉さんたちがアサフさんの下に行き
 力尽くで装備品を剥ぎ取り始めた。

「さて、我々は相手が子どもだからと言って手加減はしない。
 お前もさっさとしろ」

「……」

 分かっていたが、俺もやらなくてはいけないらしい。
 だが、只で身ぐるみを剥がれると言うのも何だか嫌なので少し意地悪をするとしよう。
 俺は魔物から降りて執事服の内側から武器を取り出す素振りをして
 短剣を具現化させて地面に放り投げる。
 それもあらゆる場所に手を突っ込んでは同じことを繰り返し辺りを短剣だらけにしていく。

「おい、貴様どれだけ隠し持っているのだ?」

 流石にこれには驚いてくれるようだ。
 周りの筋肉さんたちも此方を興味深そうに見ている。
 流石にこれ以上出すと文句を言われてしまいそうなのでここらへんでやめておこう。
 最後に重力操作で短剣に重力を掛けて重たくしておく。

「もうないよ」

「そうか、お前たちこれを持っていけ」

 命令されたアマゾネスの様モノ達が短剣に群がり持ち上げようとするが――
 ふんぬっー!と声をあげるだけで一向に持ち上がる気配はない。
 事情を知らない傍から見ればふざけている様にしか見えないだろう。

「何をしている?」

 その様子を見て少し苛立った筋肉女王そう尋ねた。

「すいません、思った以上に重たくて――」

「退けろ」

 そう言って地面に落ちている短剣を軽々と――までは行かなかったがゆっくりと持ち上げ始めた。
 これには思わず俺も心の中で「ほぅ」と声を漏らす。

「ふん、大したモノだな……」

 そう言い短剣を眺めるのではなく――何故か此方の事を舐めまわすように見てきた。

「前言撤回だ。こいつは良い子種になりそうだ。性奴隷として飼ってやろう」

「なっ、やめろ!ソラ君には手を出すな――っ!」

 彼女の発言を合図に一斉にこちらに飛びかかってくる筋肉さん達。
 余りにも突然な事に反応が遅れてしまうったが――非常に不味い。
 何故なら、これ以上接近されれば女の匂いが付いてしまいポチにナニをされるか分からないからだ。
 それは何としてでも避けなければならないのだが――

「くっ!」

 明らかに間に合わない――と思ったのだが、

『やれやれ』

 そんな声が聞こえ飛んできたアマゾネス達は吹き飛ばされて行く。
 カラカラと音を鳴らし姿を現したのは――

「が、骸骨さん!?」

「勇者になれなかった俺は異世界で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く