勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

森の中へ

 顔はポチと同じ形なのでまさか気持ちの良いツボも同じなのではないかと思い、
 ポチが好きな所をナデナデしてあげると気持ちよさそうに目を細め顔を預けてきた。
 自分よりも大きな顔が真横にあると言う異様な光景だが、もふもふなので恐怖心は無い。
 むしろ、幸せな気持ちだ。ポチよりも少し硬い毛だが十分にもふもふだ。

「どこから来たんだろう」

 モフモフに包まれながらそんな事を呟いた。
 恐らくこの森の中からやってきたのだろうが、もしこんな魔物が森にすみ着いているとなると
 山賊たちなど尻尾を巻いて逃げ出しているに違いない。
 それにしても何しに来たのだろうか。敵意は全くなさそうだし……料理の匂いに釣られてきたのかな?

 それから暫くナデナデしていると、料理が完成した様でアサフさんが皿に盛り付け
 此方に向かって来た――

「ソラ君出来ました――っててててててえええ!?」

 この可愛らしい魔物を見て驚いた様で口を大きく広げ、思わず料理を手から放してしまったのだが、
 流石はSランク冒険者だ。落ちる前に素早くキャッチし料理は無事だ。
 相変わらず口は開いたままだが。

「そ、ソラ君!?何処から拾って来たんですか!?」

「んとね、なんか気が付いたら居たよ」

 こんなおっきいの俺が拾ってこれる訳ないだろ!

「気が付いたら……危険ではないので――いや、敵意があればとっくに僕が気が付いているはず……」

 何やら一人でぶつぶつと言い始めたアサフさん。
 こんなに可愛い魔物を目の前にして理性を失ってしまったのだろうか。
 撫でたかったら欲望のままに撫でれば良いのに……

「取り敢えず敵意はなさそうですね。それにしてもソラ君は動じませんね」

 敵意が無い事が分かった様で恐る恐るこちらに近づいて来た。

「似たような友達がいるからね~」

「と、友達ですか!?……やはり世界は広いのですね」

 似たような友達。勿論ポチの事を指しているのだが、
 ポチの場合はこんなに大人しくは無い。もっと凶暴で――おっと、加護の力だとか言って
 遠くから心の中を読まれている可能性があるのでやめておこう。

「おぉ、おいしそう!」

 アサフさんから料理を受け取る。
 スープの様だが、中にはたくさんの食材が入っており非常に良いに匂いがする。

「いただきます」

 早速スプーンですくい一口。
 様々な野菜の味が口の中に広がりとても美味しい。
 肉は非常に柔らかく口の中で転がすだけで崩れて行く。

「美味しい!!」

「それは良かったです。まだまだ作ってありますので一杯食べてくださいね」

「やった!」

 おかわりがあるとのことなのでガブガブと勢いよく食べていると、
 右側からジーと押しつぶされそうな程の視線を感じる。
 振り返ってみるとそこには当然、あの魔物が此方――正確には皿を見ていた。
 やはりと言うべきは、目的はアサフさんが作ってくれた料理の様だ。

「アサフさん、この子にも少し分けても良いですか?」

「この子って……まだまだあるので全然構いませんよ。
 あっ、なら大きめな皿が必要ですね。これを使ってください」

 この人、物凄く優しい。
 大きめの皿を取り出して、わざわざスープを注ぎに言ってくれた。
 見た目もイケメンで中身もイケメン……さぞかしモテるのだろう。
 こういったイケメンは許せる。

 スープを注いで来てくれたアサフさんが魔物の顔に近づくと――
 何故か唸り声を上げ始めた。

「ん、どうしたの?」

「……やっぱりわかるんですかね。此処に置いておくので後は頼んでも良いですか?」

「う、うん」

 一体何が分かると言うのだろうか。少し気になったが今は魔物の方を優先したいので
 少し離れた位置に置いてある大きな皿を取って魔物の口の近くに置いて上げた。
 すると、大きな舌でぺろぺろとし始めた。
 てっきりもっとガッツクかと思っていたのだが、見た目に寄らず小口の様だ。

・・・・

「さて、行きますか!」

「そうだね!」

 食事と片付けを終えやっと目の前の目的地に入っていく。
 先ほどの魔物は用事が済んだので何処かへ行くと思い来や、後ろからついてきて――

「うわぁ!?」

 俺の身体をひょいと大きな手で鷲掴みにして肩に乗っけられた。
 突然の事で驚いたのだが、それよりも肩の座り心地の良さにも驚いた。

「随分と仲が良いですね」

「何か仲良くなっちゃった」

 アサフさんか先導してくれてその後を魔物に乗った俺が行く。
 こんなに大きければ直ぐに山賊に見つかってしまいそうなのだが、
 果たして大丈夫なのだろうか。

「ソラ君、伏せてください――見つけました」

「え、伏せておくれ」

 アサフさんが山賊を見つけた様で俺に伏せろと言って来る。
 伏せるべきなのはこの魔物の方だろう。
 

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