勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

個人で依頼を受けよう

「ポチさんやい、明日からどうする?」

 ケルベロス報酬のお蔭で大金持ちになった為、
 今まで泊まっていた少し高めの宿よりも高級な場所に泊まり、
 ポチには叶わないがもっふもっふのベットの上でゴロゴロしながらそう尋ねた。
 何をどうするのかと言うと、それは依頼関係の事だ。

 俺とポチのランクはDになっている。
 本来ならもっと上のランクに行けるのだが、これは俺の所為の様だ。
 此処までは全部ポチのお蔭で上がっている為、何もしていなく
 実力が分からないからD以上ランクを上げるのは危険だと言う判断だ。

 此処から上に行きたければこれまでの様に二人で依頼を達成する訳には行かない。
 個人で依頼を受けて達成する必要がある。
 個人と言ってもポチ以外の人と共に行っても良いらしい。
 取り敢えず数回依頼を受けてどれ程の実力があるのかを示せば再びポチと依頼を受ける事も可能だ。

「別に我はランクなどどうでも良いのだが」

「ん~やるからには上に行きたいな~」

 全くランクには興味を示さないポチに対して、
 俺は少しだけ興味があった為、ちらちらとポチの事を見ながらそう言ってみた。
 するとポチは何時もの様に鼻で笑い

「行きたいのだな。なら別行動をするしかないな。
 別に数回程度なら許すぞ」

「ははぁ、ありがとうございます!」

 この前あんな事があった為、てっきり絶対に離さない的な事を言われるとばかり思っていたのだが、
 全くの逆ですんなりと許しが出てしまった。

「その代り泊まりは許さんぞ」

「うん、大丈夫。ささっと終わらせて帰ってくるからな」

「もし、そんな事があれば、次はあの程度では済ませないからな」

「……はい」

 あの程度で済まさない……考えただけで思わず震え上がってしまう。
 そんな恐ろしい事だけはなんとしてでも避けなければならないので
 何があっても日帰りで帰ってくると心に刻み込む。

・・・・

 翌日、ポチとは別行動で俺は冒険者ギルドに向かった。
 中に入ると早速掲示板の前に行き見合った依頼が無いか探す。
 スライム討伐や薬草採取や護衛、そんなレベルの低いものは却下だ。
 出来るだけレベルが高い方が良い。その方が実力を証明するのにも良い。

「あ、まだある」

 昨日俺が出した依頼はまだ誰も受けてくれていない様で
 他の依頼の紙に混ざってこっそりと貼られていた。
 まぁ、そんな一日で人が来てくれるとは思っていないかったけど。
 視線をその隣の紙に移すとそこには迷宮探索と書かれており、
 最低でもSランクが必要だとか。

 一瞬これにしようかと思ったのだが、流石に最低ランクがSだと
 受付嬢に弾かれるし依頼主にも良い顔はされないだろうからやめて置く。
 更に視線をずらすと――山賊討伐と言うものがあった。
 ランク制限は書かれておらず内容は場所のみで報酬が山賊の持ち物らしい。

 大してレベルは高くないと思うのだが、一人で山賊を壊滅させてしまえば
 かなりの実力があるとみなされるだろう。

「これに決めた!」

 そう言って大ジャンプを決めて紙を空中で掴み落下する勢いで掲示板から剥がす。
 そのまま怯むことなくユリさんが待つカウンターに向かい、紙を提出する。

「おはようございます。ソラ君」

「おはよ」

「今日は一人で依頼を受けるのですね――って、山賊討伐ですか!?」

「うん」

「うん。じゃありませんよ!これは余りにも危険すぎます!
 良いですか、この依頼はですね――」

 たかが山賊討伐で何をぎゃーぎゃー言っているのかと思ったのだが、
 話を聞くところ、この依頼は何か月も前から貼り出されており、
 何人も討伐に向かったのだが、誰一人帰ってきていないらしい。
 つまり、これを達成すればかなりの実力が認められると言う事だ!

「じゃあ受ける!」

「はあぁあああ!?話聞いてましたか!!!」

「うん、聞いてた。だから受ける」

「ソラ君!君は――」

「どうかしましたか?受付嬢さん」

 ユリさんが興奮してカウンターから身を投げだそうとしてた時に
 爽やかフェイスの長身の男が話しに入って来た。

「アサフさん……っ!そうだ!アサフさんにお願いがあります――!」

 そこからは俺が出る隙は一切与えられなく、完全に置いて行かれ、
 話はどんどん進んでいき――

「よろしくお願いしますね、ソラ君」

「は、はい……」

 このアサフと言うSランク冒険者と共に山賊討伐に出る事になってしまった。
 これでは俺の実力を示せないではないか……断るにも断れない所まで進んでいるため
 何も言えずに只々流されるがままだ。

「アサフさんが一緒なら安心ですね。では、ソラ君気を付けて行ってきなさい!」

「はーい」

 くそったれ!!と叫びたいところだが、大人しく良い子を演じて――

「よろしく!えーと……アサフさん!」

「ええ、よろしくお願いします。ソラ君」

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