勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

依頼を出そう

「ポチさんやい、それってどんな呪いがあるの?」

 怪しい店の中身は結構良い見た目が怪しいお兄さんから譲り受けた指輪を見ながらそう尋ねてみた。
 呪いと言うからには良からぬ物だと言う事は分かっているのだが、
 一体どんな呪いがその指輪に秘められているのか興味がある。

「ふむ、触れた相手を呪う事が出来るらしいぞ。詳しくは分からん」

「物騒なモノ手に入れたなぁ」

 どういった呪いなのかはハッキリしないのだが、
 触れた相手を呪う事が出来ると言うのは使い方によってはかなり凶悪なモノになるだろう。
 回数などが限られているのかも知れないが、触れただけで呪う事が出来ると言うのは
 相手からしてみれば本当に理不尽だろう。

 例えば憎い相手が居るとする。その人物が人混みに入ったとして、
 その際にさり気無く触れてしまえば――呪いは完了すると言う訳だ。
 ひぃい、恐ろしい。

「何でそんな物選んだんだ?まさか呪いたい奴がいるのか?」

 別にそんなもの無くても全く困らない。
 指輪の見た目もそこまで良くない為、何故ポチがそんなモノを貰ったのか理解できない。
 無料だから、そこまで問い詰めるつもりはないけど……

「ふっ」

「ん?」

 何故か鼻で笑われてしまった。何かおかしなことを言っただろうか?

「次、ソラに手を出そうとする輩が現れたらな――」

「……出来れば現れない事を祈って置くよ」

 過保護すぎる気がするが、どうやらポチさんは俺の身を何が何でも護ってくれるらしい。
 出来れば此方を狙う存在が一生現れない事を祈る。
 相手にその気が無くても恐らくポチは何の躊躇いも無く呪いを掛けるだろう。
 そんな理不尽すぎる結末は避けたい。

「ソラよ、あそこの店に入るぞ」

「ん、分かった」

 それからはしっかりと目的に沿った店にしか寄る事は無く、
 先ほどの様な怪しい店などには一切見向きもしなかった。
 彼是数十件の店を回り一件一件、一着ずつ服を購入した。
 それからご飯を食べたのだが、まだ時間は昼過ぎなのでこれからどうしようかと考える。

「そうだ!」

 余りにも衝撃的な出来事の所為で頭から抜けていたが、
 ユリさんがポチと話し合いをしたいと言っていたんだった!

「ポチ、受付嬢が話したいって言ってたから寄ってかない?」

「別に話すことなど無いのだが……まぁ、良い」

「ちなみに、変な事したら怒るからな。絶対に何もするなよ!」

「わかってる」

 ポチが怒った原因の一つは受付嬢が関係しているので、
 手を出さない様に釘を刺しておく。
 まだこの国には居るつもりなので問題を起こす訳には行かないのだ。
 ケルベロス討伐完了の報告もしたかったので丁度良い。

 冒険者ギルドの中に入ると何時も通り、活気に溢れていた。
 魔王リリから受けた傷が大半を占めているのだろう。包帯を巻いている人々の姿が目立つ。
 そんな中、此方の姿を発見した受付嬢ユリさんが手を振ってくる。
 手を振り返したい気持ちで山々なのだが、ポチにあれだけ言われているのだから
 迂闊にそういった行動は出来ない。

「話しがあると聞いたのだが……それとケルベロス討伐は完了した」

 受付嬢の前に行くと早速話を切り出していくポチ。
 ついでにケルベロスの魔石を出して依頼完了の報告もしている。

「待ってましたよ。色々とお話があるので奥の部屋に来てください」

「うむ」

 別にここでも良いじゃないかと思うのだが、
 ポチが色々と喋ってしまい変に目立ちたくも無いので素直についていく。
 と言っても手を繋がれている為、半強制的に連れていかれる。
 部屋に入り椅子に座っても尚、手は繋がれたままだ。
 いい加減に手汗もかいてきたので解放してほしい……

 そこから一時間ほどユリさんのお話しは続いた。
 まずは軽めの説教を受けてそこからポチの実力の話になった。
 ケルベロスを倒した時点である程度の強さは確定しているので、
 もう隠す必要はないとポチに正直に話させた。

 と言っても、正直にいった所で受付嬢が――いや、誰もが信じるわけもないので、
 冗談として軽く流されてしまった。
 神位ならば殺せる――常人には理解できないことだ。
 最後にランクの話になり、ポチと俺のランクを上げてくれると言うことになった。
 特別な試験などは無しだが、これからランクを上げるには二人で依頼をこなすのではなく
 個人でこなさなければ難しいと俺に言ってきた。

 詳しく聞いてみると、ポチの実力だけで上位のランクに行くのは危険だと言う事だ。
 俺の実力は知らせていないため、当然の事だ。
 実力に見合わないランクになって良い事など一つもない。
 話を終え、ケルベロスの魔石と依頼完了報酬で大金を貰い、後は帰るだけなのだが、 
 少しやりたい事がある為、冒険者ギルドに残っている。

「依頼を出したいんだけど、どうすれば良いの?」

「依頼ですか、紙に依頼内主と内容と報酬を書いてくれれば後は此方に任せてください
 はい、これ紙。何を依頼するのかな?」

「ちょっと人探し」

 受付嬢にジロジロとみられながら書くのは困難なので場所を移して酒場のテーブルを利用して書く。

「誰を探すつもりだ?」

 事情を知らないポチがそう尋ねてきた。

「んとね、状態異常を解除できる人。それもかなり高位のね」

「ほう、それなら我でも良いではないか」

 確かにポチでも問題はないのだが、別に頼みたいことがあるのだ。

「ポチには別の事を頼みたいからね」

「ふむ、そうか……」

 会話をしている間に書き終わった紙を見直す。

 依頼主ソラ

 依頼内容
 高位の状態異常を解くことが出来る者を募集

 報酬
 働きに応じて
 最低でも金貨は保証


 ものすごく簡単にだが、これで十分だろう。

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