勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

森のオークさん

「ケルベロスは何処にいるのだ?」

「かなり遠いぞ、急げば今日中で着くけど、どうする?」

 リーン王国からまず草原を超えて森を超えて砂漠を超えた先の火山地帯に奴はいるらしい。
 俺とポチが本気を出せば一日も掛からずとも行けるのだが、そこまで急ぐ理由も無い。
 ポチが良いのならばゆっくりと通常通り時間を掛けて行くつもりだ。

「別にゆっくりでも構わんぞ」

「よし、じゃあだらだらしていくか~」

 リーン王国を出て草原に足を踏み入れる。
 途中まではしっかりとした道が出来ている為迷う事無く真っすぐ進める。
 途中で冒険者とすれ違ったり、昨日の魔王が現れた場所を調査している兵士と出会ったりしながら
 まったりと歩いていくと、前方に薄っすらと森が見えてきた。

「ポチ、あそこの森から少し魔物強くなるぞ」

「ほう、それは楽しみだな」

 表面にはあまり出しては居ないが、ポチの心はもうウッキウッキとしており、
 今すぐにでも戦いたいと言う気持ちが痛い程伝わってくる。

「そういえば最近ポチの事をモフモフしてないな」

「ん、するか?この方が何かと便利だからしているんだが、
 我はいつもの姿に戻っても問題ないぞ」

「じゃあ帰ったらお願い」

 ふと思い出した事を口にしてみたのだが、まだ禁断症状的なものが現れないので大丈夫だ。
 今まで忘れていたのだが、口に出してしまった所為か今すぐにでも、モフモフしたい気持ちになる。
 我慢だ、我慢。
 森の中へ足を踏み入れると流石に草原の様に道が整備されているはずも無く、
 非常に足場が悪い為、何度も足を取られる。

「ポチ~おぶってくれよ」

 そんな事をすればポチがさらに足を取られてしまうのではないかと思うだろう。
 だがそんな心配はする必要ないのだ。
 ポチの足元を見てみるとまるで青い狸の様に地面から少し浮いているのだ。
 普段は地面に足を付いているポチだが、
 今回は場所こういった場所なので精霊の加護の力で浮いているらしい。

 本当に精霊なんでもあり過ぎて一匹ぐらい欲しいぐらいだ。

「精霊を喰らえばソラもこうなれるぞ」

 そう言いながら膝を折って姿勢を低くしておんぶの準備をしてくれた。
 俺は精霊を喰らうと言う未知の体験を想像しながらポチの背中にくっつく。
 そもそもポチの言う精霊とは俺の思っている小っちゃい妖精の様なものではなく、
 丁度今の俺位の身長で見た目は人間の子供と変わらず羽が生えているだけだ。

 つまりなんら人間とは変わりがないのである。
 そんな存在をもしゃもしゃと食べるなど、俺はご主人様ではないのだから
 それは不可能だ、可能でも絶対やりたくない。

「ちなみに、どんな味するんだ?」

「そうだな……精霊の種類にもよるが、基本的には甘い」

「甘いのか……」

 それが当たり前なのかポチの味覚が異常なのか分からないため何も言う事が出来ない。
 そんな野蛮な話をしつつ森の中を進んでいくと本日初めての魔物と遭遇した。
 懐かしの豚顔の巨人さんオークだ。

「あれはオークと言うのか。中々面白い顔つきだな」

「おいおい、ポチさんやいそれは失礼じゃないかな」

 例え相手が人ではなくても初対面の相手に面白い顔だな。とはかなり失礼な事だ。
 俺がそんな事言われた傷付いて一生外に出られなくなってしまうかもしれない。

「それは困るな、償いとしてアイツを倒してやろう」

 勝手に失礼な事を言って勝手に償おうとして……理不尽な理由を付けられ
 殺されるオークさんの身にもなってほしいものだ。
 徐々に近付いていき、此方の存在に気が付いた魔物は叫び声をあげ
 考えなしに巨大な棍棒を振り回しながら突進してきた。

「先ほどから木々が倒れていたのはこいつの仕業か」

「そうみたいだな」

 考えなしに棍棒をぶんぶん振り回していたら何時かこの森無くなってしまうのではないか。
 そんな可能性生じてくるのだ、早急にオークを倒さなくてはいけない。

「いけーポチ!」

 おんぶされながら腕を天に掲げポチに合図を出す。
 両手は俺の足を支えてくれている為、ポチは魔法を繰り出してオークを瞬殺する。
 ポチにしては珍しい地味な魔法で周辺の草が針の様に鋭く伸び、
 オークの全身を串刺しにすると言うものだ。

 刺されても尚、数秒間はこちらに向かって突進してくるのだが、
 やがて力尽き、それと同時に鋭く伸びた草ももとに戻る。

「流石ポチ、魔石回収忘れないでね」

「ああ、わかっている」

 魔石を回収して更に奥に進んでいき幾度とオークやゴブリンなどの魔物が現れたが
 指一本触れる事はなく全員無残な死を迎えていた。
 そんな感じに森の半分まで足を踏み入れ辺りは真っ暗になってしまった為、
 今夜はここで野宿をすることにした。

 魔物の襲撃などは勿論沢山あるだろうが、そんなものポチに掛かれば結界の一つや二つ
 簡単に貼る事が出来るので安心して眠る事が出来るのだ。
 開けた場所を探して、モフモフの絨毯をイメージして具現化させ地面に敷き、
 テーブルとも出しておく。

「結界貼り終わったぞ」

「ん、おつかれ。じゃあ休もうか」

 ポチの毛並みを再現した絨毯があればベットなど必要ない。
 俺とポチはゴロンと寝転がり食事をする事も忘れて眼を瞑った。

「勇者になれなかった俺は異世界で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く