勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

目的を忘れて食べ歩き

「ふぃ~結構良い所だな」

 お金に余裕が出来たので少し良さそうな雰囲気がある宿を取った。
 前回同様に受付は全てポチに任せている。
 覚えが良いポチはもう騎乗を使って心を読ませなくても
 戸惑うことなく受付を済ませる事が出来た。

 ふっかふっかのベットにダイブしてゴロゴロとする。
 流石は少し高めな宿だ、身体が包み込まれて行く。

「今日の頑張りのおかげだな。感謝するが良い」

「ははぁ~ポチ様ありがとうございます」

 そんな心のこもっていない礼をしつつベットに身を包み少々身体を休める。
 今日の目的はこれで終了としてこのまま寝ていたいのだが、
 今日の目的は実はもう一つあるのだ。
 正確には今日と言うより今後の目的なのだが。

「さて、行くか」

 ほんの少しだけ身体を休め俺は素早く立ち上がった。
 ゆっくり立ち上がるとベットの誘惑に負けてしまいそうだからだ。

「何処に行くのだ?」

「情報探し、ついでにご飯食べようか」

 ついでにご飯と言ったのだが、本当はこっちがメインなのかもしれない。
 ヤミたちの情報がそんな簡単に集まるとは思っていない。
 一日や二日でどうにかなるものではないと端からわかっている為、
 ご飯をメインにしつつ気になる情報があれば少しだけ聞きこんだりしよう。

「いつまでもゴロゴロするな、行くぞ!」

「仕方がないな……」

 外に出て向かうは商店街。
 ガヤガヤと賑わってる商店街をはぐれない様に手をつないで回る。
 相変わらず凄い人の数だ。

「ん?」

 ふとポチの顔を見上げると何やらモグモグと食べていた。
 何時の間にそんなものを買ったのだろうか。
 串なのだが、刺さっているモノは何やら透明で様々な色に染められたスライムの様なものだ。
 エリルスの記憶を辿ってみるが、そのような串の情報は無い。

「何食べてるの?」

「む、良く分からんが一銅貨だったから買ってみたぞ」

「ん」

 怪しものを買ってしまったのではないかと少し不安になったが、
 差し出された串に恐る恐る食らいつく。
 スライムの様なものを口の中に入れ噛み砕くと膜の様なものが割れ、
 凝縮された林檎の様な味がブシャーと溢れ出し口の中を蹂躙していく。

「どうだ?」

「これ凄いな……ジュースみたいだ」

 他にもいろいろな色があるが、恐らく味によって色が違うのだろう。
 分かりやすく良い。これが一銅貨ならまた買ってみても良いかもしれない。

「これも食べてみろ」

 そんな事を思っていると、ポチが新たな食べ物を差し出して来た。
 ずっと俺と手を繋いでいるくせに一体どんな仕組みなのだろうか……

「何時の間に買ったんだよ……」

 差し出されたのは袋に入った無数の薄い皮を上げたようなものだった。
 そーっと袋の中に手を入れて一つだけ摘まんで口に運ぶ。
 かりっと心地の良い音がなり、ほんのりの振られた丁度良い塩。
 油は大した事無く、これならバクバクとお菓子感覚で食べれそうだ。

「上手いな」

「我の目に間違いはないな。次はあれだな」

 一体どの店の事を言っているのか分からないが、
 良く見るとポチの手にはお金が握られており、
 一瞬、瞬きをしただけでそのお金は消えており代わりに串が握られていた。
 推測するに店を通り過ぎる時に一瞬でお金を置いて商品を貰っているのだろう。
 確かにこの混雑の中ではゆっくり買い物をするのは難しく、立ち止まったりしたら迷惑が掛かる。
 だが、目にも止まらぬ速さでお金を置かれて商品が
 取っていかれる店の人の気持ちを考えると非常に心臓に悪く申し訳なくなる。

「うむ、これも上手いぞ。ほら」

「どれどれ」

 お金は払っているようだし、別に注意はしない。
 差し出されたのはサンドイッチの様なものだ。
 パンに様々な明るい色の野菜が詰まっていて健康に良さそうだ。
 一瞬ポチと関節なんたらになるのではないかと思ったのだが、
 よくよく考えればそんなの今更なので、気にしないで食べ掛けをもぐもぐする。

 シャキシャキと一つ一つの野菜に歯ごたえがあり、
 噛めば噛むほど味がにじみ出てくる。
 あまり野菜は食べない方だが、これならば一日一回は食べても良い。

「うん、美味しい」

「だろ!じゃあ次は――」

 気が付けばずっと食べてばかりで辺りはすっかり暗くなっていた。
 何時間食べ歩きをしたのだろうか、そこまでお腹は膨れてはいないが、
 結構な量を口にしたと思う。
 ポチが選んでくれるのはとてもバランスが良く、少し重たいものを食べると次は軽めのサラダや、
 飲み物、甘いものと、結構気が利いている。

 情報は一切仕入れる事が出来なかったが、こういうのも悪くは無い。
 明日冒険者ギルドで少し情報を探してみれば良いや……
 そう考え、俺はポチと手を繋ぎながら宿に向かった。

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