勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

報告を待つものたち

 爆発するはずの予定から数時間が経過して既に一日経とうとしていた頃、
 大魔王達は未だにまだかまだかと丘で待っていた。
 数時間程度ならまだ仕方がないと待てていた大魔王達だが、
 流石に一日も待たされ痺れを切らした。

 と言っても流石に大魔王自ら出向くわけにはいかないので、
 魔物を召喚し国を偵察してきてもらおうと考え、
 大魔王達全員の特性を持ったスライムが生み出された。
 他の魔物の候補もあったのだが、一番安全に国まで行けるのはスライムだと判断された。

 最弱でどこにでもぽんぽんとわいてくる為、
 冒険者たちも態々スライムを倒したりはせず大体が素通りしていくのだ。
 そのことを知っている大魔王達はそれを利用して上手い事国にスライムを
 忍び込ませて送り込んだ人形がどうなっているのか確認する事にしたのだ。

 生み出されたスライムは見た目は本当にそこらへんに居るスライムのままなのだが、
 大魔王全員(この場にいる)の特性を持っており、全てのステータスがずば抜けて高い。
 例えSランクの冒険者が数十人掛かりでも体力を半分に持っていけるか怪しい程だ。
 万が一潜入が妨害される場合は即座に無力化しスムーズな行動が可能だ。

 スライムを草原に放ち、みんなワクワクしながらスライムの報告を心待ちにしていた――
 化け物級のスライムならば何の心配も無く報告を持って帰ってきてくれると信じ切って。
 だが、その頃リーン王国付近の草原ではそのスライムすらミジンコ程度の存在に扱ってしまう
 化け物がスライムの事を楽しそうに潰しているのだ。

 そして大魔王の特性を持ったスライムも最弱スライムのついでに潰されていた――
 そんな事知る由も無い大魔王達はまだかまだかと待ち続けている。

・・・・

「依頼完了したぞ」

 魔石とコアを両手一杯に持って冒険者ギルドに向かい、
 周りに目をくれる事無く真っすぐカウンターに持っていく。
 まずは依頼のスライムコアを剥ぎ取れた分だけドンと置く。

「はい……随分と集めましたね」

 受付嬢は依頼のスライムコアを一個ずつ丁寧に見て行き、
 20個を超えたあたりから適当に流していき、そんな言葉を漏らした。
 これがスライムではなく別の魔物だったのならばこんな雑な扱いはされないのだろうが、
 まぁ、最低ランク依頼なので仕方がない。

「僕のお姉ちゃんは凄いんだって言ったでしょ?」

 そうやって言ってポチの株を上げてから少しどや顔をしながら
 精一杯背伸びをしてカウンターに取れた魔石を置いてやった。

「ず、随分と集めたのですね……今換金しますね」

 スライムの魔石だからそこまで期待はしていないが、
 記憶通りの値段だと助かる。
 もしも値段が下がっていたのならばまた外に行かないと行けなくなる。
 数分後、換金を終えた受付嬢が戻ってきた。
 その手にはパンパンに中身が詰まった布袋。

「はい、どうぞ。スライムの魔石事態は大した金額にはならなかったのですが、
 一つだけとても強力な魔石が混ざっていたので小金持ちになりましたね」

「?」

「そうか」

 一体なんの魔石が混ざっていたのだろうか。まぁ、混ざっていたと言っても
 王国付近の魔物からとれる魔石は限られている。
 そこまで珍しいものではないだろう。
 ポチが布袋を受け取り、依頼完了の手続きを終えて俺たちは冒険者ギルドを出て
 今日の宿を探しに街中を歩く。

「ねぇ、ポチ」

「なんだ」

「ちょっとその袋の中身見して」

「ほら」

 小金持ちと言っていたが一体いくら程になったのだろうか。
 気になった俺はポチから布袋を受け取って中身を見てみた。

「おぉお!?」

 袋の中には大量の銀貨と少しだけ金貨と銅貨が混ざっていた。
 銅貨が大量で銀貨が少しあるぐらいだと思っていた為、
 この信実には驚いてしまい思わず変な声を出してしまった。
 これなら暫くお金を稼がなくても済むぞ……

 そう思ったのだが――それは止めよう。
 楽しそうなポチが見れなくなるのはいやだ。

「どうしたんだ?」

 俺の変な声に反応したポチが心配そうに声を掛けてきた。

「ん~、思ったより少なかったなぁって」

「また明日も稼げば良いだけだろう?」

「そうだな」

 楽しむポチを見る為にそんな嘘を平然と付いて宿探しをする。

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