勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

爆破を待つモノたち

 ポチが真の勇者を宿に連れて行く前に遡り、
 リーン王国の人形がまだ存在している頃、大魔王達は王国からかなり離れた丘に集合していた。
 デーグをはじめ、計8名の大魔王が勇者パレードに送り込んだ人形が引き起こす
 ある出来事を早く起きないかと楽しみ遠目でリーン王国を見ている。

 その中に姿が無いのは大魔王オヌブとエリルスだ。
 オヌブは結果が見えているから行かないと言い、自分の城に籠ったままだ。
 その発言を聞いていた誰もがリーン王国が消滅することが分かり切っており、
 そんな結果が見えているのに態々行く必要がないと捉えたのだが、
 それは違って、オヌブは知っているのだ。

 たった数時間前にこの世界に降り立った真の勇者とは違う存在を。
 一瞬で力を抑えた様だが、オヌブはその異質過ぎる存在をしっかりと観察していた。
 その力は真の勇者と比べるとまさに天と地の差がある程だ。
 流石にその異質に危機感を覚えたオヌブだが、直ぐに理解した。
 あれがエリルスの言っていた彼なのだと。

 エリルスが言う様にあれほどの力を持っているのならば大魔王すら倒すことが出来るだろう。
 真の勇者の力を警戒している自分たちが恥ずかしくなる程だ。

 だが、同時に疑問が生まれた。
 彼の隣に居るのは一体誰なのか。そして彼の背後に無数に広がる存在は何なのか。
 隣にいる女の様なものは力の推測すら不可能な異質な存在であり、
 背後に無数に広がる存在はもはや姿を把握する事すら出来ず
 当然、力の推測すらできない。

 だが、彼の近くにいると言う事はそれなりに力を持っていると言う事だ。
 オヌブは思わず唾を飲みこむ。
 もし彼らが本気で暴れるのならばあっけなくこの世界は滅びるだろう。
 そんな事を思いつつも彼らの観察を続けると直ぐに理解不可能な光景を見てしまう。

 一瞬にして複数の生命体の命が消えたのだ。文字通り一瞬でだ。
 どんなに素早い攻撃をしようが世界を観察している彼女には
 その手口が糸も容易く理解できるのだが、今回のは全くと言って良い程理解できなかったのだ。
 そしてリーン王国へ向かう彼らを見て今回の作戦は必ず失敗するのだと悟った。

 同時に彼女はその二人達を観察するのを止めた。
 これ以上観ていたら確実に自分の常識が覆させられ自信を無くす。
 彼の事はもうエリルスに任せよう。

 一方のエリルスは当然ソラ達が帰ってきた事に気が付いており、
 今すぐにでも会いに行きたい気持ちがあったのだが、
 彼女は彼女なりの出迎え方を考え、その気持ちを抑え、
 エリルスもまた魔王城に籠るのであった。

 二人ともリーン王国に送り込んだ人形は失敗に終わると分かり切っていた。
 ソラがリーン王国に向かった時点で大魔王達の作戦は失敗なのだ。
 だが、そんな事は知らない大魔王8名はまだかまだかと爆発を楽しみにしていた。
 起こるはずも無い爆発を――。

「勇者になれなかった俺は異世界で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く