勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

裏路地にて

「やはり持っていないのか……あの倒した賊から奪って来るか?」

「ん~」

 その方が何の危険もおかさずにお金が手に入るかもしれない為、非常に良い案なのだが、
 賊がもう魔物に喰われ消えているかもしれないし、そもそもお金を持っていない可能性だってある。
 その点を考え、確実性も含め、俺はそれ以上に手っ取り早く
 お金を巻き上げられる方法がある事に気が付いた。

「行くぞポチ!進め!!」

「なかなかひどい事を考えるものだ」

 ポチに肩車をされたまま目的地へと向かう。
 俺が考えているのは裏路地へと向かいそこでわざと悪い人に絡まれるのだ。
 そして、ぽんぽんと軽く成敗してお金を巻き上げてしまおう。
 正直な所これも確実にお金が手に入ると言う訳では無いのだが、
 一応は世話になる国の為、少しだけ清掃を兼ねてだ。

「さてさて」

 裏路地に入り込みとぼとぼと歩いてみる。
 相変わらず日の光があまり入らずじめじめとしている。
 少し薄暗い感じ俺は嫌いではない。

「我も嫌いじゃない」

「そうか」

 暫く歩いてみるが全く悪い人が現れる事は無い。
 人の姿すら見えなく何だか不気味な感じなのだが。
 よくよく考えると勇者パレードとか言う珍しいイベントが開かれているのだから
 いくら悪い奴だと言っても気になり裏路地から出て行くだろう。

「無駄足だったかもね」

「ふむ、戻るとするか」

 ガックシと少し肩を落としながら来た道を戻っていく。
 帰りに悪者が出現していないだろうか、と少しだけ期待しつつ戻っていくと
 ポチが何やら気配を感じ取ったらしく足を止めた。
 膝車されている俺も自動的に止まる。

『此処を曲がった角に三人。この反応からして先ほどの勇者たちだろうな』

 ほう、悪者じゃないけどそれはそれでラッキーだな。

 流石にお金を巻き上げると言う事は出来ないが、
 勇者パレードの真っ最中にこんな場所にいると言う事は、
 抜け出して来たと言う事が分かり、何か助けを求めているのだ。
 それを上手い事利用して宿代ぐらい分けてもらおうではないか。

 真の勇者、それもパレードが開かれる程ならばかなり期待されていると言うことだ。
 つまりお金も良い額貰っているはずだ。

 よし、ポチさんやい。頼んだぞ

『任せろ』

 肩車はやめずに勇者がいると思われる方へ進んでいき角を曲がってみると
 ポチの予想通りに真の勇者三人がいた。
 三人も此方の存在に気が付いた様で警戒心丸出しで見てくる。
 だが、勇者の一人――眠たそうな少女が口を開き、その警戒心は解ける。

「君、確かパレードに居た子だよね?」

 眠たそうにしている割には良く周りの事を見ているのだなと少し感心する。
 此処でも子供っぽく振る舞い相手を欺く。

「うん!そうだよ。勇者さんたちはここでなにしてるの?」

 なんの違和感も無く子供らしい無邪気な質問をぶつけて
 勇者たちの事情を探ってみる。
 本当はポチにやってもらう予定だったが、流れがこちらに向いてしまった以上仕方がない。

「やっぱり、執事服可愛いね……私たちはちょっと疲れたから此処で休んでいたんだよ」

「そうなんだ、戻らなくて良いの?」

「ん~戻った方が良いんだろうけどね……」

 彼女はそう言いながら隣に居る勇者ケンドウ タツノスケにも視線を送った。

「僕は頭の整理が出来るまで休んでいたいな……」

「いきなりこんな世界に連れてこられて……人殺しもさせられて……
 俺たちが何をしたって言うんだ」

 そう言うキムラ マコト君だったが、何故か頬が少し赤くなっていた。
 頬を赤くする理由は良く分からないが、その気持ちは良く分かるような気がする。
 人殺し……と言うのは多分あの人形の事だろう。
 見た目は完全に人間だが中身は人形だ。気が付かなくて当然だ。
 まぁ、実際の所殺してはないのだが、

 いきなり勇者召喚されて、パレードに出され……確かに災難だ。
 だが、そう思っているのならばまだ救いようがあると言う事だ。
 アイツらの様におかしくなってしまってはいない様だ。

「お前たちは休むところが欲しいのだな?」

「え?はい、そうです」

 ポチが良いタイミングで言葉を発してくれた。
 流石ポチさん。

「ちなみにお金は持っているか?」

「良く分からないけど、こんなの貰った」

 そう言って彼女はポケットから三枚の金貨を出した。
 三金貨だ。真の勇者はかなり期待されている様だな。
 ……実はアイツらもこれぐらい貰っていた……なんて事は無いよね?

「それだけあれば足りるな。少しで良いから分けてくれるのならば
 休める場所に案内してやっても良いぞ」

「本当ですか?でも僕たちはまだ貴方を信用できない――」

「別に信用できないのならば断われば良い。
 此処で掛けるか、パレードに戻るか選ぶが良い」

「これ、上げる」

「そうか、交渉成立だな」

 他の二人の意見は聞かずにミズノ シズカが三金貨をポチに渡した。
 自分勝手の様な行動だが、こういった場面で思い切った行動は
 物事をスムーズに進める際に非常に良い。

「ちょ――」

 ポチが交渉成立と言った瞬間本日三度目の時間止めが発動した。
 今回も俺は動ける様だ。

「ソラよ宿まで案内してくれ」

「時間を止めてこいつらも運ぶのか……良いなそれ」

 運ぶこっちからすれば面倒だが、相手からすると転移と同じような感覚になるだろう。
 エリルスの微妙な記憶を頼りに宿に向かう。
 ポチはまたまた加護を使い三人の事を浮かして軽々と運んでいた。

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