勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

冒険者ギルド

 馬車擬きに乗せられリーン王国に辿り着いた。
 門兵に止められるがその辺は全てラパズに任せている。
 余程顔が利くのだろう、名前を言うだけですんなりと通されてしまった。
 それも、門兵たち全員が出てきて頭を下げているのが中か見えた。

 やはりどこかのお嬢様なのだろうか。
 パレードの為にこっそりと抜け出して来たとも言っていたし、
 普通の女性ではないのはわかっている。
 今回の事が大事になれば確実に俺たちも巻き込まれるだろう。
 関係をもつことは悪くはないが、今はゆっくりと冒険してヤミ達を探すと言う
 大きな目的がある以上、巻き込まれる前に姿を消した方が良いのだろう。

 リーン王国に入ってから数十分が経つ頃、馬車擬きは足を止めた。

「これから私はお知り合いの家に向かうのですが、お二人はどうしますか?」

 馬車擬きの中までわざわざやってきてそう訪ねてきた。
 外をちらりと見てみるとどうやら此処は馬舎の様な場所だ。
 どうやら快適な移動は此処までのようだ。

 ふむ、なら此処でお別れだな

「我たちは別の道を行くとしよう」

「そうですか……出来れば紹介したかったのですけどね、
 またどこかで会う事があれば、その時は改めてお礼をしますね!」

「ばいばい~」

 ささっと別れを告げてラパズから距離を取る。

「パレードまでは時間あるようだな」

「ん?ああ、本当だ」

 石煉瓦造りの街中を歩いていると、小さな広場に掲示板があり
 そこにはいくつもの紙が貼ってあるが、それを覆い隠すように大きく
 勇者パレードに付いての知らせと言う紙が貼られていた。
 内容はパレードの場所と日時が書かれているだけであり、
 そこまでデカデカと掲示する必要はあるのだろうかと疑問を抱く。

「今日の夜か……じゃあ、それまで身分証でも作りにいくか」

 今は大体夕方ぐらいの為、まだ時間に余裕がある。
 冒険者ギルドに向かいギルドカードを発行してもらう。
 それが手っ取り早く身分証をつくる楽な方法だ。

「冒険者ギルド、楽しいのか?」

「まぁ、色々な人がいて色んな情報が集まる場所だからつまらない事はないだろうな」

 これから俺たちは冒険をしてヤミ達を探さなくてはいけない。
 そうなると、冒険者ギルドは必須だ。
 情報を集めるのにあそこほど最適な場所はないだろう。
 曖昧な記憶を頼りに冒険者ギルドに何とか辿り着くことが出来た。

 あの冒険者ギルドの様に可愛らしい手描きの文字は無いが、
 外装は大して変わりはない。
 中に入ってみると、内装も大して変わりは無かった。
 どうやら冒険者ギルドはどこも同じ造りをしているようだ。

 足を踏み入れると視線が一気にこちらに集まる。
 酒場で飲んでいる者たちも手を止めて何ら隠す事も無くジロリと堂々と見ている。
 その視線はポチではなく俺に向いている。

 無理もない事だ。自分で言うのもなんだが【餓鬼】がこんな所に来るものではないからだ。
 この視線は敵意とかではなく、単に子どもが何故こんな所に来たんだ?と言う疑問の表れだ。
 此処は胸を張って堂々とカウンターに言って受付嬢にイケボでギルドカードの作成を頼む。
 と言いたいところだが、生憎この身体では真面に聞いてはくれないだろう。

 だから――

「ひっ!」

 わざと情けない声をあげてポチの後ろに隠れる。
 そして、ポチの服を軽く掴み怯えている子供を演じてみせる。 

『これは悪くないな』

 そんな感想は求めてない。早くギルドカード作成するぞ。

 これでポチが受付嬢にギルドカード作成を依頼し、
 そのついでに俺のも作っちゃえば良いのだ。
 ポチが歩き出しその後ろをぴったりと俺が歩く。
 相変わらず視線が注がれているが無視だ。

「ギルドカードを作成したい。我と弟の分もついでにだ」

「はい、わかりました。では此方の紙にサインをお願いします。
 文字が書けない場合は代わりに私が書くので言ってくださいね」

「うむ」

 受付嬢と言うのは美人しか慣れないのだろうか。
 と思ってしまうほどこの世界の受付場は美しい人ばかりだ。
 紙を受け取り名前と年齢と種族を書くのだが――カウンターに届く様な身長ではないのだ。
 この世界のカウンターが高いだけで決して俺がチビと言う訳では無いぞ!

『ほれ』

「うわぁ!」

 ポチが振り向き俺の身体を軽々と抱きかかえ持ち上げてくれた。
 これで難なく紙にサインを書けるのだが、少し恥ずかしい。

『我はこの世界の文字は知らぬぞ。代わりに書いてくれ』

 ああ、そう言えばそうだな――ってじゃあ何でさっきの掲示板は読めたんだ?

『数字ぐらい読めるぞ。莫迦にするな』

 なるほど……

 あまり意識はしたことなかったのだが、
 どうやら向こうの世界と数字は一緒らしい。

 持ち上げられながらも汚い字ですらすらと書いていく。
 まずは自分の名前だ。ソラ、年齢――適当に六歳ぐらいでいいや。
 種族――人間でありたいから人間でいいや。

 次はポチの方だ。
 名前はポチ――良い名前だ。年齢――ポチ何歳だ?

『忘れた』

 なら、十八歳にしておこう。種族は――まぁ、今は人間だから、人間で。
 ……よし、出来た!

 受付嬢に渡すと裏に行きギルドカードを発行してくれた。
 冒険者についての説明を聞くかと言われ、知ってるから断ろうとしたのだが、
 此処で断ったら色々と悪目立ちしそうなので仕方なく聞くことにした。
 すると、受付嬢は嬉しそうに笑顔を浮かべ説明を始めた。

 ひょっとするとこの世界の受付嬢は説明が大好きなのかもしれない。

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