勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

いざリーン王国

「私の名前はラパズ=パピルスと申します。
 この度は助けて頂きありがとうございます」

「僕はソラ!それでこっちはお姉ちゃんのポチだよ!」

 自己紹介を交わす。出来るだけ子どもらしくだ。
 一瞬ポチの事をお母さんかお姉ちゃんどっちにするか迷ったのだが、
 母親と言うよりは何だかんだ言って世話をしてくれる姉と言う感じだ。

『ほう、我が姉だと』

 歳を喰った婆さんよりは良いだろ。

「ソラくん、ポチさんですね、本当に――」

「そんな事よりも助けた礼はしてくれるのだろうな?」

 ラパズの言葉を遮り報酬の話を持ち出すポチ。
 どのみちその話に持っていき上手い事近くの王国に楽して入国する予定だったので、
 少し早い気がするが、まぁ、問題ないだろう。

「は、はい!それは勿論ですわ!何を支払えばよろしいのでしょうか」

「そうだな……我たちは身分を証明する物を持っていないのでな、
 此処の近くの王国に楽して入れる手続きをして欲しいのだが」

「え、そんな事でよろしいのですか?
 てっきり金銭など要求してくると思ったのですが……」

 驚いた顔でそう言われ、そんなみすぼらしい恰好でもしているのだろうかと心配になる。
 執事服と可愛らしいお洒落な服……別に普通だ。
 正直な事を言うと確かにこの世界のお金は持っていない為、
 金銭も欲しいのだが……金稼ぎも冒険の一つのだ、コツコツやっていこうか。

「構わない、ちなみに可能なのか?」

「はい、問題ありません」

 よし、これでこの世界にきて一つ目の目標は達成だ。
 ……記念すべき一つ目が相手を利用するって少し残念だ。

「お姉さん、なんでこんな所にいたの?」

「えっと……それはですね、今日はリーン王国にて勇者召喚のパレードがありまして、
 ぜひ見に行きたいと思い、こっそりと抜け出して来たのですが……このざまです。
 御者さんには非常に申し訳ない事をしてしまいました……」

「!」

 下を向き今すぐにでも泣き出しそうな声で呟いた。
 どうやら御者が居た様だが賊にやられたようだ。
 襲われる危険がある事を考慮して護衛を雇わなかった彼女の責任だ。

 それよりも、気になるな……

「力も無いくせに護衛を雇わずに来たお前の責任だな。
 精々、生きてその愚かさを償うことだな」

 おや?珍しくポチが他人に優しいことを言っているぞ。

 何時もなら、お前の責任だ。で終わりそうなのだが、
 今回はその続きがある。何だか今日は何かが起きそうだ。

『ソラ、後で覚えてろよ?』

「はい、そうですね……気を取り直して、早速向かいましょうか!」

 パチンパチンと顔を叩き切り替える。

「外に転がっている死体はどうする気だ?」

「放っておけば魔物の餌になるでしょう」

「そうか」

・・・・

 それからラパズは御者の代わりとなり馬車擬きを動かしてリーン王国に向かう。
 俺とポチは中でゆったりとくつろいでいた。
 ポチのお蔭で塵一つない状態になっており、非常に快適だ。
 本当にこの世界に来てからポチには助けてもらってばかりだ。

「ソラよ、これからどうするつもりだ?」

「勇者召喚、どう思う?」

「知らん」

「……まぁ、そうだよね」

 ポチに勇者召喚と言っても伝わらない。
 彼女は確かに勇者召喚のパレードがあると言っていた。
 勇者召喚……新しい勇者がこの世界にやってくる事を意味している。
 ……また、繰り返すのか。

「そんなに故郷が同じ者と戦うのが嫌なのか?」

「ん~別に嫌ではないが、気分が良いものではないな」

 出来れば手遅れになる前に助けてやりたいと思うのだが……
 まぁ、それは機会があればって事で良いだろう。
 故郷が同じと言うだけで無理をして助ける必要性は感じない。

「何だかんだいってどうせ助けるつもりだろ」

「それはどうかな、勇者の人間性にもよるかもな」

 本当に俺は魔王の手からこの世界を救ってやる!!
 などと考えている莫迦ならば助ける必要はない。勝手に世界救ってろ。
 口では世界を救うと言いつつ、そんな面倒な事はしないと心で決めている、
 そんな人間ならば救いようがある。

「じゃあ、パレードに行くと言う事で良いのだな?」

「ああ、そうだな。恐らくそこで勇者の事見られるだろうし」

 二つ目の目標だ。

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