勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

やり過ぎですポチさん

 本日、リーン王国にて勇者召喚が行われる。
 前回の勇者召喚は戦力拡大の為、力の強弱は問わずに出来るだけ多くのもを召喚し、
 神の加護を与え手っ取り早く戦力拡大を完了することが出来た。
 今回の勇者召喚はそれとは違っており、量よりも質を選ぶ予定だ。

 神の力と王国魔法使いの魔力を合わせ莫大な力を秘めている真の勇者召喚だ。
 国民にもしっかりと勇者召喚の日程は知らされており、
 その後に開かれるパレードに向けて国全体で準備に取り掛かっている。

 王座の間で召喚の儀式が行われる。
 王座には王が座り、万が一の出来事が起きる可能性がある為、
 近衛兵がズラリと左右に並んでいる。
 全ての魔力を預かっている王様が召喚魔法を唱えると赤い絨毯の上に魔法陣が浮かび上がる。
 魔法陣に込められた魔力は膨大で鍛え抜かれている近衛兵ですら思わず怯んでしまう程だ。

 そして魔法陣から三人の勇者が召喚される――

・・・・

『さあ、何処に行く?』

「ん~取り敢えず人がいる場所に行ってみようか」

 やっと世界に帰ってこれたのは嬉しいのだが、正直に言ってあの二人がいないのは寂しい。
 だが、何時までもそんな事は言ってられない。
 二人が送り出してくれたのだから今は思う存分に満喫しよう。
 ヤミたちに早く会いたい気持ちもあるのだが、何処にいるのか分からない――。
 無駄に探し回るぐらいなら冒険をしながら情報を探して探していこう。

 エリルスの記憶を辿る限り此処はリーン王国の近くの草原らしい。
 数年しか経っていないが、この世界なら地形が変わっていてもおかしくはない。

『そうか、なら乗るが良い』

「ん、ありがと」

 こっちの世界に来てもポチのモフモフは変わる事はない。
 そういえばこっちの世界では魔法は使えるのだろうか?
 彼方の世界ではエクスマキナの力でスキルが浸かるようになったが……
 そう思いつつ騎乗を発動させポチと魔力を繋げる。

『む?』

 成功したようだ。ポチの思考が伝わってくる。

「ちょっとした実験だ」

『ふむ、そうか……所でソラよ』

「嫌だ」

『まだ何も言っていないだろう!』

 騎乗を使っている為、ポチが何を言おうとしていうのか分かってしまう。
 この先に襲われている人たちがいるが、どうする?と言う事だ。
 正直に言って面倒だ。

『情報が欲しいなら利用すべきだと思うんだが』

「ん~」

 確かに情報は欲しい……よくよく考えれば何処かの国へ行く際に
 身分を証明するものがないと不便だ――ポチの言う様に利用するとしよう。

「よし、助けよう。だけどポチは人間の姿になってくれ」

『ああ』

 ポチの上から一旦降りるとボコボコと獣の姿から何時ものお姉さん姿になった。
 もちろんすっぽんぽんだが、目を逸らしたりはしない。もう慣れた。

「出来れば強そうな男の姿が良かったんだが……」

『残念だな、男物の服はない――うぇえええぇえ』

 じゃあ、女物の服は何処にあるんだよとツッコみたかったのだが、
 ポチがお金同様に吐き出しやがった。
 それも全く汚れていなく、洗濯したてだと言っても違和感がないぐらいだ。

「その汚い排出やめろ、あとお腹の中に収納するな!」

『ふっ、いくぞソラ!』

「……」

 鼻で笑われてしまい話題を逸らされてしまった。
 軽く走ると直ぐにポチの言っていた襲われている現場が見えてきた。
 懐かしい馬車擬きを囲む数人の雑魚の姿があった。
 二人で馬車の中から人を引きずりだそうとしている。

『ソラの世界にはあんなのばかりなのか?』

 ん~どうだろうな、探せばいそうだ。
 それじゃ、ポチ。今回の戦闘は任せた!

『ああ』

「おぉん?」

 近付いて行くと此方に気が付いた雑魚の一人が鋭利な刃物を向けてきた。

「おいおい、なんか来たぞ?しかも女がいるぜ!!」

「うひょ!丁度良い所に来たなぁ!」

「へっへへ、まずはあの餓鬼を処理しますか!」

「お前、行ってこい!」

「へーい」

 ある程度近付き声が聞こえる距離まで詰め、足を止めた。
 雑魚共の会話からあの馬車擬きには女が乗っていないらしい。
 それにしても……餓鬼と言われるのは少し不愉快だなぁ

『安心しろ、直ぐに殺して償わせてやるから』

 頼もしいけど、別に殺さなくても――っ!?

「へっへっへ!」

 身体強化を予め使っていたのだろう。
 決して反応できない速さでは無かったが大して警戒する相手ではないので無視していると
 一瞬にして背後を取られ首に刃物を当てられてしまった。
 ちょっと、怖い。

「おい……誰がソラに触って良いと言った!!!」

「――」

 別に許可など必要ないのだが、ポチはそれが気に喰わなかったらしく、
 物凄い形相になり瞳孔が開き完全に殺人鬼の顔つきになり、
 相手に有無を言わせずに頭を掴みそのまま回転させ首を引き千切った――
 大量の鮮血が飛び出すがポチの掛けてくれている加護によって汚れ一つ着かない。

「なにもそこまで――!?」

 そこまでやる必要はないだろ、と言おうとしたのだが――世界の時が止まった。
 闘技大会で使われた例の反則級の技だ。
 相変わらず俺の意識はあるようだが……雑魚相手に此処までやるか?
 ……待てよ?雑魚相手に使うと言う事は俺も雑魚と言う事だったのか!?

「貴様らの所為で!!」

 んんんんん!?ポチさん!?

 時が止まっている中でポチは雑魚一人一人に怒りをぶつけながら
 散々ボコボコにして殺していく。
 あるものは四肢を引き千切られた後に頭をつぶされ――

「我のソラが汚れてしまったじゃないか!!!」

 シンプルに二つに裂かれたり――色々と刺激が強すぎる出来事が目の前で繰り広げられた。
 そして時間が動き始める――その場には真っ赤な湖が出来ていた。

「やり過ぎだ」

「知らん、勝手に死んだ」

「……」

 今回の件で、此方の世界でも十分に魔法や加護は使える事が分かった。
 さぁ、これからこの人たちを利用するとするか。

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