勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

あっさりと帰還

 かなりの苦戦を予想しており数時間は覚悟していたのだが、
 僅か数十分程で勝負が付いてしまった。
 あまりにもあっさりと終わってしまい、本当に倒せたのか疑問に思ってしまう。
 死体は完全消滅しており本当に倒したのか確認のしようがない。
 ポチの下へに向かい、速攻でポチに抱き着きもぞもぞと器用に動き背中に上る。

「ん~なんかすごいあっさり倒しちゃったんだけど」 

『そりゃ、世界を超越した技を使われちゃ勝ちようがないだろう』

 この世界において奴は最強だったのかも知れない。
 全てを無効化できると言う事によって生じた慢心。
 その慢心が仇となり異世界の技に対処することが出来なかったのだ。

「本当に倒せたのかな?」

『ああ、それなら大丈夫だ。奴の気配は完全に消滅した。
 その証拠に我の加護も復活しているぞ』

「ん、それを聞いて安心した。戻るか」

『ああ、お疲れさま』

 あまり達成感を感じないのだが、これでやっと帰れるんだ。
 やっとエミ達の下へ帰れる。長かったようで短かったこの世界の旅も悪くは無かった。
 新たな仲間、家族と呼べる存在が増えて大満足だ。
 エキサラ達の下へ戻ると、そこにはニコニコと笑顔を浮かべたヘリムが立っていた。

「ただいま、約束果たしたぞ」

「うん、おかえり!ありがとうね、僕の我儘をまもってくれて」

「おかえりなのじゃ~」

「早速で悪いんだけどね、
 実は僕の魔力的に向こうの世界に帰れるのは二人が限界になっちゃった」

「え」

 突然ヘリムの口から告げられたのは衝撃的なものだった。
 折角神を倒したと言うのにも関わらず、みんなで向こうの世界に行くことは叶わない。

「二人……なら、全員送れる魔力が回復するまで待つか」

 誰かを見捨てて行くのならば全員が行ける様になるまで待った方が良い。
 早くヤミ達に会いたいのだが、こればかりは仕方がない。

「いや、その必要はないよ。僕とご主人様で話し合ったんだけどね、
 ソラ君とポチの二人を送るって決めたんだよ」

「え、でも――」

「一応僕はこの世界の神だからね、せっかくの機会だから今後、
 ああいった糞野郎が出ない様に少し見守ってから行くとするよ」

「妾は命の恩人が創る世界にちと興味があるのでのう。もう少しだけ残るとするのじゃ」

 二人とも言葉を遮り自分の意見を述べる。
 確かにヘリムの言っている事は正しい、同じことを繰り返させないためには
 それが一番良い方法だろう。

「僕達がこっちの世界にいる間にイチャイチャすると良いよ。
 僕が行ったらそんな事許さないからさ――ほら、行ってきなよ」

「……えっ、え!?ちょっと急すぎないか!?」

 色々と言いたい事があるのだが、ヘリムが魔法を発動したらしく、
 俺とポチの真下には魔法陣が出現し光を放ち始める――

「ははは、余り話すとさ送り難くなっちゃうからね、
 ここはあっさりと!……ありがとね、本当に」

「……ああ」

「じゃあ、楽しんできてね。僕の我儘を聞いてくれてありがとう」

「ばいばいなのじゃ~」

「待ってるからな、絶対に来いよ!」

「うん、絶対に行くよ。約束さ――」

 光が全身を包み込み天高く光が放たれ――俺とポチは異世界に飛ばされた。

・・・・

 丁度ソラとポチが飛ばされた日、向こうの世界では勇者召喚が行われていた。
 予定では三人の莫大な力を持つ勇者を呼び出す予定だったのだが、
 この世界にやってきたのは正確には五人――三人は王座の間に――
 そして、最も凶悪な存在の二人は草原へ――

 三人の勇者と二人の魔王――いやそんなやさしい存在ではない。
 魔王も大魔王すらも超える凶悪の存在が降臨したのであった。
 その存在に気が付いたものは数多いのだが、一瞬にして気配が消え――
 誰もが気のせいだったのかと安堵するのであった。

『此処がソラの世界か』

「ああ、そうだ。帰って来たぞ――」

 ソラとポチ――この規格外の二人が原因でこの世界のバランスが崩れ始めるのだが、
 それは後々の話だ。
 王国では勇者を歓迎する声が響き渡り――

「ああ、ああ!この感じは!!帰ってきた!!帰ってきた!!
 遂にこの日が来たのね!ふふふふふ、ははははははは!」

 とある魔王城で不気味な笑い声が響き渡った――。
 

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