勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

ロウォイの家

「ほら、着いたぞ」

「分かってる、早く降ろせ!」

 ロウォイの家の前に着くと俺は
 ポチに良いように弄られて若干不機嫌になっており
 強めにポチに降ろすように命令。
 ポチはニヤニヤとしながら仕方無いと言いながら
 地面に降ろしてくれた。

 一発殴ってやりたいが、
 魔力を繋いでいる以上殴るにも殴れない。
 どこを殴るかが伝わってしまい全て避けられるのが落ちだろう。

 くっそぉ、ポチめ覚えてろよ!
 何時か絶対に倍返ししてやるからな!

 それは楽しみだとでも言っているかのような
 小悪魔的な笑みを浮かべながらポチは
 ロウォイの家の扉をノックした。
 今回はいきなり開けたりはせずに
 しっかりと学習している様だ。

「はーい、今行きますよ」

 そう声が聞こえて数秒後に扉が開かれ
 何故か驚き気味のロウォイが現れた。
 一体何に驚いているのだろうか、
 それとも元からこういう顔つきだったか。

 まさかとは思うが骸骨さんの伝達がまだなんて事はないだろうな。
 あの優秀な骸骨さん達に限ってそんな事は無いと思うが、
 何だか何時もと違う感じの骸骨さんだったので少し不安がある。

「本当に来たんですね……先ほど、
 風の様に『ソラ様がやってくるぞ~』って
 声が一瞬で駆け抜けて行ったんですよ!」

「なんだそれ……」

 てっきり姿を現して面と向かって
 伝言を伝えてくれているのかと思ったが、
 予想の斜め上を行く結果に思わず呆れた声をだした。

 いや、これはきっとあの軽い感じの骸骨さんだったからに違いない!
 他の骸骨さん達はきっとしっかりと面と向かって
 伝えてくれているはずだ!

『聞けば良いだろ』

 ……ポチよ、時には知らない方が幸せな真実だってあるんだぞ。
 だから俺は骸骨さん達の事を信じて敢えて聞かないことにするよ。

『そう、か』

 ポチが何言ってんだこいつと心の中で
 思っているのが伝わってくる。

「さ、中へどうぞ」

「お邪魔します」

 中は相変わらずでこの前来た時となんの変わりようも無かった。
 前回と同じく椅子に座りお茶が出て来て、
 三人で仲良くお茶をごくごくと飲んでから話し合いの始まりだ。

「さて、今日はどういったご用件ですか?」

「んー」

 過去を観れば分かるだろと一瞬意地悪を言って
 困惑するロウォイさんの顔を拝んでみたいと言う欲求に駆られたが、
 エクスマキナという得体の知れない種族相手にそんな事をしたら
 後後が物凄く怖いので止めておくとしよう。

「実はな近々大っきな戦争が起きるらしいんだよな。
 ちなみにこの情報源は信用できるから
 ほぼ確定だと思ってくれ」

「そうですか。それは知りませんでした。
 ちなみに、どこの種族との戦争ですか?」

 流石の序列一位のエクスマキナでも
 戦争が起きる事を知っていないらしい。
 ましてはその戦争を仕掛けられようとしている事なんて事は、
 到底思っても居ないのだろう。

「序列一位のエクスマキナさん相手に序列上位陣同盟って感じ」

「あらら……それは大変ですね~」

 ロウォイは自分たちの種族が戦争を
 仕掛けられようとしているのにも関わらず
 特にこれと言って驚く素振りも見せなかった。

 これには予想外でビックリ。
 てっきりもう少し驚いて慌てる
 ロウォイさんがみれると思ったのに残念だ。

「全然驚かないんだな、逆にこっちが驚いたぞ」

「ふふ、私が此処に居る理由をお忘れですか?」

「ああー」

 そういえばこのエクスマキナさんもぼっちなんだった。
 自分たちの国じゃなくこんな所に何十年といるんだもの、
 そりゃ例え同族だろうが余り関心ないんだろうな。

「まぁ、そんな事はどうでも良いんだ」

「どうでも良いんですか」

「うん、俺が本当に伝えたかったのはこの後の事でね」

 本当はエクスマキナです!と言った時に驚いてくれれば良かったのだが、
 あまり関心が無いようなのでどうでも良くなり、
 さっさと本題の方に移す。

「上位陣が争うとなるとかなり大規模な戦いになると予想出来る。
 当然アルデラも戦いの渦に巻き込まれるだろうな。
 此処だけではないこの世界の全てが戦地の化す――」

 此処まで言えば頭の良さそうなエクスマキナなら
 俺が何を言いたいか理解できるだろうと
 一旦言葉を切ってロウォイの方を見て様子を伺ったのだが、
 話しの続きは?!と興味津々の様で唾を呑み込んでいた。

 エクスマキナと言っても意外と普通なのかもしれない。
 もう少しヒントを出してやろう

「つまり?」

「つまりだな、大賢者田中がいる国も戦地となり!」

「なり?」

 ん~まだ分からないのか!

「そうなれば当然罪人公開日は延期されるか中止になる!」

「そ、それは大変ですね!」

 やっと理解してくれたらしく興奮気味でそう言って来た。

「どうするんですか!?」

 バッ!と椅子から立ち上がり興奮を隠せないで居た。
 そんなロウォイをまぁまぁ、と落ち着かさせて椅子に座らせる。

「どうするも何も、助けるしかないだろ。
 俺のご主人様達に戦争に乗じて思う存分暴れる様にお願いしてある。
 その間に俺達がそれに乗じてこっそりと大賢者を救うって訳だ」

「なるほど、確かに大混乱は間違いないでしょうから
 それが良いですね。そんな作戦良く思いつきましたね
 ソラさんは天才ですか」

「ハッハハハ!名付けて――
 大規模な戦いに乗じて大賢者田中を救い出そうぜ作戦!!」

「「……」」

 俺がカッコよく立ち上がり決めポーズまで取って
 行った究極の作戦名を言った瞬間
 沈黙の時間が創りだされた。

「……あ、戦争の日程が分かりそうになったら
 教えて頂くことは可能ですか?」

「ああ、可能だ」

 俺の事は無視して二人で会話を始めてしまった。
 そんな二人を見て物凄く悲しくなった俺は、
 お茶を飲み干して

「……帰る!」

 伝えるべきことも伝え、もう此処に居る理由は無くなりそう言って
 涙を堪えながら出口へと向かう。
 後ろからさようならーと呑気な声が聞こえるが無視だ。

 くそう、皆して馬鹿にしやがって!
 次はだれもが聞いて驚き感動する名前付けてやるからな!

「お邪魔しました!!」

 少し怒りっぽくそういってロウォイの家を後にした。

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