勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

迫りくる戦鎚

 結構な速さで近付きながらこれは日々の訓練の成果を発揮する
 良い機会だと思いスキルは封印し今の生身の俺が何処まで行けるのか
 確認する為に最低限度戦える魔法を使うだけで戦ってみる事にした。

 使う魔法は二つ、騎乗、これはポチとの連携を取る練習になるから必要であり
 いま此処にポチが存在できているのは魔力を繋いでいる事だと思われるため
 この場で解除してしまうとポチが消えてしまう可能性がありこれは必須だ。
 もう一つは、光創、これが無ければ素手であの鎧野郎を殴らなければ行けない。
 そんなヒーローの様な戦い方は出来ないので俺はしっかりと武器を準備する。

「まぁ、そういう訳だ」

『つまり我がソラの足になれば良いのだろう?』

 足はポチに任せて攻撃や防御は全て此方がやる。
 これがポチのとの初めての連携なので失敗するかもしれないが何も恐れる必要はない。
 多少苦しいかもしれないけど死ぬことはないのだから。
 当たって砕けろ。 

『行くぞっ』

「ああ!」

 ポチの掛け声を合図に速度が加速し一瞬でダブルホワイトの前まで移動した。
 ちらりと後ろを振り向くとボロボロになった二人がポカーンと口を開けて唖然としていた。
 突然、獣に乗った餓鬼が登場してきたらそりゃそうなるわ。
 せめて俺がもう少し大きかったらもう少しマシに見えているのだろう。

 説明している暇は無いので二人の事は一時放置して
 鎧野郎の方に振り向く。
 遠くから見ていても結構な大きさの武器だったが
 間近で見ると更に巨大に感じる。
 良くもまぁそんな武器を持てる物だ。

 かなり強敵な予感がする。
 これは最初からスキル無しでやらないと不味いかもしれない
 そんな事が一瞬脳裏を過ったが駄目だとその考えを捨て去る。
 一度戦って無理だったのならばその時に使えば良いのだ。
 最初から無理だと決めつけては今まで鬼畜メニューをこなしてきた
 俺の死と血で出来た結晶が水の泡になってしまう。

『心配するな、我が全て回避してやる』

 おお、頼もしいな。

 相手と睨み合いが続き両者とも一歩も動く気配がない。
 その間に俺はいつも通り武器をイメージして魔力を流し込み具現化する。
 今回も短剣を手に持つ。
 これが一番使い慣れておりしっくりくるのだ。

 あの巨大な戦鎚を短剣だけで受ける事を考えたら思わず震えてしまうが
 武器の強度には自信があり負ける気がしない。

「……」

 武器を構え此処は先手を取るべきだろうかと悩む。

『一瞬で潜り込むか?』

 取り敢えず先手は取ってみるか。
 頼んだぞポチ、あんなでっかいのに潰されたくないから
 出来るだけ全速力でな。

『任せとけ』

「うっぁ!」

 今までポチの全速力だと思っていた速さのは比べものにならない。
 言葉通りに一瞬で鎧野郎の真前まで移動し
 思わず情けない声を上げてしまったが、しっかりと短剣を鎧に突き刺す。

「っぅう!?」

 何の抵抗も受けずに短剣が突き刺さり、立派な鎧に穴をあけた。
 流石は俺の短剣だと自賛するが、そんな暇は一瞬しかなく
 鎧野郎が怒りに任せ巨大な戦鎚を振り回して来た。
 当たればかなり酷い事になってしまいそうだが、
 その心配はなく華麗にポチが避けてくれる。

 右斜め上に飛びそのままもう一度空中を蹴り
 がら空きの背中に回り込み思いっきり切り付ける。
 ポチが何処に行こうとしているか全て伝わってくる為
 次はそこを攻撃すると言った事が明白に分かっており
 スムーズに攻撃することができる。

「があぁああああ!」

 何度も何度も戦鎚を避けられイライラが頂点に達したのだろう
 雄叫びを上げて振り回す速度を上げて来た。
 だが、ポチはそんなのお構いなしに避け、
 俺もお構いなしに攻撃を繰り返す。
 立派だった鎧がみるみる内に穴だらけのボロボロの鎧へと化していく。

 これってあまり俺の力関係ないような……
 何方かと言うと武器とポチの力だよな?

 そんな事を考えつつも攻撃を緩める事はしない。

『そうだな、じゃあ一発受けてみるか』

「ちょっ!」

 ポチが意地悪そうにそう言い
 態と戦鎚が振り下ろされる地点に入り込んだ。
 迫りくる巨大な戦鎚に潰されまいと慌てて短剣を構え
 両手を使い受け止める。

 物凄い衝撃が全身を駆け巡る。
 だが、それでも俺の武器が砕ける事は無く、
 しっかりと受け止めてくれ力一杯にはじき返す
 自分よりも大きい相手をよろめかすことが出来、
 成長を感じ喜びたいところだが、このチャンスを逃す事は無く
 すかさず首元を切り裂く。

 普通なら届かない位置だが、俺の思考が分かっているポチが
 タイミングよく飛んでくれた。
 本当に便利すぎて騎乗なしでは生きていけなくなるかもしれない。
 首元を切られたのが致命傷となり鎧野郎は激しい音を立てて倒れた。
 血などは一切出ていない為喰らっているのが心配だったが、
 問題は無かったようだ。

 それよりも、

「ポチ!俺は怒ってるぞ!!」

 短剣を消して素手の状態で軽くペシペシとポチの事を叩く。
 もし耐えられずに潰されていたらどうしてくれてたんだ!

『まぁ、耐えられなかったら鍛え方が足りなかったってことだ』

「ぐぬぬ……その通りだけど!あれ凄く怖かったぞ!」

 上を見上げれば自分よりも大きい影が迫って来る。
 死なないと分かっていても恐ろしいのだ。

『まぁ、まぁそう怒るな、ほら、撫でて良いぞ』

「言われなくても撫でる!!」

『ところで、あの二人はどうするんだ?』

 そう言えば、そうだったと、
 ダブルホワイトの方を見てみると、
 二人で肩を貸し合いプルプルしながら頑張って立ち上がっていた。

 ポチって回復魔法使える?

 流石にあんな痛々しい姿のままでいられると
 此方までも痛い様な気分になる。

『あんな奴らに使わないと行けないのか?』

 あんなんじゃ話聞くにも聞けないだろ、
 さっきの事許すから治してやってくれ

『はぁ、仕方が無い』

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