勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

頭がおかしい価値

「久しぶりじゃのう」

「んー、そうだな」

「だね~」

 寝室に入り一つしかないベッドに仲良く川の字で横になる。
 ポチはベッドには入らず床で寝ている。
 ここ最近は部屋が別々だったため三人そろって
 同じベッドに入るのは久しぶりだ。

「そういえばソラよ、何やら外でやっていたようじゃが、
 何をしていたのかのう?」

 てっきりヘリムから聞いているかと思ったのだが、
 そんな事は無かったらしくそう尋ねて来た。

「ちょっとキツメの体力作り」

「うむ、良い事じゃのう。また寝込みでもしたら大変じゃからのう」

「ああ、もう迷惑かけない様にしないとな」

「僕はソラ君の看病するの楽しかったけどなぁ
 無防備なソラ君にあんなことや……ふぐへへ」

 非常に気になる発言と神様が出す様な声とは思えない
 非常に気色が悪い笑い声が聞こえてきた。

「おい、まて、あんなことやって何をしたんだ?」

「そうじゃのう……あれは良かったのう」

「……おい、ご主人様よ」

「あんなことやこんなことや、楽しかったね」

「「ふぐへへ」」

「お前達……」

 物凄く問い詰めて涙目になるぐらい問い詰めてやりたいところだが、
 生憎、今日の俺にはそんな元気は残されていないので
 二人には後日鉄槌を下すとして今日は休もう。

「詳しい事は後日聞こうじゃあないか……おやすみ」

 その日の夜はあの二日連続で見ていた夢を見る事は無く、
 無事に平和とも言える睡眠をおくれた。

 次の日は朝から体力作りを始めた。
 昨夜同様にポチを持ち上げてのトレーニングに加え、
 新たにもう一つ自分の体を追い詰めるメニューを加えた。
 それは普段から自分自身に重力操作を掛けると言う物だ。
 ちなみに、身体強化も掛けた状態でだ。 
 ただし外に居る時に限る。家の中でやってしまうと床が抜ける可能性がある。

 基本的に外でポチが居ない時は重力操作を常時発動し自分に重力を掛ける。
 腕を上げるのも一苦労、勿論歩くのも困難だが、
 これだけ辛い事なら恐らく効き目は絶大だろう。

 日を重ねるごとに力が付いていき、歩くのも大分慣れて来た頃、
 新たなメニューを加えた。
 それはご主人様の攻撃を身体強化と重力操作を自分に掛けた状態で
 ひらすら耐えて一歩でも後退ってしまうとエキサラによる捕食が開始される。
 なんとも非人道的なメニュー。

 当然ご主人様が手加減してくれるはずも無く、
 最初は一撃を喰らっただけで数メートル吹っ飛び、
 腕がはじけたりしたが、直ぐに復活し、その後捕食される。
 目が覚めると再び再開しそれを繰り返す。

 幸いにも一度捕食されることで体の疲れが消えるので、
 何度も何度も万全の状態で挑むことが出来た。
 そんな非人道的なメニューが加わって数十日。
 ちなみにその間、あの夢を見る事は無く快適な夜を過ごせた。
 エキサラの攻撃を喰らっても五発中三回は後退らない所まで成長した。

「うおっい、びっくりした――って顔上げて!」

 トレーニングを終わらせて一人で風呂に入っていると
 突然お湯の中に骸骨さんが姿を見せた。
 だが、お湯の中で跪いている為顔面がお湯につかり、
 溺死するのではないかと心配し慌てて顔を上げさせる。
 骸骨なのだから心配は無用なのだろうが、
 一応部下なのだから大切に扱いたい。

「~~、大した事ではないのですが、一応お伝えしたい事が」

 お湯の中で喋った為前半の部分はぶくぶくとした聞き取れなかったが、
 どうやら骸骨さんはなにやら伝えたい事があるらしい。
 大した事では無いと言っているが、骸骨さん達は優秀な部下だ。
 聞いておいて損するという事はないだろう。

「何?」

「はい、妖精族の王女が御身様が人獣の王を倒した際に
 作り出した武器を売りそのお金で人獣の国を買い取り
 妖精族と人獣が共に暮らせる新たな国造りを始めました」

 骸骨さんの口からは結構凄い事が飛び出してきた。
 一番信じがたいのは俺の武器を売ったお金で国を買い取った事だ。
 国の値段とか良く分からないが、あの武器を売っただけで買えるとは到底思えない。
 それと、序列時代なのにも関わらず二つの種族が共に暮らす、
 まるでアルデンの様な事をあのちっちゃな王女様が
 やろうとしている事にも驚かされた。

「なぁ、俺の武器にそんなに価値あったのか?」

 自分が作り出した武器が評価されるのは嬉しいのだが、
 出来ればどこが評価されたのか知りたいところである。

「はい、御身様の武器は凄いですよ。
 言葉にし難いのですがあの武器で斬られた敵の言葉を借りると
 頭がおかしい、と言った感じにすごいです」

「ははは……頭がおかしいか」

 きっと骸骨さんは良い例えを知らないのだろう。
 頭がおかしいほど価値がある武器を作れていた。
 それは今までの努力が報われた様な気がして悪くは無かった。

「それと、保護した女共なのですが、
 皆口をそろえて御身様に感謝をしておりました。
 偉大なる御方に感謝をと」

 悪くは無いんだけど……
 それって骸骨さん達が言わせている様に感じるんだけど
 気の所為って事にしておこうか

「では、私はこれで失礼します」

「うん、お疲れ様」

 ロウォイとの連絡係は頼んだが、
 まさかそっちの事までやってくれてるとはな。
 優秀すぎる部下を持つとかなり楽に生活できるな。

 そんな事を思いながらゆっくりお湯につかり
 疲れを落としてから風呂場を後にした。

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