勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

予兆2

 至る所が崩れ落ちた建物、崩れてから砂嵐でも来たのであろう、
 建物の壁や中に細かい砂や石が敷き詰められている。
 荒れ果て枯れた大地、植物や生き物の姿は一切無い。
 渇き切った空気、食べ物や飲み水は一切なく生き物が暮らすには厳しい環境。

 そんな環境を物ともせずに進んでいる二人の影、
 目を疑うような真っ白の肌に独特な赤い眼。

 んん、またダブルホワイトの夢か……

 ちなみにダブルホワイトとはこの夢に出てくる二人の事を指しており、
 その由来は二人共肌が白いためダブルホワイトだ。
 我ながら良いネーミングセンスだと自賛する。

「此処のハズですが……何もいませんね」

 荒れ果てた都市を見て何も言わずに彼は周りを見渡し
 何もいないことを確認し不思議に思いつつもそう呟いた。

「まさか、別動隊の皆さんが先に来て倒しちゃった……なんて?」

「戦闘の痕跡は無い、その可能性は低いと思う」

 昨日殲滅に向かうとか言っていた様な気がするが……
 これはその夢の続きという事らしいな。
 前回と違うところと言えば武器を背負っている点か。

 ホワイトガールの方は大剣を背負い腰には短剣を身に着けていた。
 ホワイトボーイの方は両手に体には見合わない
 ゴッツイ拳鍔を身に着けていた。

「そうですよね……ん~もう少し探索――っ!?」

 突然何かを感じ取ったようで言葉を飲み込み
 警戒した様子で周りを見渡した。

「S-230番、これは……」

 背中の大剣に手を添えて何時でも取り出せるように構え、
 同じように周りを見渡し警戒する。

「この気配は、少しまずいですね。
 流石に数が多すぎます、撤退を推奨します」

「そうしたいけど、もう囲まれている撤退は無理。
 覚悟を決めて此処で戦いましょう」

「ははは……鬼ですねA-982番」

 二人は武器を構え完全に戦闘態勢へと移った。
 此方からはまだ敵の姿は確認できていない為、
 一体ダブルホワイト達が何と戦うのか全く分かっていない。

「来ます!」

 突如乾いた地面の至る所が盛り上がり
 砂埃を激しく上げて何者かが飛び出してきた。
 その中から姿を現したのは真っ黒な人影、
 あれは皮膚なのだろうか真っ黒で縮み上がり
 眼球は存在しなく真っ黒な穴が開いているだけ。

 一見ゾンビの様にも見えるが……あれはいったい何なのだろうか。

 地面から現れたゾンビ擬きの数は数十を超え、
 今もボコボコと地面から飛び出し増え続けている。

「次から次へと増えてますね……」

「なら次から次へと倒せば良い、行くよS-230番」

「はい!」

 先手必勝、ホワイトガールが大剣を敵の集団に投げつけ走り出す。
 ゾンビ擬きが急いで回避しようとするが間に合うはずも無く
 無残に真っ二つにされて行く。
 大剣に気を取られている内に敵に接近し腰に掛けてある短剣を抜き
 次々と斬りつけて行き、たまには蹴りなどを加え倒していく。

 ホワイトボーイの方はガールの様に爽快に倒していく訳ではないが、
 確実に一体一体ゴッツイ拳鍔で頭を潰していく。
 邪魔にならない様に一定の距離を取りたまに接近し
 ガールの背後の敵を一層する。

「……」

 良いコンビネーションだな、これなら余裕なんじゃないか。
 次から次へと敵は増えているが圧倒的にダブルホワイトの方が優勢だ。

「何だか弱いですねっ」

「戦闘中、舌噛むから喋らない方が良い」

 そんな会話をする余裕もあるらしく、
 二人の顔には全然疲れの色が見えない。
 ガールの方は駆け回り大剣を取り再び投げ大剣を取る
 という事を何度も繰り返していた。

 効率よく敵を倒していく、まるで戦闘マシンの様に、
 戦えば戦う程それは最適化されて良き無駄な動きが無くなっていく。
 その圧倒的な強さにゾンビ擬き達は一切手がでなく
 成すすべ無く次々とやられていく。

 そして数十分後遂に最後のゾンビ擬きに止めをさした。
 周りを見渡しもういないことを確認し武器を収める。

「確かに弱すぎる、これは一応拠点に戻って報告する」

「そうですね、何だか最近多いですねこういうの」

「嫌な予感がする」

「……はい、そうですね。何もなければ良いんですが
 一応目的は達成したのでゆっくり帰りましょうか
 あっ、来るときに良い場所があったのでちょっと寄り道していきましょ!」

 周りに沢山の死体が転がっている中
 そう呑気に話しているダブルホワイトの事を見て
 少し不安な気持ちになる。

 やっぱ慣れてるんだろうなぁこういうの……

「S-230番、それは良い事?」

「え、別に悪い事ではないと思いますけど?
 しっかり目的は達成したんですし、良いんですよ!
 さ、行きましょうA-982番」

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