勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

目覚め

「おはよー」

 見守って――いたのだが、一度瞬きをしてしまい
 目を開いた次の瞬間俺の目の前には見飽た面のヘリムが
 ニヘニヘと笑っている光景だった。
 どうやら夢から覚めた様だ。

 戻ってこれて一安心したが、
 同時にあの二人の続きが気になり少し名残惜しい気持ちもある。
 だが、取り敢えず今は無事に憎めない顔を拝めてる事に感謝しつつ

「おはよ」

 しっかりと挨拶を返す。
 挨拶を返すこれとても大事。
 俺は先程の夢の事をしっかりと覚えている為、
 やはり先ほどの夢は只の夢とは違いヘリム達が入り込んできた夢と
 同じ類の夢だと判断できる。

「よかったよ、目覚めてくれて。
 僕すっごく心配してたんだよ?」

「え、そんなに?」

 少し眠っていただけの様な気がするのが
 ヘリムがそこまで心配しているとなると
 一体どれほどの時間眠っていたのかが気になる。

「そんなに眠ってた?」

「いや、二日間ぐらい寝込んでただけだよ」

「そ、そう……」

 けろっとした表情で二日間も寝ていた事実を口にしたが、
 ヘリムにとって二日は大した事無いらしく、
 心配していた理由は寝込み過ぎていたことではなく
 別の何かがあるらしい。

 ……二日も寝込むって結構心配されても良い気がするけどな

「僕が心配だったのはソラ君が苦しそうにしてたからだよ」

「苦しそうに……」

 確かに暇すぎて苦しかった。
 しかし、本体にまで影響するとは余程苦しかったのだろう。

「ちょっと変な夢見てたからかな」

「夢?どんな夢だったんだい!?」

 ヘリムが興味津々に目を輝かせてぐいぐいと迫って来た。
 一応病み上がりなのだからもう少し気を使って欲しいものだ。
 まぁ、どの道ヘリムには相談しようとしていた事だ。丁度良い。

「ヘリムとエリルスが俺の夢の中に入って来た時みたいな感じの夢だった。
 かなり異質だったけど、全く見知らぬ世界で見知らぬ生命――」

 ヘリムなら何か分かるかもしれないと思い、
 俺は見た夢の内容を出来るだけ詳しく話した。
 するとヘリムの表情が険しくなり何やら悩みだした。
 これは何か手掛かりがつかめそうだ。

「誰かがソラ君に何かを求めている……少し警戒した方が良さそうだね」

 ヘリムから帰ってきたのは何とも言えない曖昧な答えだった。

「誰かって誰だ……心当たり無いんだが」

「僕にも分からない、だけど僕やエリルスの様に
 誰かが何かを伝えようとしているのは確か。
 でも、内容からしてそこまで害は無いと思うから
 暫く放置しておいても問題は無いと思うよ。
 あ、でもね何か異変があったら直ぐに言うんだよ、僕頑張るから」

「うん……分かった」

 俺としてはゆっくり休みたいときに限って
 ああいった事が起きるので害と言えば害なのだが……
 まぁ、精神的なだけで肉体的ではないから
 ヘリムの言う通り暫くは放置しておいても良いのだろう。

「ん~~ぅ」

 話し終えた途端ヘリムが天井に向かって大きく伸び始めた。
 その伸び様からして余程疲れが溜まっているのだろう。

「もしかしてずっと看病してくれてたの?」

「いや、僕はまだ半日ぐらいだよ。
 それまでご主人様がずっと看病してくれてたんだよ。
 あ、それとポチもね」

 寝込んでいる間ずっと誰かが看病してくれ、
 改めて仲間に恵まれているなと実感した瞬間だった。

「そうなのか、通りで姿が見えないわけだ。
 ありがとなヘリム」

「えへへ~」

 お礼を言っただけで嬉しそうに体をくねくねさせるヘリム。
 そんな彼女を見て俺は何だか礼を言っただけなのに恥ずかしくなってしまった。

「それじゃ、僕も少し休むとするよ。
 ソラ君を抱き枕にしたい気分だけど折角ご主人様が
 部屋取ってくれたんだから使わないとね~ばいばい」

 先程から全く気にしていなかったがどうやら此処は宿らしい。
 それとは別に俺はヘリムの発言に少し驚いた。
 前からエキサラの事は特別扱いしてくれていたが、
 遂に此処まで気を使えるようになったなんて……何だか嬉しい

「おう、おやすみ」

 ヘリムが部屋から出て行くのを見送り終え、
 寝るにしても二日間も寝ていた為、
 眠気が全くと言っていいほど残っておらず、
 物凄く気持ちが良い目覚めだ。

「さてと――ん?」

 取り敢えずベッドから出て訛った体を伸ばそうと思ったのだが、
 何やらベッドの中にある右手に違和感があるのに気が付き、
 恐る恐るめくってみると――

「――っ!びっくりした……こんなとこに居たのか、ポチ」

 そこには右手をガッシリと掴んでベッドに潜り込んでいた
 擬人化状態(幼女)のポチが上目遣いで此方を見て来ていた。

「やっと目が覚めたのか。遅いぞ」

「ごめんごめんってまさかポチはずっとそうやって?」

 まさかとは思うがこうやってずっとベッドの中にいる訳ないよね。
 するとポチは何を言っていると言いたげな顔をして

「当たり前だろ、何のために部屋を一緒にしてもらったと思っている。
 折角の大切な獲物だ、そう簡単に話す訳ないだろう」

「ポチぃ!!」

 前までは若干ツンツンしていたポチが遂に
 俺の事を大切と言ってくれた事に感激し思わず声を上げてしまった。
 獲物……その通りだけど、きっと照れ隠しなのだろう。
 そう思いたい。

「ああ、それと、あのエクスなんたらには
 事情を説明してあるから安心しろ」

「ポチ!!抱き着いて良い?」

 すっかり忘れていたがそういえばそんな話もあったのだ。
 そらすらポチが解決してくれており
 思わずそんな事を口走ってしまった。

「……勝手にしろ」

 てっきり断られるかと思ったが、
 ポチは若干頬を赤くして俯きながっらそう呟いた。

「ごめん……そ、そういえばさ今暇だけど喰うか?」

 余りにも予想外すぎるポチの可愛い反応を見て
 完全にやられてしまい、先の愚かな発言に反省しつつ謝り、
 慌てて話題を変えた。

「何だ、抱いてくれないのか……まぁ、良い。
 ああ、それなら問題ないぞ、
 ソラが眠っている間にこっそり頂いた」

「え……」

 前言撤回。可愛いなんてもんじゃない
 寝込みを襲うとんだ鬼畜だ。
 まさかそれが原因で二日も眠っていたなんて事はないよな。

「仕方が無かろう、美味そうな肉が目の前にあるんだぞ
 ソラなら少しぐらい喰らっても問題ないだろ」

「まぁ、そうだけどさ……別に良いけど片付けもしてくれたようだし」

 ベッドを見渡しても血の染みなど一切ないため、
 しっかりとポチが掃除している事がわかる。
 恐らく魔法とかつかったのだろう。

「よし、じゃあそろそろ行くかポチ」

 このままベッドに丸一日いてもやることがないので
 俺はエクスなんたらさんの所に行こうとポチに提案した。

「あぁ、そうだな――っと」

 ポチがそういうと同時に皮膚がボコボコとあふれ出し、
 幼女から大人の体系へと変化した。
 服がなどが脱げ色々と見えてしまっているが
 紳士として急いで目を逸らして何も見てませんアピールをする。

「買った服は~あったあった」

「着替え終わったら行くぞ、二日ぶりの外だ。
 なんだかワクワクするな」

 ポチが着替え終わるのを待ち、それから俺達は宿を後にした。
 ヘリム達に一声かけようと思ったが、
 二人共看病で疲れているのでそっとしておくことにした。

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