勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

五年と同級生達

「今日で五年だね……早いもんだよ」

 ネルガ王国の商店街で朝ご飯代わりにゴブリンの串焼きを買い
 歩きながら食べ、飲み込んでからそう呟いたのは
 ソラと同級生で元勇者の佐山凛だ。
 名前通りに凛とした顔立ちでイケメンの中のイケメンだ。
 しかし、性別は女。意図しているわけではないが、
 彼女の服装は何時も男物の様に見える。

 どんな服でも何がどうなっているのかは分からないが、
 彼女が着ると可愛いではなくかっこいい王子様になってしまう。
 現に今もTシャツに少し小さめな蜥蜴の革ジャケットを羽織り、
 真っ黒なズボンの裾を捲り上げて少し生足を露出させ、
 腰の辺りには短剣が鞘と共に掛かっており、
 道行く女たちの目を釘付けにしていた。

「そうだな、早いもんだ。 
 あいつが生きてたら今年で二十歳だっけ?」

 既に食べ終えたゴブリンの串焼きの串で
 歯に挟まった肉を掻きだしながらそう言ったのは
 かつてロリコンと呼ばれ――今も変わらずロリコンなのだが、
 その少年の名は新羅かおる。

 五年前と同じくロリコンと言う点を抜けば
 顔も良くて性格も良いイケメンなのだが、
 ロリコンなのだ、五年たってもロリコンは健全なのだ。
 残念系イケメンである。

「あぁ、今年で二十歳だ……
 一緒に酒飲んで騒ぎまくりたかったよソラ……
 先に死にやがって許さねぇからな」

 女にしては相変わらず乱暴な口調だが、
 同級生の中で一番ソラの事を知っているのは彼女、石田奈央だ。
 そんな彼女は叶わなかった夢を口にして
 五年前救えなかった事を後悔していた。

「だな、俺が死んだらがっつり説教してやる!
 昔から鍛え方が甘いんだよあいつは!」

「説教してやる!」

 頬筋をぴくぴく動かしながら奈央と一緒に
 この場にはいないソラに向かってそう宣言したのは
 ムキムキさん――前谷トモだ。
 親友の二人から説教をされるという事を知ったら
 恐らく向こうの世界に居るソラは震えあがるだろう。

「まぁ、まぁ、お二人共落ち着いて。
 そういう事はソラの墓の前で言いましょうよ」

 このメンバーの中で一番の常識人であり
 三人もいる女の中で一番女をやっている女神、高梨唯。
 五年前も美しく周囲の目を釘付けにしていたが、
 今では大人の美しさという物が現れ、
 更に周囲の目を釘付けにしていた。

「それも、そうだな」

 五人はこれからソラの墓、
 つまりヘルノリア王国付近の草原を抜けた先にある森に行くのだ。
 正確にも森の中にある迷宮へと向かうのだ。
 ネルガ王国からヘルノリア王国までは三日程掛かるのだが、
 今の五人からしてみればその距離は散歩の様な距離であり、
 一時間も経たずに行くことが可能だ。

 ネルガ王国やヘルノリア王国付近のモンスターでは
 五人に傷一つ付ける事は出来ないことを知っている結達は
 動きやすさを重視してほぼ私服の様な恰好で墓に向かう。
 万が一の事を考え一応腰や背中に武器を用意してあるが
 使う事は100パーセントない。

 五人はソラの話や世間話をしながら
 常人からしてみれば化け物の様な速度で走り、
 あっと言う間にヘルノリア王国に付き休憩は挟まずに
 森の中へと足を踏み入れた。

「相変わらずじめじめとしていて嫌な所ですね」

「そうかな、結構すきだよ?」

「凛は変わってるよな、まぁ俺も嫌いじゃないけど」

「かおるはヤミって子が此処を選んだから嫌いじゃないだけなんだろう?」

「なっ、そ、そんなこと無いぞ!」

 凛は兎も角、かおるは何故このじめじめとした
 森の中が嫌いではないかと言うとそれはご存知の通り、
 此処に墓を建てると言ったのが小さな小さなヤミだからである。
 ヤミ以外の誰かが此処と指定したのならば、
 この男は確実にこの森の事を嫌っていただろう。

 本当に困ったロリコンだ。

 そんなロリコンと共に結達は
 森の中心にある大きな木に取り付けられた扉の前で止まる。
 明らかに後から取り付けましたと言う感じの扉だ。
 何を隠そうこの扉こそが鬼畜迷宮の入り口なのだ。

 そうとも知らずに入って命を落とす冒険者達も年間で数百いるそうだ。
 冒険者ギルドでは危険だと判断し近付かない様にと張り紙で警告をしているのだが、
 冒険者の中には自分の力を過信し過ぎてる者が多いのが現状であり、
 力試しにとほいほい迷宮に入って帰ってこなくなるのだ。

「さて、行きましょうか」

 そんな鬼畜迷宮に何の躊躇いも無く足を踏み入れる五人。
 それもそのはずだ、最低墓参りには一年に一回来ているのだから。
 足を踏み入れ薄暗い迷宮の中を数歩進んだところで

『階層を繋げといたからぁ、一気に最下層までおいでぇ』

 ノイからの声が聞こえて来た。
 初めて来たときは皆驚いていたが、
 五回目となれば慣れて行くものだ。

 階層を繋げたとはいえ一層目を突破する必要があるのだが、
 五人にとって一層目のモンスターは敵ではないので
 まるで流れる様にモンスターをさくさく倒して一層を突破し、
 階段を下り一気に最下層まで辿り着いた。

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コメント

  • みるあぁ

    精霊王のノイって、キマイラより格上のヒュドラやメデューサを召喚できるんだから実質最強なんじゃ?

    0
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