勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

五年と精霊王

「はぁ、あいつらが来る前にぃお墓参りしておかないとぉ」

 150cm程の男にしては小柄の身長には変わりは無いが、
 五年前の様な体の半分程伸びきっていた髪の毛は短くなり、
 顔だけでは、ボブカットで綺麗なエメラルド色の瞳、
 物凄く可愛い少女に見えるが、性格がひねくれて居る男だ。

 そんな五年前と髪型以外大して変わっていない彼は
 ソラが死んだ翌日に新たに建った迷宮の最下層でそう呟いた。

 ヘルノリア王国の付近の草原を抜けた所にある
 森の中にその迷宮は精霊族の王ノイによって建てられた。
 この森の中に迷宮を建てた理由がヤミが関係している。
 ソラとの出会いの場がこの森であり、ヤミはそのことを覚えており、
 墓場を作るならこの思い出の森にしたい。
 との事で此処にソラのお墓が建てられたのだ。

 ちなみに迷宮の最下層に墓場があるのは、
 ノイの心遣いで誰にもソラの墓が荒らされない様に
 今までで一番難易度の高い迷宮を立て安全な最下層に墓場を移動させたのだ。

 実際に、この五年間迷宮が攻略されたことは無い。
 迷宮が現れた際にも攻略軍と呼ばれる軍隊がやってきたが、
 その全軍の力を持ってしても入り口から一層降りるだけで精一杯だった。
 現在の最高記録は三層で最階層までは残り百四十七層ある。

 一層目からケンタウロス、ミノタウロス、グリフォンなど
 様々な強力なモンスターが出現して、
 やっと切り抜け二層目に着いたかと思えば二層目にはケルベロスの大群、
 三層目にはモンスター数は少ないが即死系の罠が無数にあり、
 四層目には足を踏み入れた瞬間に体力が半分ほど失う罠があり、
 その先に待ち受けているのはオークの上位種ハイオーク。

 それもノイのスキルによって永久的に回復するハイオークだ。
 倒すには一撃で体力を消し去るしかない。
 五層目には足を踏み入れた瞬間に催眠スキルが発動して
 味方が敵に見え、何方かが倒されるまでは絶対に解けない仕組みだ。
 六層目には五層で倒した味方の死体が転送されゾンビとなって復活し、
 能力が十倍まで強化されて襲い掛かって来る。

 七層目にはノイが創りだしたケルベロスゾンビが待ち受けている。
 ゾンビと言うだけあって中々死なずに
 眷属として普通のケルベロスを召喚すると言ったぶっ飛んだモンスターだ。
 ちなみに二十五回程止めを刺さないと絶対に死なない。
 そしてケルベロスゾンビを倒し油断して次の層へ進んでいる所、
 横から即死の毒針が飛んで来る罠が仕掛けてある。

 八層目は広々とした空間が広がっており、
 湧き水や果物がなる木や草原などがあり、
 一見安全な層かと思うが実は今までで一番凶悪な層となっており、
 この層に三分間居座ると問答無用で即死するのだ。

 九層目からはモンスターの強さが一気にあがり、
 メデューサやヒュドラが待ち構えている。
 しかも同時にニ体を相手にしなくてはいけないため
 此処を突破するのはほぼ不可能と言っても過言ではない。
 メデューサの石化に加え、首を切っても復活してしまうヒュドラだ。

 九層を突破できたとしても十層目が地獄となっており、
 今まで出て来たモンスター達が同時に出てくると言う
 かなり鬼畜仕様になっている。
 こんな感じでどんどん鬼畜さが上がっていく迷宮であり、
 当然最階層に行ける者など存在しないのだ。

 そんな迷宮の最下層は他の層とは異なっており、
 小さな丘があり緑豊かで花もあれば虫も飛び小川もあり、
 上を見上げると青空や太陽までも見える。
 ノイの力があれば迷宮が外の世界と変わらない造りも可能なのだ。

 小さな丘の上には真っ黒な磨かれぴかぴかの岩が突き刺さっており、
 その周囲には花束や食べ物飲み物やソラの短剣が置いてある。
 そんなお墓の前でノイが手を合わせ目を瞑っていた。

「ソラくん、早く帰って来てよぉ……もぅ五年だよぉ?
 この迷宮を維持するのってぇ結構大変なんだよぉ、
 他の皆もバラバラになったきり滅多に帰ってこないしぃ……
 すっごく暇なんだよねぇ」

 他の皆と言うのはヤミ達の事を指しており、
 滅多に帰ってこないと言うのは決して仲が悪いとかではなく、
 皆それぞれの道を歩んでいる為、
 再会できるのがソラの命日でありその日しか全員揃わないのだ。

「毎年言ってるけどさぁ、本当にソラくんが生きていて良かったよぉ
 初めて出来た仲間が早速死んだりしちゃったらぁ、
 ボクぅ耐えきれなくて暴れちゃってたかもしれないからねぇ――っとぉ」

 ノイがお墓に向かって話しかけていると、
 迷宮に何者かが入り込んだ気配がしてノイは目を開けて
 墓に向かって

「お仲間がきたみたいだねぇ」

 と言って上を向いて迷宮に入って来た者たちに声を掛ける
 迷宮の主であるノイは誰が入って来たのかは即座に分かるので、
 何者かと言うは当然分かっていての行動だ。

『階層を繋げといたからぁ、一気に最下層までおいでぇ』

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