勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

心の闇

「来ていたのですか!?今すぐ案内します」

 暫く気絶している人獣達の通路を進んでいると、
 骸骨さんAが姿を現し慌てた様子で案内を始めた。

「エルフ達はどんな感じなんだ?」

「はい、取り敢えず傷や損傷した部位は完治しましたが、
 まだ心までは完治していない状況です」

 四肢を切り取られていると聞いた為
 治療にはもっと時間がかかると思っていたのだが
 どうやら俺が戦っている間に完治してしまった様だ。
 流石に心の闇までは治せていないようだが、
 それでも期待以上の働きを見せてくれた骸骨さんたちには何か褒美をあげたい。

「随分と早い治療だな、良くやった。
今度お前達には褒美をやらないとな」

「はっ、有難きお言葉!」

 骸骨の後に続いて足を進めること数分、俺達は広間へと案内されていた。
 そこには、何十人ものエルフや他種族の女達が
 見窄らしい布切れを着ていたり全裸だったりした。
 体に傷などは一切見当たらずに再び骸骨さん達の仕事の質の良さに驚かされる。

「なるほどね」

 俺がそう呟きとこちらの存在に気がついた無数の骸骨さん達が一斉にこちらを向き跪いた。
 作業を途中で中断してしまった為、慌てて言葉を発する。

「うん、俺の事は気にしないで治療を続けてやってくれ」

 この現状を見て俺は何故未だに心が完治していない理由を悟った。
 女達全員の目が闇に覆われ光を映していないのだ。
 完全に心が闇に堕ちてしまっている為なのか、
 意識はあるのだが心が何処かへ行ってしまっているそんな感じだ。

「えっと……」

 俺は早速今回の目的であるロケットペンダントに
 写っている少女の姿を探すべく周囲を見渡した。
 この場には幼い子たちも何人もいる為少々見つけるのが難しい。

「あれか!」

 ペンダントに写っている彼女とは大分違い、
 やせ細ってしまっているがはっきりと本物だと見分けることが出来た。
 雰囲気と言えば良いのだろうか、
 彼女からはこのペンダントを持っていたあの男の同じものを感じる。

「……」

 やっと見つけることが出来たのだが、今はまだ素直には喜べない状況だ。
 彼女の前に立ってみたは良いものの、此方に一切の反応を示さない。
 顔を覗き込んでみるが目線は動かずに只数秒に一回程瞬きをするだけ。

「なぁ、心ってどれくらいで完治するんだ?」

 何の知識も持たない俺はどうすれば良いのか分からず、
 近くに居た骸骨さんにそう尋ねた。

「はっ、只今我々が魔法を掛けて治療をしている途中ですが、
 早くてもあと数週間はかかると思います」

「数週間か……」

「長いのじゃ」

 エキサラは長いと口にしたが、俺はそうは思わなかった。
 彼女たちが受けて来た苦しみはそう簡単に想像できるものではない。
 どれ程苦しくどんな思いをしていたのかなんて分からない。
 そんな体験をしているのだ、そう簡単には治る訳が無い。
 それが早ければ数週間で完治する。それはとても早いと言えるだろう。

 ……仮に治ったとしても果たしてそれは幸せなのだろうか。
 彼女たちを見て俺は薄々とそんな不安を抱き始めた。

「ちなみに、彼女達からは此処で起こった記憶は消してあります。
 それと新品の状態に戻しておきました」

 そんな俺の不安は骸骨さんの一言によって
 驚くほどきれいさっぱりに消えて行った。
 これほど気が利いて優秀な部下は居るのだろうか、
 世界中を探しても此処にしかいない、そんな気がする。

「流石だ、本当に感謝する……所で新品とは一体?」

「ソラ君~女の新品って言ったらそりゃ膜付きの事でしょ?」

「はっ、その通りでございます」

「えぇ……」

 確かに新品と言えるのだろうが、
 何だか物みたいであまり聞こえは良くない。
 それにしてもまさか完治とはそこまでの事を指していたとは……流石だ。

「兎に角、それなら心に光が戻った時も安心だな。
 問題はそれまでどこで匿うかなんだが……」

「妖精族に頼むとかはどうじゃ?」

「おぉ、ご主人様!それ良いね」

 面倒事では無いが、少し厄介な事は全部イシア達に任せてしまおう。
 それに妖精族の王の事はピンチから二度も救っているんだ、
 これ位の我が儘を言っても文句は言われないだろう。
 言わせない。

「よし、そうと決まれば、早速戻るぞ……っと、その前に」

 俺はロケットペンダントを彼女の首にそっと付けた。

「しっかり届けたからな」

 そういって俺達は来た道を引き返し、イシア達の下へ向かった。

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コメント

  • 猫ネギ

    あーーーーーーーーーーーーーー

    3
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