勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

闇に消し去ろう。

「ただいま」

「お帰りなのじゃ、意外と早く終わったようじゃのう」

 扉を開けると暇そうに待っていてくれたエキサラとポチの姿が目に入り
 挨拶を交わすとポチが透かさず俺の近くまでのそのそとやって来て
 撫でろと言わんばかりに首の下を見せて来た。

「よしよし」

 モフモフと撫でてあげると気持ちよさそうに
 ポチの眼が細くなっていった。

「それにしても随分と派手にやったようじゃのう」

「ん、ああ」

 一瞬何故エキサラが室内で繰り広げられていた事を知っているのかと
 疑問に思ったが扉を開けっ放しにしている為、
 チラチラと無残な死体が見えてしまっておりエキサラの反応は当然だ。

「まぁ、当然の結末だろうな」

 あまり見ていて良いものではないので
 一度ポチから手を放し扉をゆっくりと閉じて再度ポチを撫でる。

「力は完全に戻った感じかのう」

「んーそうだな……何か嬉しいんだけどあまり喜べない」

 一通りのスキルは使えたのでこれは完全に力が戻ったと
 言っても問題はないだろう。これでこれから先は楽になる。
 しかし、嬉しい気持ち半分、包帯野郎などの助言や
 今までの自分の努力が水の泡になってしまったようで悲しい気持ちが半分。

「どうしてだい?」

「こんな簡単に力が戻って、今まで俺の努力は何だったんだろうなって」

「ソラ君の努力は無駄じゃないよ?
 確かに今のソラ君と前のソラ君では比べ物にならない程差があるけど、
 力を取り戻せたのは此処までソラ君が頑張っていたからじゃないのかい?」

 ヘリムが俺の横まで来て確りと足を折り
 目線を同じ高さにして真剣にそう言ってくれた。

「ソラ君が努力していなかったらきっと此処まで来れなかったよ。
 そのポチだってソラ君が頑張ったから今こうして一緒にいるんだ。
 ソラ君が頑張ったから僕やご主人様やポチは此処に居る。
 全部ソラ君の努力があったからこその結果だよ。
 決して無駄なんかじゃない、ソラ君の努力は確り実っている」

「……ありがと」

 俺は思わず目線を合わせてくれているヘリムから
 目を背けてしまった。
 普段からボケボケしている性格のヘリムに
 物凄く真剣にこういう事を言われてしまうと不覚にも照れてしまい、
 物凄く感動してしまうのだ。

 色々な感情を表に出さない様に押し殺して
 慰めてくれたヘリムにお礼を言う。
 ヘリムのお陰で胸の突っかかりがとれた気がする。

「んじゃ、ソラの努力は無駄じゃないのじゃぞ
 それにこれからも努力していかないと駄目なのじゃ」

『もっと成長してもらわないと我も満足に喰えないだろ』

 エキサラの言葉の後にポチの言葉に思わず
 クスリと笑ったがエキサラの言う通りだ。

「ああ、そうだな。もっと努力しないと駄目だ。
 俺はもっと強くなって誰も悲しませない様になるんだ」

 そんな誓いを再び声に出した俺は、
 そういえばイシア達は何処に居るのだろうかと思い
 周りを見渡してみたが姿が見えなく疑問を抱いた。

「イシア達は?」

「此処だと万が一戦闘に巻き込まれたりしたら
 大変とか言って別の部屋に行ったのじゃ」

「なるほどね」

 確かに王女様を戦闘に巻き込んで殺してしまったら大変だ。
 流石は王直属なんたらのイシアだ。

「治療はまだ終わってないだろうから、 
 先に骸骨さんの所に行きたいんだけどそれでも良いかな?」

「うむ」「いいよ~」

 イシアを信頼していると言う訳ではないが
 この場を後にしても必ず待っていると言う自信は自然と沸いてくる。
 あの王女も何か俺に言いたい事があった様だし。
 それに、大本命の王は倒したことだしその次の本命である
 あの娘の下に早く行きたいと言うのが本音であり、
 正直に言って王女の方はもうどうでも良くなっていた。

「ポチ、骸骨さん達の居場所わかる?」

『問題ない、気配は感じている』

「それじゃ、お願いね」

『ああ』

 ポチが姿勢を低くして乗りやすい態勢を取り
 俺は遠慮なくモフモフに乗り移動を開始する。
 良く犬などが探し物をするときに鼻をくんくんと地面を嗅ぐような仕草はせずに
 ポチはいつも通りに堂々と歩いているだけだ。

 気配を追っているわけだからそれもそのはずなんだが、
 少しポチが鼻をくんくんとさせている姿を見てみたいものだと
 思ったが今はそんな場合では無いので心の奥底にしまい込んでおく。

 暫く歩き俺達は見るからに怪しげな裏路地に来ていた。
 そしてポチの足が止まり目線の先にあるのは
 建物の壁に不自然に裏口の様に取り付けられた
 ボロボロの木製の扉、そして二人の兵がぐったりと倒れている

『この中だ』

 建物の中へ足を踏み入れると
 強烈な臭いが俺達を歓迎してくれた。

「……最悪な臭いだ」

 下へと続く階段を下りるに連れて
 その臭いは強烈になっていく。

「一部の輩はこういった臭いがすきと聞くのじゃが
 妾は苦手じゃのう、ソラぐらいの男としての匂いなら大歓迎なのじゃが」

「僕もソラ君なら大歓迎だよ」

「……もう少し緊張感もとうよ」

 一応此処も敵地な訳だがこうまで呑気な会話をしていると
 此方まで油断しそうになってしまう。
 と言ってもこの二人とポチが居るなら安心できるが。

 強烈な臭いに嫌気を差しながら階段を下り終え、
 そこに広がっていたのは無数の下半身を露出している人獣の男達の姿、
 全員気を失っているが中にはまだ先程まで使用していたと思われるものもあった。
 他には汚れた台や布、ベッドや椅子様々なものがあったがどれを見ても
 良い印象は伝わってこない。

「反吐が出るな」

 無力化されているがこの光景を見てしまっては
 こいつらを生かしていて良いのだろうかと疑問を抱く。

「殺しちゃう?」

「此処から女共が消えればきっと騒ぎになるのう、
 ならば事故と見せかけてこやつらごと此処を潰せば解決するのじゃ」

「あー、それ良いね。賛成」

「僕も賛成かな~」

『中々酷い事するのだな』

 確かに酷い事かも知れないがエキサラの言っている事は正しい。
 この憎き人獣達が目を覚ましエルフ達が消えて居たら間違いなく騒ぎになるだろう。
 ならばいっそ建物ごと破壊してしまって全てを闇に消し去ってしまえばいいのだ。
 そもそも王を暗殺している時点で騒ぎになる事は間違いないのだが、
 そんな事を気にしたら負けだ。

「勇者になれなかった俺は異世界で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く