勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

ふぅははははは

 手に力を入れるとバキッと音を立てて机の脚が
 握り折れ、突然支えがなくなりバランスが取れなくなり
 そのまま床に崩れ落ちテーブルの上に置いてあったコップなどは
 今まさに床に落ち割れようとしている。

 普通なら数秒も掛からないでコップは床に落ち割れるだろうが、
 今目の前では不思議な出来事が起きており、
 落ちる予定だった物達が宙をプカプカと浮き、
 ゆっくりとまるで宙を舞う羽毛の様に地面に着地した。

「……?」

 テーブルの脚を折れたのも謎だったが、
 それ以上に目の前で起きた現象に疑問を抱いた。

 コップが浮いてた……それにこの握力……
 ロウォイの力は本当だった様だな。
 それにしても俺コップなんて浮かせる事出来たんだな
 無意識で重力操作を使っていたのか?

「ふぅはははは」

 自分の力が戻ったことを確信すると
 こみ上げてくる笑いを堪えきれずに
 大笑いしていると、

「至高なる御身様、発言の許可を」

「うわっ、びっくりした……良いよ、どうした?」

 驚き半分、聞かれていた恥ずかしさ半分で顔真っ赤。
 すっかり骸骨達の事を忘れていて急に声を掛けられて
 心臓が二回ほど破裂しそうになった。

「はっ、ノミ二匹を殺しましたので
 その報告と先程の失態の謝罪をしたいのです」

「の、ノミ二匹……?」

 当然出てきた身近な微生物の名前に困惑する。
 この世界にもノミはいるのだと仮定しても、
 何故そのノミを殺した事を報告するのだろうか、
 しかもたったの二匹だけだ。

「はっ!すいません、偉大なる御身様にとっては
 あいつらなどノミ以下の存在でした!
 どうかこの愚か者に自害を命じてください」

「え、自害?!そんな事しなくて良いって!!
 まぁ、そのノミを殺してくれて感謝する」

 ノミ如きで何故自害とまで大事になるのか、
 俺は慌てて止めつつもやや納得していないが
 一応ノミの件についてお礼をした。

「ご慈悲感謝いたします……」

「ははは、で、謝罪の方はなんの事?」

 敬れすぎて調子が狂い思わず乾いた笑いをする。
 これでノミの件は一応終わったので
 残る謝罪の件とは一体何の事なのか聞いてみた。

「先程、御身――」

「あ、ちょっとさ、御身とか恥ずかしいから
 せめてソラって呼んでくれないかな?」

 本当に調子が狂うからやめて欲しい。

「はっ、ソラ様がダニに蹴られた際に何もできなかった事と
 先ほど、ソラ様を最優先に守るべきなのですが、
 我々はコップなどを割らない様に優先的に支えてしまった事です。
 どうか愚かな我々に罰をお与えください」

「あ、ノミとかダニってそういう事」

「何か言いましたでしょうか?」

 ノミの謎が解けました。
 どうやらノミとは俺の顔面を蹴ったあの二人組の事らしく、
 骸骨達は折角ポチが逃した二人を遠慮なくぶち殺したと。
 ……安らかに眠ってください。

 それと、さっきのコップの件は俺の重力操作など一切関係なかったらしく、
 骸骨達が咄嗟に守ってくれたらしい。
 さっきまで重力操作の力だと思い込んでいた
 自分を殴り飛ばしたい。

「いや、何でもない。
 それと、罰は与えるつもりはないからな
 失敗は誰にだってあるのだからその失敗を次に活かせ。
 コップが割れない様に守ってくれてありがとな」

 此処で戦力を失う訳には行かないし、
 それ如きで罰を与えるつもりもない。
 寧ろコップを割らなくて助かった。
 と言っても彼らが失敗したと言っているのだから
 何かしらは言わないと行けないので
 部下のフォローが出来る上司の様な事を口にしといた。

「有難きお言葉、我々は一生ソラ様に付いていきます」

「おう、よろしくな」

 骸骨達の声が聞こえなるのを確認すると同時に、
 ポチが寝室から戻ってきた。

「ん、おかえり、ありがとね」

「ああ――ってどうしたそのテーブル」

「色々あってね、ははは」

 自分の力だと勘違いしてはしゃいでたなんて
 絶対に言えないしそもそも言いたくない。

「なんだ色々って……ところで力は戻ったのか?」

「んー、どうなんだろうね、ちょっと試してみるか」

 先ほどテーブルの脚を握り折ったのはだけでは
 力が戻ったとは確信出来ない。
 あの大賢者田中の家なのだから
 年を重ね脚が脆くなっていた可能性だってあるだろう。

 この場で重力操作を使ったら凄い事になってしまう。
 身体強化も此処では十分に発揮できないから微妙。
 俺が覚えていたスキルや魔法の中でこの場で使うとしたら
 アレしかないだろう……物凄く久々だがやってみるか

「さぁ、頼むぞ……魔眼フルヴュー・アイズ!!」

 クワァ!と目を見開き、
 何してんだこいつと言いたげそうな目で此方を見ている
 ポチの事を見つめた。

「何してるんだソラ……」

「……おぉ、来た来た!」

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フェンリル(擬人化)

Lv???

2,328,000,000/2,328,000,000

スキル

???
???
???
???
……

神々にすら恐れられた事のある存在。
気に喰わないものを片っ端から喰らい、
フェンリルが通った後には必ず無残な死体しか残らず、
姿を見て生還した者は数少ない。
ソラと出会い上には上が居るという事を知り全てが変わった。
ポチと言う名前を物凄く気に入っており、ソラには物凄く感謝している。
本当はもっと甘えたいが性格からして素直になれないでいる。
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 ステータスを確りと確認することが出来た。
 分かっては居たがあり得ないほど強い。
 ??????だらけだが、流石に世界が違うのだから
 それは仕方が無いのだろうと割り切る。

「ポチ、もっと甘えても良いんだぞ?」

「はっ!?ソラよ、お、お前何を言っているんだ?」

 ステータスから得た情報で少しポチをからかってみると、
 効果は抜群だったようで普段ではあまり見られない
 慌てているポチを見ることが出来た。

「わ、我が甘えたいだと?ま、全く何を言っている……」

――久しぶりですね、しぶとい方です

 おぉ、やっぱりお前と会話できるか

――はい、魔眼ですから。
それにしても違う世界に呼び出されるとは流石に予想外でした。

 まぁ、俺もこうなる事は予想出来なかったからな。
 ビックリだ、兎に角、この世界でもよろしくな

――はい、この世界の知識はありませんが、よろしくお願いします

「ほ、本当はソラの方が我に甘えたいのだろう?」

 俺が魔眼と話している間も何やらポチがぐちぐちと言っていた。
 ちょっと効きすぎたかもしれない。

「ほれ、飛び込んできて良いぞ?」

「ロウォイの力は本当だったな。
 色々と試したいところだが、ヘリム達が待ってるし戻るとするか」

「え、あぁ、そうだな……」

 そんなに飛び込んできて欲しかったのだろうか、
 あからさまにがっかりしている。

「一応、明日の帰りでももう一度よって見舞いしないとな」

「……っ!」

 何だかポチが乙女みたいになってしまっている。
 そんなポチの手を掴み強制的に外に連れ出して
 適当なお土産を買う為に表に戻る。
 若干手を繋いだことでポチの機嫌が戻り一安心。
 今後はあまりからかわない様にしよう。

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