勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

アルデン

 村を抜け森を抜けただひたすらに
 緑が広がっている草原を早くも無く遅くも無い速さで進んでいた。
 あまり人などが通らない為人道などなく、
 自然を踏み締めて進む。

「あとどれぐらいで着くの?」 

 全然変わる事のない周りの景色に飽き飽きしてきた俺は
 ポチの背中の上でだら~んとしながら
 そんな質問を口にした。

「俺達は三日掛けて兄貴の所に辿りついたが
 大勢の移動の為一定距離進んだら休憩する必要があった。
 兄貴達の人数で休まずにいけば一日で着くかと」

 三日と発狂し掛けそうになったが
 最後まで話を聞いて納得。
 一応俺も軍を率いているがアンデットなので
 休憩は必要ないだろう、霊体だし。

「なるほど、ありがとな」

「兄貴の役に立つことならなんでも答えるさ」

 とは言っても、
 一日ぶっ通しで歩いて人獣の国に辿り着いたとしても
 そこから王を倒しに行くのは体力的に辛い。
 失敗は許されない為、万全の状態で臨むのがベストだ。

「ちなみに、途中でどっかの国とか村とかあったりしない?」

「アルデンと言う中立の国がありますね、
 色々な種族が楽しそうに暮らしていていい国ですよ」

 中立と言うのはどの種族の国でも無いってことか。
 途中でその国があるのならば、そこで一泊して
 皆の体力を完全に回復させて翌日、王を討伐しにいこうか。

「ご主人様よ」

 お金も何も持っていない俺が決めれる事ではないので
 ご主人様であるエキサラに許可を取る。

「なんじゃ?」

「アルデンで一泊したいんだけど良いかな?
 出来れば万全の状態で王に挑みたいんだ」

「うむ、そうじゃな。そうすると良いのじゃ」

「ありがと」

 無事ご主人様からの許可を取ることが出来、
 王には万全の状態で挑めることが決定した。

「という事でアルデンで一泊する」

「了解っす~」

 今日の目的変更。
 アルデラまで何事も無く無事にたどり着く事。
 と言っても目的が変わったとは言え、
 やるべきことは変わらず只々歩き続けるだけ。
 俺はポチの上に乗っているが、他の皆が少し可哀そうだ。

 ヘリムは鼻歌を歌いながら何やら楽しそうに歩いているが、
 ご主人様のエキサラはもうつまらなそうに
 だらんだらんと歩いている。
 人獣達と妖精達は周りを警戒しながら歩いている。

「そういえば気になってたんっすけど、
 兄貴ってアンデットに知り合いとかいるんすか?」

「唐突だな」

 アンデットの知り合いがいるかどうか?
 現にお前の目の前にもエキサラとかいうなんちゃらの王で
 アンデットがいるじゃないか。
 見た目はクソガキにしか見えないから仕方が無い事だが。

「まぁ、居るが、それがどうした?」

 エキサラの事を知り合いと言う言葉で括り付けるのは不可能な事で
 此処で言う知り合いと言うのはアルデラさんの事だ。
 見るからにアンデット。そして透明化している軍の生みの親。

「今朝見せてくれたアンデットの軍勢の事っす」

「あぁ、そのことか。あまり深く追求しないでくれると助かる」

 あまりペラペラと話していたら裏切られた時の被害が大き過ぎる。
 まぁ、アルデラだけでそこまでの被害は出ないと思うけど、
 確実に信頼出来る奴以外にはあまり情報を与えない様にしないと。
 ……って今更遅いような気がもする……ま、いいや

「追及するつもりなんてないっす!
 ただ、兄貴って凄いなって。
 やっぱり兄貴クラスになると死者からも愛されるんっすね!」

「……ま、まぁな」

 何だよ兄貴クラスって、自分で言うのもなんだが、
 死者から愛されるのは強ち間違っていないかもしれない。
 そもそも今の俺ってアンデットの同じなのではないのか?
 心臓や脳を破壊されても即座に復活する。
 つまり俺も死者であってもう人間じゃあないのか?

 アンデット(人間)……これってゾンビじゃん。
 どうやら俺は知らぬ間にゾンビになっていたらしい。
 ……強くなり生きていけるならそれでも問題無いから
 自分がなんであろうとどうでもいっか。

 そんな事を考えているとやっと緑空間に変化が現れた。

「あれがアルデンです」

 遠方に現れたのは想像していた国とは全く異なり、
 外壁など存在せずに魔物でも盗賊でも誰でも
 入り放題の作りになっていた。
 近づくにつれ分かって行ったが、
 建物は全部石煉瓦造りで城など目立つ建物は無く、
 どれも同じような建物ばかりだった。

「なんか不安だな」

「そうっすか?」

「だって外壁も何もないし魔物とか入り放題じゃ?」

 見たところ門兵も居ない様だし
 もし魔物が現れたらどうするのだろうか。

「そんなのあっても無駄っすよ」

「え?」

 無駄?どういうことだ?

「外壁なんてあっても壊されるに決まってるじゃないのよ
 一人や二人の門兵も居ても只の餌食になるだけよ」

 そういえばそうだった。
 この世界の魔物はたとえスライムであっても最強。
 ……あれ、という事は俺の軍って最強の軍なのではないのか?

「あーなるほど……じゃあ魔物が来たときはどうするんだ?」

「アルデンに住んでいる方々が自主的に退治したりしますね。
 様々な種族がいるお陰でそこら辺の国よりも強いんですよ。
 回復に特化した種族もいますし攻撃に特化した種族もいます。
 様々な種族の力が集まってあの国は何立っているのです」

「なるほどね」

 まさに理想の国。
 序列時代なんて無視している。
 俺が目指しているのもそういった世界なのだろう。
 少し探検したいな。

 アルデンに入る際に入国検査の様なものはないらしく
 すんなりと通れるらしいのだが、

「ポチ、取り敢えず降りるから人の姿になってくれ」

『ああ、了解だ』

 人の姿になった事を確認して俺達はアルデンへと向かった。
 中にはいると外で確認できた通りに殆どの建物が同じような大きさだった、
 唯一大きい建物は宿屋や酒場ぐらいだった。
 屋台などが並び沢山の種族で賑わっている、
 その光景はまさに理想的だった。

 だが、やはり差別と言う物は存在する。
 俺と同じく首輪を付けているのが何名かあるいている。
 他と比べると布切れまでとはいかないがやはり服もボロボロだ。

 そんな彼らを横目で見つつ俺達は宿屋に足を踏み入れた。
 カランと扉を開けると音がなり、
 店員が元気よくカウンターに出てきた。

「いらっしゃい、何名様ですか?」

 外見は人と変わりないが、
 よくよく見ると頭に角が生えている
 若干イケメン系のお兄さんが営業スマイルを浮かべ接客をしてきた。

「えっと、9名かな」

「そうですか……現在は三人部屋が一部屋、二人部屋が三部屋となっています」

 三人部屋が一部屋……これはオルディ達人獣組にしよう。
 妖精組は二人はセットだから二人部屋。
 残すは俺とポチとエキサラとヘリム。

「どうする?」

 俺は横に居るヘリムにそう尋ねた。

「ん~できればソラ君と同じ部屋が良いんだけどな~
 でも、そうしたらご主人様が少し可哀そうだよね、
 ん~~~~、僕とご主人様でいいよ」

「っ!」

「仕方ないのう、今夜はポチに譲るかのう」

 あのヘリムが此処まで他人を気遣えるようになったとは!
 お兄さんは感動したぞ。

「それじゃ決まりだな」

「三人部屋一部屋と二人部屋三部屋で」

「畏まりました」

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