勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

骸骨再び

「それにしてもヘリムが気が付けなかったってさ、
 あのショタ神って相当やり手なんだろうな」

 誰も気が付かなかった程だ、
 何か複雑な仕組みがあったに違いない。

「戦闘力は大した事は無いんだけどね、
 余程の策士なんだろう、でも例えどんな複雑な策を練っても
 あの魔王達には叶わないだろうね……ははは」

 一体ヘリムは何を見てきたのだろうか、
 虚ろな目で虚無を見つめ乾いた笑いを出した。
 あの魔王達、その言葉が指すのは恐らく、
 エリルスや新たに魔王になったヤミ達の事を指しているのだろう。

「そんなに強くなったのか」

 元々頭の可笑しい程強かったが、
 俺の知らない間にヘリムにすら乾いた笑いを
 出させるほど強く成長している……のだろう。

「うん、ソラ君が思っている以上にね。
 あれは本当に、うん。
 ソラ君の死があそこまで彼女等を変えてしまったのだろうね」

「そ、そんなにか……」

 これは思っていたよりも大変な事になっているらしい。
 ヘリムが此処まで言うとは驚きだ。
 それを聞いて早く会いたいという気持ちと同時に
 成長していないのは俺だけと言う気持ちに襲われ、
 少し複雑な気持ちになっていた。

「それほどソラ君が大切な存在だって事だよ
 勿論、僕はそれ以上にソラ君の事を大切に思っているよ」

「そっか、ありがとな」

 俺にとってもヤミ達は大切な存在だ。
 勿論今となってはヘリム達も欠かせない大切な存在だ。
 二度と誰も悲しませない様にする。
 そんな自分との約束を果たすためにも、

「強くならないとな」

 俺はそう呟き改めて誓った。

「そうだね、でも休む時は確りと休みなよ」

「ああ、そうするよ」

・・・・

 あれからヘリムが部屋から出て行き、
 一人寂しくベッドの上で寝ていると、
 散歩から戻ってきたポチがベッドの上に乗ってきた。

「どした」

 見た目は大きいポチだが
 驚くほどに軽くモフモフ布団を掛けられている気分になる。
 普段ならベッドの横にいてベッドに上って来る事はなかったのだが、
 今回は部屋に入って来て真っ直ぐベッドの上に乗って来た。

『いや、ちょっとな、散歩している間に考えたんだ』

「何だ?」

 何だか変な事を言い出してきそうで
 少し聞くのが恐ろしい。

『ソラがこうなっているのは我が原因でもあるだろ?』

 確かに今の俺の状態を作り出したのは 
 エキサラだけではなくポチも原因だ。
 エキサラ8割ポチ2割というところだ。

『だからな、こうしてやる』

「うおっ!」

 ポチが先ほどのヘリムの様にベッドの中に入り込んできて
 俺の横に来ると大きな手と足で絡みつくように抱きかかえてきた。
 獣に抱かれるなの初めての経験で物凄く驚いたが、
 それ以上に物凄く気持ちがいい。

『どうだ?疲れ取れるか?』

「あぁ、物凄く心地がいい」

 ベッドの中に居るが、
 まるで空にふわふわとでも浮いているかのような
 そんな感覚に包まれながら徐々に俺の意識は闇に向かっていった。

・・・・

「……ん」

 かなりの時間寝てしまっていた様だ。
 目を開けると底には真っ暗な天井が広がり
 横を見るとポチやヘリム、エキサラが寝ていた。
 どうやら夕飯も食べずにずっと寝通したらしい。

 流石にこれだけの時間寝ると
 どれだけ目を瞑っても一切眠気が襲ってこず、
 俺は誰も起こさない様にこっそりとベッドを抜け出した。
 ポチのお陰だろうか体の倦怠感は無くなり物凄く調子が良い。

『起きたのか』

「っ!」

 こっそりとベッドから降りた瞬間に
 ポチの声が脳内に響きビクッと体を震わせてしまった。

「ああ、悪いな起こしたか?」

『いや、我も丁度目を覚ました所だ』

 ポチも他の皆を起こさない様にと
 ゆっくりとベッドから抜け出してきた。
 ポチは本当に軽いのでベッドを踏んでもそこが凹むという事はなく、
 軽々と此方にやってきた。

『何処かへ行くのか?』

「ああ……取り敢えず出るか」

 特に行先など考えておらず、
 取り敢えずエキサラ達を起こさない様に寝室を後にした。

「さて、完全に眠気は無くなったし、どうしよっか」

『我はソラについていくだけだ。
 ところで、体はもう大丈夫なのか?』

「ああ、ポチのお陰でな。ありがとな」

 俺はそう言ってポチの首をもふもふと撫でた。
 気持ちが良いのか俺の顔に鼻の辺りを擦ってきた。
 体とは違い少し硬めのモフモフ感を感じることが出来て
 これもまた気持ちが良い。

「外行くにも真っ暗だしな……」

『力を貸そうか?』

 どうやらポチは視界を確保することも出来るらしい。
 本当に万能すぎて恐ろしい。

「じゃ、頼めるか?」

『ああ』

「……おぉ」

 視界が明るくなり暗い所もくっきりと見える様になった。
 決して朝程は明るくないが、
 これで躓いて転んだりすることはないだろう。
 安全第一。

「外って言ってもな……あっ、そういえば」

 外に行って何をしようかと考えていると、
 ふと、とある奴の事を思い出してしまった。
 骸骨、リッチのアルデラさんだ。

「あいつ、生きてるか?いや、そもそも元から死んでるか」

『ん、誰の事だ?』

「変人賢者さんだ。今から会いに行ってみるか」

 ポチと共に階段を登り、王座の間にやってきた。
 この前来た時にはあった王座は跡形もなくなり、
 代わりにその周りにはぽっかりと穴が開いていた。
 下を覗くと砕け散った王座の破片やら床の破片やらで
 わちゃわちゃしていた。

 良く見ると、血痕が彼方此方にあり、
 そういえばここでも一度死んだなぁと思い出した。

「この中にいるはずだ、ポチ頼めるか?」

『ああ、乗れ』

 趣旨を伝えて居なくても確りと分かっている
 ポチは姿勢を少し低くして背中に乗せてくれた。
 自分の力だけでは降りても死ぬだけなので、
 ポチの力を借りて降りようという考えだ。

『いくぞ』

「うん」

 ふわ~りと早くも無く遅くも無く、
 羽毛が落ちるがごとくふわりふわりと自然な感じで
 静かに地面に降り立った。

「ありがとな」

『何だ、降りるのか?』

 ポチから降りようとしたが、
 何故だかそんな事を訪ねてきた。

「良いのか?」

『我は構わんぞ、ソラが上に居ると何故だか落ち着くんだ』

 俺自身もずっとポチに触れて居たい為
 そういわれると非常にうれしい。

「なら、よろしくなポチ」

『ああ』

 それから俺の案内で奥へと進み、
 遂に例の場所までやってきた。
 前回同様に何も変わっておらず、
 唯一変わっているのは骸骨の位置。

「あれだ」

『あれってリッチの事か?』

 俺からしてみると只の骸骨にしか見えないが、
 どうやらポチはそれをリッチだと見抜けるらしい。

「良く分かったな、
 おーいアルデラさんよ、起きてますか」

 転がっている骸骨に声を掛けると、
 カタカタと不気味な音を立てながら
 どういう原理なのか骸骨が立ち上がった。

「誰かと思えば……ほぉ、フェンリルとはな、
 本当に貴様は何者なんだ?」

 アルデラも意外と物知りの様だ。
 俺からしてみれば大っきい狼にしか見えないポチの事を
 一目見ただけでフェンリルだと言い当てた。
 流石は大賢者様。

「前も言っただろ、俺は人間だ」

「ほぉ……で、何の用だ?」

 疑いの目で此方を見て来ているが
 本当に人間なのだが……ちょっと特殊だけど。

「ん~そうだな~」

 特に考えずに来てしまった。
 確り生きているかどうか生存確認のつもりだったのだが
 ……この際だ、利用できるものは利用しよう。

「頼みがあるんだが、」

「何だ?言ってみろ」

 今此処で考え付いた事なのだが、
 以外にこの頼みが叶えば明日は結構楽になるかもしれない。

「軍を作ってくれないか?」

「は?」

 なーにを馬鹿げた事を抜かしているのか、
 そう思われても仕方が無い。
 だが、俺はリッチという可能性を信じての発言だ 

「大賢者のリッチなのだからそれぐらい余裕だろう?」

「出来るには出来るが、
 軍となれば沢山の死体か魂が必要になるぞ」

「ああ、それなら問題ないさ」

「ほぉ……ちなみに軍を作ってどうするつもりだ?」

「簡単な事さ、とある国を攻めてくるだけの事だ」

 本当なら軍などなくてもエキサラ達がいれば
 あっと言うまに国など落とせるだろうが、
 そんな事をしてしまえば全てが台無しになる。
 かと言ってイシア達に頼むのも何だか気が引ける。

 流石に同族同士殺し合うのは
 いくら傭兵だと言っても嫌なものだろう。
 だが、それが感情の無い下級アンデットなら話は別だ

「ふっ、やはり貴様人間ではないだろうな、
 ……良いだろう、軍を作ってやる。
 ただし条件があるぞ」

「何だ?」

「ヘリムの情報をくれ」

「あー、うん、別に良いぞ」

 忘れていたが、こいつヘリムに惚れてたんだっけ。
 物好きな奴だ。

「じゃあ、ヘリムって何者なのか教えてくれ!」

「あいつは、只の人間だぞ」

 嘘
 良いとは言っても本当の事を教えるつもりはない。
 幾らアルデラがヘリムの事を愛そうが、
 俺は大切な仲間であるヘリムの情報を簡単に渡すつもりはない。

「そうか、そうか」

「なら――」

 かと言って全て嘘を教えるのも可哀そうなので、
 ほんの少しだけ真実を交えながらも情報を与えた。

「勇者になれなかった俺は異世界で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く