勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

延期

「……だる」

 物凄い倦怠感と共に目を覚ました。
 ポチの後に続きエキサラにも身を喰われてしまい、
 俺の体力はもうゼロに近く寝たはずなのに
 全くと言っていいほど体から疲れが抜けていなかった。

 目は覚めているものの頭はまだ寝ている様な
 全く脳が動いてくれないそんな感覚だ。
 怠い為自分の足で歩きたくない為だれかに運んでもらおうと
 首を動かし辺りを見渡してみるが、

 既にエキサラの姿は無く未だにぐっすりと
 気持ちよさそうに寝息をかいているポチしかいなかった。
 そんなポチの姿を見ていると自分ももう少し寝ようと
 そんな考えが浮かび上がり再び目を瞑り眠りに入ろうとしたが――

「兄貴!おはようっす!」

 幸せの眠りを妨げる元気一杯のあほが一人。
 寝室の扉をノックなど一切せずに勢い良く入って来て
 朝から馬鹿でかい声で起こしに来やがった。

 その声に睡眠を邪魔されたのは俺だけではなく
 ポチも同じく、物凄く怒った眼つきで睨み付けていた。
 一瞬だけ怯んだオルディだったが、それでも負けじと立ち留まった。

「兄貴もポチさんも早く起きるっすよ!
 せっかく俺達で作った料理が冷めてしまうっす!」

 何故朝からそんなにも元気なのかと
 数分問い詰めたいと思う程うるさい。

「お前らが作ったのか……」

 何時もはエキサラとヘリムが料理を作ってくれていた為
 他の誰かが作った料理を食べるのは
 少しだけ楽しみな様な気がする。
 無いとは思うが毒が仕込まれていようが関係ないので
 そういったことは気にせずに食べれる。

「仕方ないな、起きるか……ポチ、ちょっと頼めるか?」

『分かっている、昨日は激しかったからな。
 流石のソラでも疲労までは完全に治せない様だな』

 ポチの言う通りに昨夜のエキサラは今までで一番激しかった。
 前みたいにちびちびと指を喰らうとかではなく、
 もう、猛獣の様にガブガブと……
 途中で心配そうにポチが此方を見ていた記憶がある。

「まぁ、うん。これからはご主人様の機嫌を損ねない様にするよ」

 それが唯一エキサラから自分の身を守る手段だ。
 普段から心がけていたことだが、
 これからはそれ以上に心がける様にしよう。

『ああ、そうしろ。
 じゃないとソラの事十分に喰えなくなるからな』

 少し笑いながら冗談交じりの事を言いながら
 ベットの横まで来て足をおり乗りやすい高さまで調節してくれた。
 俺は寝たままの状態でゴロゴロと転がり、
 ポチのモフモフのベッドの上に落ちた。

「あー癒される……」

 普通にベッドで寝るよりポチの上で寝た方が
 疲れがとれるのではないかと思う程ポチの毛は極上だ。
 流石にポチの上で寝ると言うのは何だか悪い気がするので
 今度毛を少し分けてもらってベッドでも作ろう。

「よし、ポチ頼んだぞ~」

『ああ』

 オルディの後ろをポチが付いていく。
 俺達が何時もの部屋に着いた時には皆揃って着席しており
 一番最後だった。
 そしてポチの上でだるそうにしている俺を見て

「何じゃ、何かあったのかのう?」

 今の俺の状態を作り出した張本人がとぼけた面で
 首を傾げてそんな事を聞いてきやがった。
 両頬を掴みながら昨夜何をしたのか問い詰めてやりたい。

「どっかのご主人様に虐められました」

「何じゃと!妾のソラをよくもっ!許さないのじゃ」

「……」

 今日のご主人様はどうやら頭のねじが足りないらしい。
 どっかのご主人様が自分自身の事だと気が付いていない。
 俺は少し興奮気味のエキサラの事を生暖かい目で見守りながら
 開いている席へポチと共に移動した。

「ソラ君お疲れ様だね~」

 そう声を掛けながらポチの上に居る俺を
 ひょいっと優しく持ち上げて椅子に座らせてくれた。
 そういえば昨夜ヘリムの姿を見なかったな……どこ行ってたんだろ

「ありがとな、所で昨日どこ行ってたんだ?」

「ん、隣の部屋で寝てたよ」

「え、なんで」

「ご主人様のお楽しみを邪魔したら悪いかなって思ってさ」

「……そっか」

 余計な真似を……と言いたいところだが俺は少しうれしい。
 何て言ったってあのヘリムが他人を気遣うという事を覚えたんだ。
 エキサラだけにかも知れないがこれは大きな進歩だ。

「さ、食べよ、皆ソラ君を待ってたんだ」

「そうだな、じゃ、いただきます」

 テーブルの上には本当に久しぶりの朝食と呼べる料理が並んでいた。
 目玉焼きにサラダ、パン、薄切りのベーコンの様な物……
 俺はこの世界に来て本当の朝食を食べたような気がして感動しながら
 美味しく頂いた。

 食事の途中でふと何故今日はエキサラの料理ではないのかと
 そんな事を疑問に思ったので質問してみると、
 どうやらイシア達が何かお礼がしたかったらしく
 朝食を作ると言う話になったらしい。

 味も中々良くて料理が出来るのならば
 昨日の夕飯も俺なんかが作らないで
 オルディ達に任せればよかったと少し後悔。

「あ、ちょっと待ってくれ」

 食事が終わり皆で片づけをしようと席を立った
 ところを慌てて止める。
 折角皆が集まっているので少し話したい事があるのだ。

 皆不思議そうな顔をしながら席に着いた。

「本来なら今日、イシア達の案内の下
 王の所まで行きたかったんだが生憎俺の体調がすぐれない為
 明日に延期しようと思う、頼んでる側なのに貧弱で申し訳ない」

 流石にこんな状態で王の所へ行っても
 何も出来ないどころか行く途中で力尽きそうだ。

「兄貴、大丈夫っすか?はやく良くなるといいっすね」

「気を付けるのよ、明日ね」

 皆なんの不満の声も上げずに心配の声を掛けてくれた。
 この状態を作り出した本人はというと、

「貧弱貧弱なのじゃ~」

 余ったマヨネーズをぺろぺろしながら
 そんな事を言っていた。
 正直にいって今すぐ殴りたい。
 そんな気持ちを落ち着かせて、

「ありがとう、今日は皆自由にしててくれ、
 俺は大人しく寝ているから何かあったらヘリム達に頼ってくれ」

「わかったっす!」

 ヘリム達に頼むのは少し心配だが、
 滅多なことが無い限りは大丈夫だろう。
 そんな感じで話を終わらせ、皆が片付けしている間に
 再びポチに乗って寝室に戻った。

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コメント

  • ノベルバユーザー210455

    貧弱‼貧弱ゥ‼

    0
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