勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

ハンバーグ

「えーと……」

 この世界にはフライパンなどは存在しているが、
 ガスコンロやIHなどそんな物は存在しているはずも無く、
 俺は目の前にあるガスコロンロもどきに苦戦している。
 見た目は大体ガスコンロなのだがガスボンベを入れる場所が見当たらず、
 代わりにあるのは何やら赤い色の取っ手。

 試しに引っ張ったり押してみたりしたが
 何の異変も起きずに只々時間だけが過ぎて行った。

「なぁ、ポチ。これってどうやって使うんだ?」

『そんなの我が知っているはずないだろう』

 俺の横で大人しくお座りしながら見ていた
 ポチに問いかけたが当然ながら正解を得られるはずもなかった。

「どうしたのよ」

 どうにかならないものかと
 取っ手を突っついたりしていると
 その行動を見て不思議に思っているであろうイシアが
 声を掛けて来てくれた。

「んとな、これどうやって使うんだか知ってる?」

「え、ああー、まぁ仕方が無いわよ。
 これはね、この取っ手を握って魔力を送ったら
 火が起きる仕組みなのよ」

 少しだけ驚かれたが俺の見た目がまだ幼いと言う点もあり
 仕方が無いと思われて優しく教えてくれた。
 流石は妖精王直属大精霊術師団長、何でも知っている。

「なるほど、ありがとな」

 礼を言ってさっさとハンバーグを焼く作業に移ろうとしたのだが、
 何故だかイシアが心配そうな目を此方に向けて
 その場を動こうとしてくれない。

「ど、どうしたの?」

「大丈夫わよね?火は本当に危険だから気を付けなさいよ?」

「あー、はい……」

 何だか実の母親の事を思い出して一瞬だけ
 過去の記憶を思い出していたが直ぐに我に返り返事をした。
 本当にお母さんみたいな事を言うな……流石は妖精王直属大精霊術師団長。
 返事をすると此方をチラチラと見つつもサラダ作りに戻って行った。

「さーて、やるぞ」

 フライパンをガスコンロもどきの上に置き、
 油をドローリと垂らして恐る恐る取っ手を握り、
 魔力を送り込む。
 魔力を操作するのも慣れたものだ。

 すると、火がボウッと起き、驚き体を逸らしたが慌てずに
 送り込む魔力の量を少なめにして火を安定させる。
 チラリと横目でイシアの事を見ると今にも
 此方に向かってきそうな態勢だったため
 即座に火を安定させたのは正解だった様だ。

 フライパンの上に手をかざし何となく温かさを感じ、
 それからもう少し待ってからもう良いだろうと判断して
 形を作ってあるハンバーグをゆっくりと入れる。
 ジュウゥウウと美味しそうな音が響き、腹の虫を呼び覚ます。

『美味そうな音だな』

「ああ、そうだな」

 素人の感で片面が焼けたなと思いひっくり返すと、
 なんとびっくり、こんがりと良い色を付け焼けていた。
 もう片面もそんな感じで焼いていき、両面が焼けたら
 水を少し入れて蓋をしめて蒸し焼きにする。

 水が無くなったのを確認してハンバーグを取り出し、
 更に盛り付けてイシア達にサラダを盛り付けてもらえば完成だ。
 そんな調子で次から次へとハンバーグを焼いて行き
 無事焦がすことなく俺の仕事は終わった。

「ふぃ、疲れた……」

 久しぶりに料理をしただけでこんなに疲れるとは……
 毎日馬鹿みたいな量を作ってくれている
 ご主人様の事を改めて凄いなと思った瞬間だった。

「ソラ君こっちも出来たわよ」

「こっちもっす!」

 休憩する間もなく皆の仕事が終わったようだ。
 サラダは兎も角マヨネーズ作りが思ったよりも早く思わり
 正直に言って予想外だった。
 本当ならマヨネーズを冷やしてからサラダに付けたいのだが、
 ハンバーグを作っている内にお腹がペコペコになってしまい、
 もう我慢できそうにない状況だった。

「本当は冷やしたいところだが飯にするぞ、運ぶのを手伝ってくれ」

 盛り付けた料理を何時もの場所に運ぶ。
 よくよく考えてみたらハンバーグだけと言う
 なんとも少ない料理だが、お腹が空ぎ過ぎて
 これ以上作れそうにないので仕方が無い。

 料理を運び、エキサラとヘリムを呼びに行くことにした。

「おーい、少ないが飯出来たぞ」

「ぬぅ、遅いのじゃ!」

「やった~」

 二人を連れて何時もの部屋に行き席に着き
 ハンバーグを食べる。
 最初は不思議そうに見ていたが口に居れた途端、
 皆美味しそうにバクバクと食べてくれていい気分だった。

 ソースがあればもっと最高だったが
 流石にソースの作り方など知っているはずもなかった。

「ちと物足りないが満足じゃ」

「そりゃ、良かった」

「それにしてもソラよ、こんなに大量にマヨネーズを作りよって……
 妾を太らせて喰うともりなのかのう?」

 野菜にマヨネーズを付けながらそんな事を言ってきた。
 一体エキサラは俺の事を何だと思っているのだろうか。

「そんな事する訳ないだろ、あと大量に作ったのは当分は
 作らなくても良い様にだからな。
 一遍に食べたりするなよ、そんな事したら二度と作らん」

「むぅ……そんな事しないのじゃ……」

 あからさまにがっかりとしながら
 ブツブツとそんな事を言っていた。
 口ではああ言っていても体は素直な為、
 本当に食べないか心配だ。

「勇者になれなかった俺は異世界で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く