勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

料理作り

 エキサラの要望に応えるべく俺達は厨房にやってきた。
 一体何時準備したのか、そこには大量の食材が並んでおり
 まるでこうなる事が分かっていたかのようだ。
 俺の他にも此処にはイシア達とポチが居る。

 ヘリムは壊れてしまったエキサラを慰めている為
 厨房にはやってこれず少し残念そうだった。
 イシア達はご馳走になるんだからせめて手伝わさせて欲しいとのことだ。
 ポチはなぜか知らないがこっそりと後を付けて来ていた。

「凄い豪華ですわ……」

「凄いな……」

 豪華な食材がずらりと並んでいる光景を見て
 感嘆の声を上げていた。
 俺も初めは豪華だと思っていたが、毎日毎日食べ続けていると
 流石に新鮮さがなくなり驚かなくなってきた。

「さてと、やるか」

 食材を見渡し歩い程度の献立を立てる。
 と言っても料理の知識が大してある訳もでもない為、
 簡易的な料理しか思い浮かばない。

「あれとあれで……よし」

 卵、酢、塩、砂糖、胡椒、油らしきものたち。
 一度作ったことがあり成功もしているので
 これらを混ぜ合わせれば失敗するという事は絶対にないはずだ。
 エキサラも俺も好きな物なので出来れば大量に作っておきたい。

 作り方は簡単。だが物凄く時間が掛かるし疲れるのだ。
 そこで俺は良い事を思いつてしまった。

「えーと、オルディとモルとインエ」

「なんすか?」「何だ?」「はい?」

 発した言葉はバラバラだが、
 俺の呼びかけに三人とも同時に即、反応してくれた。
 目をキラキラさせ期待の眼差しを向けてくるが、
 これから頼むことは単に混ぜるだけの簡単な作業。

 何だかそんな目で見られてしまうと
 頼むのが気が引けてしまうが此処は心を鬼に。

「三人は少し疲れるかもしれないが、重要な事を任せる」

 ゴクリと唾をのむ音が聞こえた。
 重要(マヨネーズ作り)なのだが……申し訳ない。
 そんな事を思いつつもボウルと泡だて器代わりの木のヘラを取り出し

「まずはこれとこれを」

 一人ずつ渡していった。
 不思議そうに片手にボウル、もう片手にヘラを持ち
 これで何をするのかと首を傾げていた。

「そのボウルの中に卵、酢――これらを入れて混ぜるんだ」

 卵、酢、塩、砂糖、胡椒、油と言いたかったが、
 この世界でも同じ名称なのかどうか分からない為、
 一応誤解を招かない様にと言い換えた。

「んで、これを入れるときに注意なんだが、よく見ててくれ」

 大した事をする訳でも無いが、小さな容器を置き、
 腕まくりをして右手に卵を持ち、
 キッチンに叩きつけてヒビを入れて殻を半分に割り、
 何も入ってない方の殻に中身を動かし、卵黄と白身を別れさせ、
 また何も入ってない方に中身を動かし……

 上手い事卵黄と白身を分けれたら、
 殻に残っている卵黄をボウルに移す。
 白身の方は後で俺が美味しく頂く、黄身より白身派なのだ。

「まぁ、俺は説明も実演も下手だがこんな感じだ
 要するにこの卵黄の部分だけボウルの中に入れてくれ。
 白身はこの小さな皿に入れといてくれ後で俺が食べるから」

「了解っす!」「任せろ」「分かりました」

 目を輝かせ勢い良く作業に取り掛かった。
 少しは苦戦するかと思っていたが、そんな事は無く。
 三人とも華麗に卵黄と白身を分けてボウルに入れていた。

 その動きは何故か洗礼されており一切無駄な動きが無く、
 一種の技なのかと思う程スマートにこなしていた。
 人獣族だからなのだろうか、それとも単に俺が下手なだけなのだろうか。

「次にこれらを入れて混ぜ混ぜするんだ。
 ある程度混ぜ終わったらこれを少しずつ
 ボウルの中に入れてトローリとするまで混ぜるんだ」

 酢、塩、砂糖、胡椒を入れて混ぜ、
 混ぜ終わったら油を少しずつ入れてトロミが出るまで混ぜる。
 あとは冷やしたりすれば美味しいマヨネーズの完成さ。

「頑張るっす!」

「単純そうで意外と疲れそうだ」

「ふふ、一体これがどんなものに化けるのか楽しみですね」

 三人が黙々と作業に取り掛かるのを確認して
 俺は次の作業へと動き出す。

「……取り敢えず、サラダだな
 イシアとリヤイ、此処にある食材何でも使って良いから
 サラダを作ってほしんだが頼めるか?」

「ええ、勿論よ」「イシア様がやるのならば」

「じゃあ、よろしく頼む」

 てくてくと歩き食材を選びまな板の上で野菜を刻み……
 残る二人のにも仕事を分け与え俺は大満足。
 残るは俺とポチ。

「む~、どうしようかポチ」

『肉だ肉だ肉料理を作るんだ』

「肉ね……」

 肉料理と言えば焼く位しか思い浮かばないんだが……
 あとチャーシューとか角煮とか出来るけど
 圧力鍋でしかやったこと無いから分からないな。
 んー、何か簡単で美味しい肉料理……あっ!

「ハンバーグだな」

『なんだそれは、おいしいのか?』

「さぁな、美味しいかどうかは俺次第かな」

 ハンバーグを作るにはひき肉が必要だ。
 だが、食材を見渡す限りそんなものは置いてなく、
 あるのは肉塊のみ。

「よし、ポチ。あの食材の中から好きな肉を選んでくれ」

『よし、任せろ!』

 ポチが嬉しそうに食材の下へ行き俺も後を続く。
 鼻を近づけにおいをかんだりして何やら肉を選別している様だ。

『この肉だな』

「これか」

 ポチが選んだ肉は薄っぺらいが霜が入り物凄く高級そうな肉だった。
 その肉と同じであろう肉達を集めまな板の上に乗っける。
 キッチンの位置が少し高い為小さな台を出して土台にする。

「上手く出来れば良いな」

 薄っぺらい肉を一か所にまとめて肉団子の様に固める。
 ポチが興味津々に鼻を突き出してきて少し邪魔だが
 可愛いので全然許す。

 肉団子が出来たらそれを適当な大きさに切り分ける。
 此処は包丁よりも自分で具現化した包丁を使う。
 見た目は普通の包丁だが切れ味は恐らく最高のはず。

「おりゃ!」

 何の抵抗も無く吸い込まれる様に刃が落ちていく。
 切り分けた肉を包丁で叩く。
 広がったら真ん中に集めさらに叩き。
 それをひたすら繰り返して行く。

「ふへぇ……」

 ひたすら叩きまくり数十分。
 ひき肉らしくなった肉をボウルに移す。

「あっ」

 野菜の事をすっかりと忘れていた為、
 慌てて食材の下へ行き玉ねぎを探す。
 が、それらしいものは在ったが玉ねぎは無かった。

「これで良いのかな……」

 形は玉ねぎだが色が緑色をしている。
 臭いも玉ねぎそのものだ。
 まぁ、食べれない食材は置いてないだろうと判断して
 その玉ねぎもどきを使う事にした。

 皮を剥き半分に切って端を切り落とす。
 そして縦と横に切れ目を入れてから包丁を落とす。
 あっという間にみじん切りを終えそれもボウルの中に移す。

 卵を幾つかボウルの中に入れて後は只管こねる。
 ねちょねちょと何だか少しいやらしい音を立てながらこねこねと。
 纏まってきたら形を整え幾つかに分け掌を使って、パンパンッ!と
 いやらしい音を立てて空気を抜いていく。

「よーし、あとは焼くだけだぜ!」

『おぉ、楽しみだな』

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