勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

尋問

 捕虜達がいる場所に戻ってき、
 何事も無かった事をエキサラに確認してから
 俺は皆を見渡せて自分の身長が少しでも大きく見える位置、
 階段を数段上った位置に立った。

 見た目が幼く小さいからと言って舐められない為だ。
 目の前で戦闘を見ていた捕虜達は俺が只の子供では無い事は
 分かっているだろうが念には念を入れとく。

 階段の前の位置にヘリム、エキサラ、ポチと言う順で横に並んでいる。
 ポチの場合並んでいるというよりは寝っ転がっていると言った方が正しい。
 少し大きめの咳払いをして皆の意識を此方に向けさせ、本題に入った。

「さて、これから軽く尋問を行う。
 一人一人だと面倒だから五人で行う、
 適当にグループを組んで付いてくれ」

 俺の言葉を聞いて捕虜達が騒めきだした。
 最初はグループをどうやって組むか話し合っているのだろうと思ったが、
 何やら困惑した様な表情で此方を見てくる捕虜達が多数。

「どうした、何か問題でもあるのか?」

「私達で自由に組んじゃって良いのかしら
 何か企んでるかも知れないのよ?」

 捕虜達の中で唯一拘束されていない彼女がそう発言した。
 そう言われればそうかもしれないと思ったが、
 同時に、何か企んだとしても何も出来ないと判断した。
 そもそも、そんな事を態々口にだして来る時点で、
 何も企んでいないと言う証拠だ。

「……」

 問題ない、そう言おうとしたが、
 何だかこのままだと結構な時間を無駄になりそうな為、
 俺が適当に指名して決める事にした。

「分かった。俺が今から適当に五人ずつ指名していく事にする」

 すると、先ほどまで困惑していた捕虜達の表情が
 少しだけ穏かになった。
 それを確認してこの判断は間違いでは無かったと一安心。

「じゃあ、髭が長い君とスキンヘッドの君と……」

 指を指すだけでは分からないと思い
 一応その人の特徴を言いながら五人ずつ指名していった。
 全員のグループ分けが終わり早速尋問へと行動を移す。

「じゃあ、まずそこのグループからだ。
 付いて来てくれ」

 エキサラとポチには再び捕虜達の監視を頼み、
 俺とヘリムは指名したグループ達を連れ、
 階段を登り直ぐの部屋に案内した。
 なんの内装も無い部屋だがそれだけで十分だ。

 捕虜達も家具などが一切ない部屋を見渡して
 拍子抜けした様な、何方かと言うと安心した様な表情を浮かべていた。
 恐らくヘリム程ではないと思うが、
 多少の危害を加えられると思っていたのだろう。

 椅子も何も無いので取り敢えず部屋の中心で床の上に座ってもらい、
 一応ヘリムを扉の前に居てもらい、
 俺は捕虜達正面に立った。

「さて、これから軽い尋問を始める」

 真剣な眼差しで此方を見てくる捕虜達から息を呑んだのを感じ、
 俺も改めて意識を集中させる。
 そして、ポケットに右手を突っ込み、
 閉まってあったロケットペンダントを優しく握り、
 外に取り出して掌を自分の方に向けて一度中身を見る。

「単刀直入に聞く」

 目を閉じ、もう一度持ち主に返すことを誓った。
 ロケットペンダントのチェーンを片手で持ち
 捕虜達の方へ向けた。
 ゆらゆらと揺れつつも確りとペンダントの写真は捕虜達の方へ向き、
 それを犬や猫が餌を目で追いかける様に必死に目で追っていた。

「この写真の男と娘に見覚えは無いか?」

 捕虜達はペンダントの写真をまじまじと見つめ、
 暫くしてからお互いに顔を見合わせ首を傾げだした。
 その反応を見て知らないのだろうと判断出来るが、
 一応言葉として聞いてみることにした。

「知らないか?」

「はい、知りません」

 一人が答え終わると目線を隣の捕虜に向け、
 一人一人順番に声に出さして答えさせる。
 答えはこの場に居るこの場にいる人獣も妖精族も
 皆知らないと言うのものだった。

 それが真実かどうか確認する為に
 扉の前で暇そうに立っているヘリムの方を向き確認を取る。
 此方に視線に気が付いたヘリムはゆっくりと縦に頷き、肯定した。
 つまり、この捕虜達の発言には嘘は含まれていないと言う事だ。
 そうと分かればもうこいつ等には用は無い。

「そうか、ならもういいぞ。
 解放してやりたいが、全員の尋問が終わるまで
 さっきの所で待っていてくれ」

「え、良いんすか?」

 人獣のロン毛でチャラチャラとしたチャラ男が
 驚いた口ぶりでそう言ってきた。

「ん?」

 一体何について驚いているのか
 分からずに俺は首を傾げてしまった。

「ん?って……
 俺達の事をそんなに簡単に信じちゃって良いんすか?」

「あぁ……そういう事」

 ヘリムの確認があるからこそ簡単に信じているのだが、
 そんな事を説明する義理は無いので
 適当にそれっぽい言葉を言っておくことにした。

「知らないのならばそれ以上問い詰めても時間の無駄だ。
 それともお前たちは俺に嘘を付いているのか?」

 俺の言葉を聞き、
 捕虜達が一斉にチャラ男の事を余計な事を言うな
 と言うような目で睨み付け、
 本人は顔色が真っ青になり慌てた様子で否定する。

「い、いやいや!そんな事はないっすよ!
 本当に知らないっすよ!」

「そうか、ならそういう事だ」

「そ、そうすか……」

 捕虜達を立たせて部屋から出て行き、
 エキサラ達の下へと戻る。
 尋問を終えた捕虜達と引き換えに新たな捕虜達を連れ
 再び尋問部屋へ向かう。

 同じ様な流れで尋問を始めたが、
 皆同じく首を横に振るばかりだった。
 殆どのグループの尋問が終わり、
 残すグループは例の彼女がいるグループだった。

 捕虜達の中では一番親しいと言える関係の人物だ。
 中々魔法の腕も良く、色々と努力をしたという事だ分かる。
 それと情報を知っているかとは何の関係も無いが。
 もう、あとが無いため何か知っていないか祈るばかりだ。

 彼女たちのグループを尋問部屋に居れ、
 他同様にロケットペンダントの写真を見せると、

「知りませんね……」

 やはり回答は同じだった。
 一人、また一人と同じ回答をする中、

「ああ!知ってるわよ」

「よしっ!本当か!?」

 まさかの最後の最後の希望が輝いてくれた。
 俺は思わず声を荒げ歓喜の声を上げてしまった。
 彼女は若干驚きつつも「えぇ」と肯定してくれた。
 思わず盛り上がってしまい真実かどうか確認するのを忘れてしまい、
 慌ててヘリムの方を見ると、首を縦に振ってくれた。

「嘘じゃあないんだな……」

 小声でそう呟きロケットペンダントを強く握りしめた。

「よし、知らない奴らは戻ってくれ。
 ちょっと、ヘリム頼めるか?」

「問題ないよ~任せて!」

「あの、私はどうすれば?」

「お前は此処に残ってくれ」

 彼女以外の捕虜達を連れてヘリムが部屋から出て行き、
 俺と彼女二人だけになった。

「悪いな、何だか今日であったばかりなのに色々と。」

 魔物との戦闘の時も何やら魔法をかけてくれ、
 今度は俺が今一番必要としている情報を与えてくれる。
 敵同士だが、何やら申し訳なくなる。

「本当であれば殺されても文句は言えない立ちなのよ、
 これ位どうってことはないわ」

「そっか」

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