勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

骸骨

 帰り道は何事も無く無事に城まで辿りつくことが出来た。
 城の中に入るとエキサラとヘリムの姿が見えなかったが、
 代わりに美味しい匂いがぷんぷんと漂っていた。

 階段を上がり、右に行くと厨房があるらしいのだが、
 俺が行っても邪魔になるだけなので、
 大人しく城の中をウロウロすることにした。

 爺はいつの間にかに姿を消していた為、
 一緒にウロウロ出来ず俺一人だ。

 階段を上り、右には行かずに左に進む。
 左に行くと通路があり左右に扉が幾つもある。
 本当に沢山の部屋があるらしい。

 俺は手前の部屋の扉を開け、
 一体どんな部屋なのかを確認した。

「うわぁ。」

 何にもない。
 只々壁と床があるだけの薄暗い部屋だ。
 無駄に広い部屋のため物凄い孤独感を覚える。

「本当に化け物とかいても不思議じゃないな。」

 先程村での会話の通り本当に化け物が居てもおかしくない。
 そんな雰囲気の部屋だ。
 もっとも、化け物とやらは既に爺が退治してしまった様だが。

 他の部屋もまさかこんな感じだったり……
 そんな嫌な予感がし恐る恐る違う部屋の扉を開けると、

「……うん」

 案の定、先程の部屋と同じだった。
 他の部屋も見てみたがどれも同じだった。

「はぁ。」

 せめて家具の一つや二つ置いてれば少しはマシに……
 いや、逆に不気味な感じになるな。

 そんな事を思いながら、
 俺は階段を上がり謁見の間に向った。

 真ん中に細長い絨毯が敷かれ、
 それは入口から奥の方にある王座まで続き、
 王座の後ろにはステンドグラスで天使と人間が描かれている。
 左右の壁からは様々な模様が入った旗が幾つも突き出ている。

 旗の模様を眺めながら俺は王座に近付く。
 てっきり王座だから豪華なものかと思っていたが、
 どうやら石で出来ている様だ。しかもかなり脆そうだ。
 少しでも体重が重い人が座れば一発で崩れるだろう。

「よいしょっと」

 幸いにも俺の体重は可愛らしいもので、
 王座に座っても崩れる事は無かった。

 城自体は結構立派なのに
 どうして椅子だけこんなに古いんだろうな。
 そもそもこんな部屋使う機会なんてあるのだろうか。
 まだ魔王城なら分かるがこの城は只の家だし。

 そんな事を考えながら、俺は王座に肘を掛けた。
 すると、何やらガチャリと音が鳴った。

「凄く嫌な予感がする……」

 音がした時点で離れれば良かったものの、
 馬鹿な俺は音がして数秒後に、
 王座の周りがスッポリの切り抜かれそのまま落ちてしまった。

「うあわわわああああ!」

 真っ暗闇の中で、ゴォゴォという風の音を聞きながら
 俺は物凄い勢いで落ちていく。
 そして――

――ドゴォオン

 俺より先に落ちた王座が物凄い音と共に砕け、巨大な土埃を創り出し、
 辺りの視界が非常に悪くなった地面に俺は落ちて行き、
 俺の体は衝撃で潰れてしまった。

「ッハアアアアア!死んだ!」

 潰れてから数秒後に俺は復活し、
 思いっきり空気を吸い叫んだ。

「何でこんな罠があるんだよ……」

 上を見上げると円状の穴が空いており、
 謁見の間の天井が薄っすらと見える。
 かなりの高さから落ちてしまった様だ。

「こりゃ、登るのは無理そうだな。」

 もうすぐご飯の時間だと思うし、
 俺が居ない事に気付いてヘリムかエキサラが
 探しにきてくれるのを待つか。

 周りを見渡すと、
 砕け散った王座がある以外に何もない。
 ごつごつのした岩に囲まれており、
 どこから生えているのかも分からない程の
 複雑なツタがにょきにょきの岩に絡まっている。

「ん?」

 良く見るとツタの後ろに
 一ヵ所だけ洞窟の様な穴がある。
 あきらかに入っては行けない感じだ。

「うわぁ……」

 しかし、このまま待っていると言うのも暇すぎるので
 好奇心旺盛な俺はその洞窟に向って歩き出した。

「こういうのを見ると、
 どうしても行ってみたくなるのが男の子なんだよなぁ」

 生い茂ったツタを手でかき分け
 洞窟の中に足を踏み入れる。
 当然ながら洞窟の中は真っ暗だ。

 魔法を使っても良いが、
 ここは光造を使って何か創り出してみるか。

 洞窟を照らすものと言ったらアレだよな。
 ゲームや漫画でも定番のアレだが現実でお目にかかる事なんて
 普通の生活をしていたら滅多に無い。

 そう――

「松明!!」

 具現化した松明を持ち、
 俺はガツガツと洞窟を進んでいく。
 初めて手にする松明に感激しつつも、
 一応警戒を怠らずに。

 結構な距離を進んだ気がするが、
 なんの変化も無く只々一直線の穴が空いているだけ。
 何か居てもおかしくは無い雰囲気だが、
 鳴き声すら聞こえてこない。
 本当に不気味な洞窟だ。

 あまりにも長くて何もない洞窟の為、
 何度も何度も引き返そうとしたが、
 俺の好奇心がもう少し進んだらきっと何かある。
 と言って俺の事を洞窟の奥へと進ませる。

「折角ここまで来たんだ。
 せめて宝箱とか何かあってもいいだろ。」

 それから少し歩くと遂に洞窟に変化が現れた。
 洞窟には見合わない鉄の扉が現れたのだ。
 俺は扉に松明を近づけて照らす。
 すると、扉には良く分からない文字がズラリとかかれていた。

「何だこれ、明らかにこの先に何かあるって事じゃねえか。」

 何が書いてあるのかは分からない。
 だが、この先に何かがあるのは分かる。
 少し怖いが此処まで着たんだ引き下がるわけにはいかない。

「おろっ?」

 てっきり頑丈な扉かと思っていたが、
 手を着いただけで後ろに倒れてしまった。

 そこまで錆びていた訳でも無かったのに、
 不思議な扉だな。

 扉の先には大きな広場が広がっており、
 真ん中にポツリと骸骨が座っていた。

「何だアレ。」

 取り敢えず俺は骸骨の事を無視して、
 広場を探索する事にした。
 余りにも広いため松明を量産し、岩の隙間などに入れ込み、
 それを沢山の隙間にやり、広場は松明の光によって照らされた。

 一通り広場を回ってみたが、この場所には骸骨以外には何もなかった。
 俺はまだ暗い骸骨の周りにも松明を置いて明るさを確保しようと、
 無警戒で骸骨に近付いた。

 そして松明を置こうとした瞬間、
 座っていた骸骨の手が物凄い速さで俺の向って伸び、
 そのまま俺の頭を貫通した。

 俺は声を出す事すらかなわずに、
 本日に二度目の理不尽な死を迎えた。

「ッ!」

 何が起きたんだ……?

 あまりにも唐突だった為、
 一体何がどうなったのかは分からない。
 唯一分かっているのは死んだと言う事。

 地面に倒れながら落ち着いて状況を整理する。
 骸骨の近くに松明を置こうと近付き、
 気が付いたら死んでいた。
 一番怪しいのは骸骨。

 チラチと目だけ動かして骸骨の姿を確認する。
 骸骨は先程と同じ格好のままで一切動いた様な痕跡は無い。

 この骸骨じゃなくて何か罠でもあるのか?
 取り敢えず警戒しつつ此処を離れるか。 

 俺はボロボロの短剣をイメージして
 具現化すると同時に立ち上がってその場から離れようと
 思いっきり地面を蹴り後ろに飛ぶ。

「っ!」

 という予定だったが、
 地面を蹴ろうとした瞬間骸骨が動き出し、
 右足を思いっきり掴んで来た。

「くそっ、この離せ骨!」

 空いている左足で骸骨の手を離そうと
 腕を踏んだり蹴ったりしたがカランカランと音が鳴るだけで
 全く離れる様子が無い。

「うおっ!?」

 不意に掴まれている足を引っ張られ、
 バランスを崩し頭を地面に打つ。
 そして、そのまま骸骨に投げられ俺はゴミの様に吹き飛び、
 広場の壁に激突した。

 壁にぶつかり鈍い音がし骨が幾つも砕けたが
 即座に復活する。

「くそっ――っぅ!」

 行動に移そうとしたが、それよりも先に
 先ほどの骸骨が物凄い勢いで俺に殴り掛かって来た。
 俺は具現化していた短剣で拳を無効化し、
 骸骨を離そうとあばらに蹴りを入れたが、

「ちょ、待って!」

 軽く片手で掴まれてしまい、
 俺の足を引っ張り、そのまま逆側の壁目掛けて投げられてしまった。
 流石に距離があった為、真っすぐ壁にぶつかる事は無かったが、
 俺の体は地面に叩きつけられ何度も跳ねながら壁にぶつかった。

 痛みにも慣れたものであれだけ酷い目に合っても
 あまり痛みを感じない。
 体も直ぐに復活し、俺は次こそ骸骨よりも先に行動に移る。

 今の俺では到底敵う相手ではない。
 そう判断した俺は出口に向かって走りだした。
 このまま出口に行って洞窟を抜ける。

 だが、そんな簡単には行くはずが無く、
 骸骨に先回りをされており広場から抜け出す事は出来なくなってしまった。

「くそっ、先回りとかお前骸骨じゃないだろ。」

「如何にも。」

「っ!喋れるのか!?」

 別に会話目的で発した訳ではないが、
 驚くことに骸骨が反応したのである。
 まさか、喋れるとは思っていなかった為、思わず声に出してしまった。

「そういう貴様も普通ではないな。
 種族は人間に見えるが、その異常な回復速度……貴様は何者だ?」

 力では勝てないが、
 話しが通じる相手なら何とかなるかも知れない。
 そう判断した俺は骸骨と会話をすることにした。

「俺は人間だ。ちょっとご主人様から力を授かっただけのな。
 ちなみに、この洞窟の上にある城に住んでいる。」

「ほう、興味深いな……
 気配が増えたと思っていたが、
 この城にもやっと住む奴が現れたのか。」

「ああ、ちなみにあんたは何者なのか聞いても良いか?」

「俺は骸骨じゃない、リッチだ。」

「リッチだと?」

 俺はその名前を聞いて即座にとあるゲームを思い浮かべた。
 ……リッチって言ったらアンデットの魔法使いだよな。
 俺が間違っていなければ、
 俺は魔法使いに接近戦で負けたのか。

 何て事だ。弱すぎるだろ俺。

「如何にも、俺は昔大魔法使いアルデバとも呼ばれていたな。」

 何やら両手を広げて何かを表現している。
 昔の事を思い出しているのだろうか。

「はぁ、つまり俺は魔法使いに接近戦で負けたのか。」

 情けない。

「まぁ仕方のない事だ。
 お前のような少し特殊な力を持っているだけの餓鬼が、
 この元大魔法使いに勝てるはずがないだろう。
 そう気を落とすな、貴様はこれからだ。」

「うん、ありがと。」

 何故か俺を殺した犯人に慰められてしまっている。
 だが、このまま上手く行けば戦わずに何とかなるかもしれない。

「さて、貴様が俺の眠りを妨げたから殺してやろうかと思ったが、
 どうやら貴様はそう簡単には殺せないらしい。
 さぁ、どうしようか。俺としては眠りを妨げられて非常に不愉快だ。」

「だったらお詫びとして一緒にご飯なんてどうかな……」

 って、胃袋も何もないのに意味ないじゃないか!
 このばかやろう!

「ふむ、食事か、たまにはいいかもしれないな。
 生憎、食事をした所で意味は無いのだが
 味位はかんじる事が出来るからな、ああ、たまにはいいだろう。」

「おお、本当か!
 それじゃ着いて来てくれ!」

「ああ、楽しみだな、久しぶりの食事は。ふふふ」

 何とか戦わずに済む様だ。
 エキサラ達には色々と説明する必要があるけど、
 このリッチ話せばわかるみたいだから何とかなるか。
 万が一の時があってもヘリムの力でどうにかしてもらおう。
 

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