勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

この世界でのスライムはかなり強いらしい。

 少しエロい目にあったジブお姉ちゃんだが、
 その後も俺の魔法を受けてくれた。
 ちなみに、俺が試し打ちした魔法は
 治癒、閃光、浄化、光体、光眼……

 治癒ヒール
 命がある全ての生命ならどんな傷でも回復が出来る。
 少し回復はするが、完治させるのは難しい。

 閃光フラッシュ
 眩い光で目を眩ます。

 浄化ライニング
 不死系、汚染系の魔物をあるべき姿に戻す。

 光体ルーメンボディ
 対象の体を光で包み、移動速度、攻撃速度を上げる。
 自身にも使う事が可能。

 光眼チェイス・アイ
 この魔法を発動させながら対象の相手を見ると、
 相手がどの位置にいても居場所がはっきりと自身の目に映る。
 自身の意志によって見たり見なかったりする事が可能。

 試したのはこれ位だ。
 治癒は普通に使える魔法だ。
 魔法の定番中の定番だが、やっぱり治癒系の魔法は大切だ。

 閃光は使えるが慣れるまでは少し使い難い。
 小さな光を狙った位置に飛ばし、任意のタイミングで発動させる。
 簡単そうだが、これが意外と難しい。
 特に狙った位置に飛ばすのが難しい、
 まだ幼くて肩が弱いと言う理由もあるが、
 俺自身のコントロール能力が恐ろしいほどショボい……要練習。

 浄化はまだ良く分からない。
 ジブお姉ちゃんは汚染体、
 不死でも無いのでこの魔法を使っても意味が無かった。
 そもそも、不死系の魔物ってやっぱりゾンビとか……いるのか?

 光体はかなり使える。
 仲間にも自分自身にも使え、移動・攻撃速度を上げてくれるのは
 戦いでかなり使える。
 簡単に言ってしまえば身体強化リインフォースメント・ボディの下位互換だ。

 光眼も少し使える……かな?
 モンバンとかであるベインドボール的なあれだ。

 他にも試してみたい魔法があったが、
 スペルが長くて面倒くさいし、魔力の消費も多い。
 まだ自分の魔力量も分からないので、今日はこれ位でやめる事にした。

「もう終わりでいいのかい?」

「うん、お父さんにも余り無理をするなって言われてるから。」

「そうか~ソラは良い子でちゅね~」

 ジブお姉ちゃんは俺の頭を撫でてきた。

 何がでちゅね~だよ。
 ……でも悪くない。

・・

「……」

 ジブお姉ちゃんと別れて家に戻った俺はベッドの上にゴロゴロしていた。

「やる事無い……」

 今日やるべき事はもう終わったし……
 そうだ、本を読もう。

「よし。」

 本と言っても魔法本の事では無い。
 昨日行った図書館にある本の事だ。
 場所は覚えている為、もう一人でも行ける。

 図書館に行き、早速本を読もうと思ったが――

「届かねぇ……」

 すっかり忘れていた。
 そうだった……
 普通なら螺旋状の階段をのぼれば良いんだが、
 階段と本との間に結構隙間が空いているので
 腕を伸ばしても本に手が届かない。

「はぁ、」

 仕方ない。
 下の方にある本を読むか……

 下の方には魔物図鑑的本や、
 植物……他には良く分からない本が沢山置いてあった。
 俺は魔物図鑑の方に興味があったので魔物図鑑の方を読むことにした。

「……なんだよこれ。」

 図鑑には魔物の定番のスライムが載っていたが、その説明がおかしい。

 スライム。
 詳しい生態は良く分かっていない。
 唯一分かっている事は一体いれば数百体にも繁殖できる事。

 ここまでは何となく理解できる。
 スライム一体居れば、分離的な事をして数を増やすのだろう。
 だが、この後だ。

 髑髏マークが書いてあり、その横には
 【討伐する時は、絶対に一人では挑まないで大人数で挑み、不意を衝く事。】
 そしてその下に小さく、
 過去に数百人で構成された遠征隊が全滅。
 と書いてあった。

 数百人が全滅?
 スラならやりかねないが、たかがスライム相手でか?
 どうなってるんだこの世界は……

 他にも雑魚のスケルトンとかもあり得ない強さで本に書かれていた。

 俺はこの本を読んで分かったことがある。

「この世界の魔物は危険だ。」

 出来るだけ関わらない様にしようと、心の中で誓った。

・・・・

「治癒草、解毒草、火傷草、毒草、高草……どれも一緒にみえるぞ……」

 一通り魔物図鑑を読み終わり、次は植物図鑑的な本を読んでいた。
 色々な種類の植物が書いてあり、俺は何となく薬草類の所を読んでいた。

 どれも同じような色、形をしていて素人の俺からしてみればどれも同じ薬草に見える。

 一体どうやって見分けたらいいんだ……治癒草と毒草も同じに見えるし……間違ったら大変だな。
 もっと良く見て違いを確認してみるか。

 そう思い、俺は数十分図鑑を睨みつけていた。

「おっ」

 何となくわかった気がする。
 この治癒草は、葉の裏側に点々があるのか。
 それに対して毒草は点が無い。

 こう言う事でいいのかな?
 まぁ、俺が薬草なんて採る機会なんて無いと思うが。

 ……さっきから気になってたけどこの高草って何だ?
 読み方は……ハイソウ……何だこれ、明らかに怪しいだろ。

 説明は……気持ちが昂り、一時的に痛みなどに鈍くなる。

 うわぁ、完全に危ないやつじゃん……怖い怖い。


 こんな感じに俺は図鑑を読み漁って行き、気が付けば外は暗くなっていた。
 今日読んだ図鑑は、魔物図鑑、植物図鑑、料理図鑑の三冊だ。

 どれも全く知らない事が書かれていて読むのが楽しく、つい遅くまで読んでしまっていた。

「急いで帰らないとな。」

 俺は図鑑を片付けて急いで家に帰った。
 家の中に入ると何やらいい匂いが漂ってきた。

 あ、お父さん帰って来たんだ。
 怒られそうだな……まぁ、ここはコソコソしないで堂々と行った方が良いよな。

 そう思い、俺は堂々とリビングに行った。

「ただいまー」

「あっ、お帰りになったのですね。」

「あれ?」

 リビングには、料理を並べているお父さんではなく、ゴウルが居た。
 何で紳士さんが料理なんて並べてるんだ?

「ああ、副団長なら今日は帰ってきませんよ。」

「そうなんだ……。」

 狩りってそんなに時間が掛かるものなのか……てっきり一日で帰って来るかと思ってた。
 お父さんの代わりに紳士さんが俺の世話をしてくれるって訳か……
 明日には帰って来るかな?

「いつ帰ってくるの?」

「そうですね……大体明後日には帰ってくると思いますよ。あっ、この料理まだ作り立てなので早めにお召し上がりください。」

「いただきます。」

 明後日か……結構掛かるんだな。
 一体何を狩りにいってるんだ?

「何を狩りに行ってるの?」

 俺は料理を食べながらゴウルに聞いた。

「えっとですね、プーって言う魔物です。」

 ああ、プーか。
 そんな奴図鑑に載ってたな。

 確か、可愛いのは名前だけで、見た目は超絶ブサイク。
 くそ臭い。
 でも美味しい。

「ちなみにプーと言う魔物は――」

 ゴウルは図鑑に書いてあった事通りに詳しく教えてくれた。

「そうなんだ!早く食べたいなー!」

 知っていた事だが、ここは無知な子供らしく振る舞った。

・・・・

 翌日、俺は昨日よ同じ様にジブお姉ちゃんと一緒に魔法の試し打ちをし、
 家に帰ってゴロゴロしたり本を読んだりしていた。
 その翌日も、俺は同じ様に魔法の試し打ちをしていた。

「光よ、大地の恵みと共に対象を拘束しろ。拘束バインド

「んっ…あっ……ってあれ?何か余り締め付けられないよ?」

 そう。
 俺は、只魔法を使うだけではなく強さも調整出来るんじゃないかと思い、
 試しているのだ。

「うん、魔法を使うのは慣れてきたから次は強弱の練習をしているんだ。」

「……少し残念……」

「ん?」

「いや、何でもないよ。
 じゃあ、次いってみよー!」

 魔法の強弱を調整するのは意外と簡単だった。
 魔法のスペルを読み、発動させると同時に心の中で
 魔力的なやつを抑えると、魔法は弱くなり、
 逆に全開にすると、魔法は強くなる。

 この心の中の魔力的なやつの事は正直に言って良く分からない。
 だが、心の中にある何かを制御するとしっかりと
 魔法に強弱を付ける事が出来る。

 まぁ、その何かが何なのかはどうでもいいや。
 実際に強弱を調整出来てるしね。

・・

 魔法を試し打ちを終え、家に戻るとそこにはお父さんの姿があった。
 お父さんは結構疲れたような顔をしていたが、 
 俺が「ただいま。」と言うと、
 笑顔で「おかえり。」と言って迎えてくれた。

 本来であれば、俺が家にいてお父さんが帰ってきたら
 「おかえり!」と言うはずだが、
 タイミングの問題で立場が逆になってしまっていた。

「すまん、少し疲れているから寝かせてくれ。」

「うん、おやすみ。」

 お父さんは自分の部屋に向った。

 やっぱ相当疲れてるらしいな。
 つか、プーちゃん狩りに行ったのに、
 その肝心のプーちゃんが見当たらないんだが……
 どこかに保存してあるのか。

 起きたら聞いてみるか。
 さて、俺はいつも通りゴロゴロするか――いや、本でも読みいくか。
 紳士さん探して図書館行くか。

 つか、紳士さんどこにいるんだろう。
 まだ、家に居てくれたら丁度良かったんだけどな。
 はぁ、適当に探してみるか。

・・

 探し始めたのはいいけど……一向に見つからねぇ。

 紳士さんを探し始めたのは良いが、
 手掛かり一つない為全く見つからない。

「はぁ。」

 もう少し探してみるか……

 それから数時間探したが、
 紳士さんは見つからなかった。

「……」

 なぜ、俺はこんなに必死になってあの紳士さんを探しているんだろうか。
 もう暗くなってきたしお腹空いたし……時間を無駄にしてしまったな。
 今思えば、別にあの紳士さんじゃなくても、
 背が高い人なら誰でも良かったよな。

「……はぁ。」

 本当に時間を無駄にしてしまったな。

「……帰ろ。」

 家の前までトボトボと歩いて帰ると、
 何やら家の中からいつも以上に良い匂いが漂ってきた。

 うおっ!何か物凄く美味しそうな匂いがするぞ……。
 もしかして、プーちゃんを料理してるのか?
 楽しみだ。

 そんな事を思いながらワクワクしつつ家の中に入ると――

――パァーンッ!

「え?」

 突然の爆発音と共に、何かが飛んできて俺の体に絡まった。

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