勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

冒険者ギルドとソラ

 冒険者ギルド。
 それは異世界のテンプレ中のテンプレ。
 可愛い受付嬢に柄の悪いおっさん達、そこに現れる主人公。
 そして柄の悪いおっさんに絡まれる――という訳でもなかった。

 冒険者ギルドは立派な石造りの2階建ての建物だった。
 入り口にはようこそ!
 と可愛らしい文字で書いてあった。

 冒険者ギルドの中に入ると、
 まず目に飛び込んできたのはカウンターにいる受付嬢の可愛い子だった。
 褐色で腰まで届いてあるだろう長く鮮やかな黒髪、
 優しげな目をしており、
 そして何といっても耳が尖っているのだ。

 エリルスの記憶で辿り、
 あの子の種族は闇精霊人ダークエルフと言う事がわかった。
 この世界には他にも色々な種族がいる。

 人間
これは普通の人の事を指す。
人間の特徴はステータスがとても低い。だが訓練次第で化ける。
先代勇者も人間らしい。

 精霊人エルフ
精霊の力を使う人と言う意味で精霊人エルフと呼ばれている。
特徴は耳が尖っていて美形が多い。
人間とは違い少なくても500年間生きて居られる。

 闇精霊人ダークエルフ
精霊人エルフと同じで
精霊の力を使う人と言う意味で精霊人エルフと呼ばれている。
特徴は耳が尖っていて褐色で美形が多い。
人間とは違い少なくても500年間生きて居られる。

 小人ドワーフ
人間よりも少し背丈が小さい事から小人ドワーフと呼ばれている。
特徴はとても力強い事。
人間と同じ位の寿命

 悪魔
特徴は真っ黒な角と翼がはえている。
異常なほど高い魔力と攻撃力で破壊の限りを尽くす。
魔物と同じで体内に魔石がある。
寿命は無い。

 獣人ビースト
見た目はあまり人間と変わらないが、
唯一違う所は獣耳が生えている事。
攻撃力がとても高い。
人間とは違い少なくても500年間生きて居られる。

 竜人ドラゴニュート
簡単に言うと獣人ビーストの竜バージョン。
何もかもが桁外れの力を持っている。
伝説の種族。寿命は無い。

 神
あいつの事。

 この8種類の種族がいる。

 そして、次に目に入ってきたのは、
 わいわいと騒ぎながら酒場で酒を飲んでいる若者達だ。
 どうやらここの冒険者ギルドは酒場とセットらしい。

 最後に、目に入ってきたのは。
 泣いている幼い少女だった。
 何故こんな所に幼い少女がいるのか不思議に思いつつ、

 大丈夫?と声を掛けようとした――が、ガラの悪そうなお兄さんがその幼い少女に近付いて、
 先ほどの怖い顔とは比べ物にならないほどの笑みを浮かべ、
 幼い少女と話し出した。
 俺はその光景をみて穏やかな気持ちになった。

 そんな事を思いつつ、受付嬢の所にいった。
 目の前に行くと、
 尖った耳をピクッと動かして満面の笑みで接客をしてきた。

「ご用件は何でしょうか?」

 可愛い……
 と思ったが、表情には出さなかった。

「ギルドカードの作成と魔石を変換したいのだが。」

 俺は身分証代わりにギルドカードを作り、
 ついでに魔石も変換しちゃおうと考えていた。

「えっと、ギルドカードの作成と魔石の変換ですね。
 わかりました。
 では、ギルドカードを作成している間に魔石を変換したいと思うので
 先に魔石をください。」

 俺はあらゆるポケットに無理やり突っ込んだ約30個ほどの魔石を取り出し、
 受付嬢に渡した。

 ポケットから魔石を出している時、
 受付嬢から温かい目で見られていた様な気がしたが
 気にしない事にした。

 魔石を受け取った受付嬢は隣に置いてある袋の中に魔石を入れた。

 その袋は魔石袋と言って
 袋の中に魔石を入れたら袋の中で魔石が変換されるという物だ。
 仕組みは良くわかってないらしい。

 そして、受付嬢は机の引き出しから紙とペンを取り出した。

「では、今からギルドカードを作成したいと思いますので、
 この紙にサインをお願いします。
 もし文字が書けない場合は言って下さいね。
 代わりに私が書きますから。」

 代わりに書いてくれるのか。
 何て親切な所なんだ。
 でも今の俺にはエリルスの記憶があるからありとあらゆる言葉を知っている。 

 まさか、これが大魔王の加護なのか……ってそんな訳ない……よね?

 俺はそんな事を思いつつ紙を受け取った。
 受け取った紙には、名前と年齢と種族を書くだけだった。
 年齢と種族は掛けたが名前をバーゼルドと正直に書いていいのか迷っていた。

 すると、迷っている俺を見かねてか
 受付嬢が話しかけてきた。

「大丈夫ですよ、何を書いても私以外に知れ渡ることはありませんから。
 たとえこの国の王でも見れませんよ。
 でも、自分から見せる時はバレちゃいますけどね。」

 まじかよっ!冒険者ギルドってすげー。
 でもこんな簡単に信用しちゃっていいのかな。
 まぁ、黒髪褐色に悪い奴は居ないだろう。

 知らないけど。

 そんな事を思いながら、紙にサインした。
 字が汚いのは昔からなので気にしなかった。

「お疲れ様です。
 では今からギルドカードを発行しますね。」

 受付嬢は紙を持ち、カウンターの奥に行き、
 数分後に戻ってきた。

「はい、完成しました。
 どうぞ。あとこれ魔石を変換した1銀と85銅です。」

「ありがとう!」

 1銀と85銅。
 この世界の通貨は金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨がある。
 銅貨が100枚で大銅貨になり、
 大銅貨が10枚で銀貨になり、
 銀貨10枚で大銀貨、
 大銀貨10枚で金貨。

 受け取ったプレートを見てみると――

=========
ソラ=バーゼルド
15
人間
G
=========

 と書いてあった。
 うん、シンプルでいいね。

 ちなみにGと言うのはランクで、MAXはSSSだ。
 Sランクまでは一桁だがSランクから次はSS、SSSとなる。
 ランクが高ければ高いほど、
 宿などが安くなるシステムだ。

「これからギルドについて説明をしますね。」

「いや、友人から詳しく聞いているので大丈夫。」

 ギルドの説明もエリルスの記憶にあったので、
 別に説明されなくても大丈夫だったから断った。
 だが、受付嬢はそれが不満だったらしく
 今からクイズを出すので答えてくださいと言ってきた。

 えぇ、面倒臭いな……
 でも、コミュニケーションも大事か。

「では、いきます――」

 結果は全部即答して正解してしまい
 受付嬢が涙目になって凹むという事態になってしまった。
 周りの冒険者から変な目で見られ、
 結局受付嬢の機嫌を取るために説明を一から受けるはめになった。

「――では、以上で説明をおわりますね。
 お疲れ様でした。」

「お、お疲れさま……」

 3時間程知っていることを聞かされ続けられクタクタになりつつ、
 冒険者ギルドの横にある石煉瓦作りの宿屋に向かった。
 宿屋の中はすごく綺麗に掃除されていて、
 カウンターとちょっとした酒場があった。

 そしてすっごい元気の良いおっさんが接客してきたので、
 2泊を頼んだ。

 案内された部屋は、
 ベッドと洗面所とタンスがあるごく普通の部屋だった。

 俺は部屋の中に入りすぐにベッドに向かってル○ンダイブ的な事をした。
 ボフッと優しく体を包み込んでくれ気持ちよくなりそのまま寝てしまった。

・・・・

 目が覚めたら外は明るく、窓から心地よい日差しがさしていた。

「ふわぁ~」

 とあくびをしながら上半身を起こしベッドの上に座った。
 しばらくボケーとしていると何者かが部屋のドアをノックしてきた。

 誰だよ、こんな朝早くから。

 と思いつつドアを開けた。

 そこには昨日元気の良いおっさんが立っていた。

「おお、やっと起きたのか!もう昼だぞ!
 昨日の夕食も今日の朝食も降りて来なかったから心配したぞ。」

 ああ、そういえば。
 この宿は夜・朝の飯つきだっけ。
 それは悪いことをしたな……と思い少し申し訳なそうに話した。

「すいません、昨日は疲れていて、ずっと寝ていました。」

「そ、そうか、あまり無理はするなよ。」

「はい。」

 おっさんはそう言うと元気よく戻っていった。
 それを見届けてから俺は顔を洗い、出かける準備をした。
 今日の予定はまず武器を買う事だ。

 準備が終わり宿を出て、早速武器屋に向かった。

 武器屋には武器を持った爺さんの絵がでかでかと描かれていたので
 此処が武器屋だと直ぐに分かった。

 武器屋の中は、意外と綺麗で
 しっかりと武器が壁などに立てかけてあった。

 暫く武器を眺めていると、カウンターの奥から白髪のお爺さんが出てきた。
 白髪のお爺さんは此方を見て、手招きしてきたのでそちらに向かった。

「あんた、武器を買いに来たのかい?」

 うおっ!シンボルマークと同じ顔だ……
 自分の顔をシンボルマークにするって……ちょっと引くな。

「はい、出来るだけ安い武器を買いにきました。」

 俺の手持ちは少なかったため、
 正直に安い武器を買いに来たと言った方が良いと思いそう言った。

「正直な餓鬼じゃな。ふむ、ちょっとまっとけ。」

 お爺さんは奥に行き、
 数分後――お爺さんは二本の短剣と鞘を持ってきた。
 両方真っ黒な短剣だった。

「ほれ、この武器があんたにはお似合いじゃ。」

 お爺さんから渡され、
 早速二本の短剣を装備した。
 どうやらこの武器は双剣らしい。

 右手と左手で持ち、軽く振り回して見た。
 感想としては……初めて武器を持ったので何ともいえない。

「どうだ、気に入ったか?
 ちなみにそれは3大銅貨じゃ。」

 エリルスの記憶には武器の事は無かったので、よくわからないが、
 取り敢えず安いので買うことにした。

 1銀貨払いお釣り7大銅貨貰うと、
 何故か知らないけど腰巻鞘をプレゼントしてくれたので、
 それも装備して武器屋を出た。

 武器屋を出た俺は特にやる事も無いのでブラブラと歩いていた。

――グウゥウ

「お腹空いたな……ん?」

 何やら良い匂いがして来たので匂いのする方へ行ってみた。
 匂いの原因はゴブリンの串焼きという名の出店からだった。

 ゴブリンの串焼きと言う単語が気になったので出店を覗いて見た。
 するとそこには大きなメニューが置いてあり
 ドデカク、ゴブリンの串焼き50銅と書いてあった。

 メニューのくせにゴブリンの串焼きしかないじゃん!

 取り敢えず美味しいのかは知らないが、
 お腹が空いていたのでゴブリンの串焼きを2本買った。

 出店から離れ、ゴブリンの串焼きを袋から取り出した。
 見た目は普通に豚串に見えてとてもおいしそうだ。

 だが、問題は味だ。
 と思いゴブリンの串焼きを恐る恐る、
 パクリとかじってみた。

 するとゴブリンの肉は口の中に入れた瞬間、
 肉汁がブシャーと広がり、とろける様なやわらかさだった。
 うまい!黒○◯牛の肉みたいだ、
 食べた事ないけど。

 と心の中で叫びながらペロっと2本を平らげた。

 お腹も膨れたので、
 次はレベル上げのついでに冒険者ギルドに行って依頼を受けよう。
 と考え冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドの中にはいると昨日の受付嬢はニッコリと笑みを浮かべながら手を振ってきた。

 俺は昨日の説教を聞いているかの様な地獄の説明の時間を思い出し、
 苦笑いしながら手を振り替えし、
 依頼を探すために掲示板を見た。

 掲示板には、
 魔物討伐から薬草採取や護衛など色々な依頼があった。

 へ~、いろんな依頼があるんだな。
 どれにしようか…… 

「どんな依頼をお探しですか?」

 俺が悩んでいると、受付嬢が此方に寄ってきて
 そう聞いてきた。

 ここの冒険者ギルドは随分とグイグイくるんだな。
 と思いながらも受付嬢に簡単な依頼を選んで貰う事にした。

 理由は俺が選ぶとどの依頼を受けようか
 悩んでかなり時間が掛りそうだったからだ。

「ん~これが良いと思います!」

 受付嬢が選んだ依頼はゴブリン討伐という依頼だった。

 ゴブリンと言えば異世界のテンプレだな。さっき食べたし!
 うんうん。いいね。
 と心の中で呟き、受付嬢に依頼の手続きをしてもらった。

 手続きが終わると

「いってらっしゃい!」

 と、満面の笑みで言われた。眩しいよ。

 ゴブリンの生息する草原は昨日スライムを狩った所の近くなのでそこまで遠くはない。
 草原に向かいながら俺はエリルスの記憶からゴブリンについて調べた。

 ゴブリン。
 または小鬼と呼ばれる。
 特徴は小さく、肌は緑に変色しており、
 顔は醜い。

 ゴブリンは一応独自の言語を持っているが、
 その言葉を使えるのは上位種のみ。
 普通のゴブリンに独自の言語で話しかけても理解できず、
 襲い掛かってくる。

「なるほどな、大体はゲームと同じか――うおっ!?」

 突然、目の前にオレンジ色のスライムが現れた。
 俺は咄嗟に鞘から武器を出し、構えた。
 が、スライムから襲ってくることはなかった。

「ん?」

 襲い掛かってはこないが、
 一応警戒しながら普通のスライムの色とは違ったので、
 魔眼を発動してみることにした。

「魔眼発動っ!」

 と、無駄に派手なポーズをしながら発動した。すると――

=========
オリジナルスライム
Lv1
スキル
言語理解
ファイア
=========

 オリジナルスライム?何だそれはと思い、
 エリルスの記憶を辿った。

 するとオリジナルスライムと言うのは稀に現れる中立の魔物と言うことがわかった。

 このスライムのスキルに言語理解って……
 そう言えばエリルスの記憶の中にスライム語の知識もあったな……
 ちょっと話しかけてみるか。

『おい、そこのスライム。俺の言葉が理解出来るか?』

 普通に話しているが、
 実際にスライム語がわからない人から見れば何語を喋っているのか理解できないだろう。

 スライムに話掛けると、
 スライムはその場でピョン、ビチャ。と音を立てながらジャンプしだした。
 これは理解出来てると取っていいだろう。

 こいつ可愛いな……
 ペットにしたいくらいだ。

「お前、俺のペットにならないか?」

 と冗談半分で言ってみた。
 するとスライムはソラの周りをグルグルと回り出した。

「えっと……これは、ペットになってくれるって事なのか?」

 スライムは俺の足に寄り、身をスリスリと擦ってきた。
 これはペットになってくるって事だろう。
 と確信した。

『んじゃ、まずお前の名前を決めないとな
 ……お前の名前はスラだ!』

 スライムの名前からスラの部分を取っただけの何とも残念なネーミングセンスだが、
 スライムはスラと言う名前が気に入った様で嬉しそうに跳ねている。

『よし、じゃあ早速、狩りにいくぞ。スラ!』

 俺とスラはゴブリンを狩りにゴブリンが生息する草原まで向かった。

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