勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

プロローグ

 暗闇が永遠と続く空間の中、暗闇の底へ落ちていく。
 抗うことも出来ずにひたすら下に落ちていく。
 ボロボロになった体から血を大量に出し、
 死の恐怖に怯えつつも、高理こうりソラは憎んだ。

 勝手に呼び出し、
 能力がないからと言って俺を半殺しにして亜空間に放り出した女王を憎んだ。 
 女王の命令だから仕方ないと言って俺の事を刺した兵士を憎んだ。
 お前の事が気に入らないと言って能力を渡さなかった神を憎んだ――

・・・・

 高校生活。
 楽しいと思う人もいれば、面倒くさいと思う人もいる。
 きっと大半の人は後者の面倒くさいと思っているだろう。
 永遠に土日が続けばいいのにと――

 それは俺、高理ソラも同じだった。
 ただ、俺の場合、学校が面倒くさいと言う事ではなく、
 朝起きるのが面倒臭い、辛い
 と言うより朝が苦手で何時も学校には遅刻していた。

 そして今日も何時ものように朝のHRが始まる時間に登校して、
 校長先生に「遅刻だぞー」と言われ、「すいません」と軽く謝り
 駆け足で教室まで行き、勢い良く扉を開けた。

――ガラガラ、ドンッ!

 勢い良く扉が開かれた瞬間教室にいる皆が音に驚き此方を見た。
 この光景は何時もの事で見慣れている。
 俺はそれを無視して自分の席に向かった。

「おい、ソラ。お前また遅刻したのにもかかわらず
 何も言わずに席に着こうとしてんじゃねえよっ!」

 一番後ろで窓の横と言う最高の場所にある自分の席に付き、
 椅子を引いて座ろうとしたら、担任が怒鳴って来た。

 また、この担任は俺に文句を言ってくるのか……
 ここはいつも通りに答えるか。

「遅刻だと?……あぁ、そうか。
 この世界の時間はアチラ・・・の世界とは流れが違ったな。」

「はあ、確かお前昨日は未来から来て……
 今日はアチラの世界か――後で反省文書いた紙5枚提出な。」

「何だと!?貴様それでも教師かっ!この――」

「あー、それ以上言ったら10枚な。」

「はい、すいません。」

 この先生は毎回同じやりとりをしてくれる意外と優しい先生。
 名前は知らない。
 担当教科は世界史でバスケ部の顧問をやっている。

 そして、朝のHRが終わると俺の席に必ずと言っていいほど2人の男女が寄ってくる。

「ま~た、遅刻かい。さすが遅刻魔だな。」

 ニコニコと笑みを浮かべながら肩に手を回してきた
 この少年は新羅しらぎかおるという。
 見た目はイケメンで性格も良い奴だが、
 実はこいつ重度の幼女好きである。つまりロリコンだ。

「うるせ、何が遅刻魔だよ。
 せめて遅刻魔にかっこいいルビを付けてくれ。かおるロリコンさん。」

「おい、お前!誰かに聞かれたどうするんだよっ!!」

「かおるは、ロリコンだったのか。」

 真顔でそう言いながら此方に来たのは佐山さやまりんだ。
 こいつも見た目はイケメンだが女だ。
 口調も男みたいだが、実は女だ。

 俺も最初の頃は男だと思っていたが、
 一度不慮の事故で着替えを見てしまい、
 その時に女だとわかった。
 びっくりだよ。

 その後、着替えを見てしまった事を正直に話すと別に構わないと言って許してくれた。
 心も広くて男みたいだが天使だ。

「そうだぞ。こいつはRORIKONだっ!」

「おお、そうか!では、かおるの事はロリコンと呼ぼう。」

「何でだよ!!」

「うるせえぞっソラ!!」

 突然、怒鳴られた。
 怒鳴り声を出したのはこのクラスのヤンキー的な存在、
 石田いしだ奈央なおと言う。凶暴な女だ。

「本当にあいつソラの事嫌ってるよな。」

 かおるが奈央には聞こえない様に小声で俺達にそう言ってきた。

 確かに、そう思われても不思議ではない。
 奈央は何かあった時何時も俺のせいにしてくる。
 だが、あいつは俺の事嫌っている訳ではない。

 奈央は昔からの友達であって今では親友だ。
 恐らく、このクラスの中で一番俺の事を知っているのはあいつだろう。

「うるさいだと?じゃあ、
 貴様の怒鳴り声はどうなんだ!」

 言われっ放しというのも嫌だから
 俺はクラスに一人はいる奴みたいな返しをした。

「ああ!?そういうお前だって――」

「喧嘩は良くないですよ。」

 満面な笑みを浮かべて会話を遮って来たのはこのクラスの委員長。
 名を高梨たかなしゆいと言う。
 彼女はこの学校の美女ランキング一位で、
 女神と呼ばれ誰にでも優しく接して何でも自分から率先してやる優等生だ。

 だが、こんな優等生にも裏の顔がある。
 実は彼女は俺と同じ重度の厨二病なのだ。
 彼女と二人きりになった時は何時も厨二トークで盛り上がる。

「ふっ!我が友よ。これは喧嘩ではないぞ!
 これは――そう、世界の終末ラグナロクを懸けた戦争だっ!」

「な、世界の終末ラグナロクですって?
 あっ、――コホン、意味のわからない事を言わないでください。
 それよりもそろそろチャイムが鳴ります席に着いてください。
 あとシャツを出しているとだらしないですよ。」

 厨二ワードに反応してしまった結であったが、
 直ぐに誤魔化し、風紀委員みたいに俺の服装の事を指摘してきた。

「おっと、俺とした事が見っとも無い姿を見せてしまったな。」

「なーにが、俺とした事がだよ。
 お前何時もシャツ出てるだろ。」

「ああ、確かにソラは何時もシャツ出てたな。」

「だろ?なのに此奴誰かに指摘されるとしっかりと直すんだよな。
 だったら初めからシャツ出すなっての。」

 いや、俺も出したくて出してる訳では無いんだが……
 何時も急いでる感を出すため、
 教室まで走って行くからその時に出ちゃうんだよな。

「ちょっと、貴方達!
 チャイム鳴りますよ!!」

「おっと、委員長がお怒りだ。
 ほらほら、お前等早く席に戻れ。」

「あいよ。」

「じゃあ、また。」

・・・・

――カチッ、カチッ、カチッ

 おかしい、とっくに時間は過ぎているのにチャイムが鳴らない。
 それに先生も一向に来ない。

 クラスメイト達も何やらざわついている。

 不思議に思っていると結が立ち上がり、

「ちょっと、先生の事呼びに行ってきますね。」 

 と言って教室の扉を開けようとした――が、扉はビクともしなかった。

「あれ?開かない……」

 何やってんだあいつ。
 新手のボケか?

 戸惑っている結を見た一人の男子生徒が立ち上がり、
 結の隣に行き、声を掛けだした。

「ちょっと貸してみな。」

 ちなみに彼の名前は前谷まえたにトモと言う。
 野球部のムキムキ野郎だ。
 こいつも一応親友だ。

 トモが扉を開けようとしたが、
 扉はビクともしなかった。

「おい、トモ。
 お前までボケてどうするんだよ。」

 俺はその光景をみて思わず
 つっこんでしまった。

「いやいや、ボケて無いぞ!
 本当に開かないんだ。」

「はぁ?」

「ソラもやってみろよ。」

「ふっ、良いのか?俺が力を使えばその様な扉など木っ端――」

「早くしろ。」

「はい。」

 トモにセリフを遮られてしまい、
 若干不快な思いをしつつ、
 俺は扉の前に移動して開けてみた。

「――っ!?」

 だが、扉は結とトモがやった時と同じ様に
 ビクともしなかった。

「なっ?」

「本当だ……でも、まぁ良いんじゃね?」

「確かにな……」

 先生が来なかったら授業もしなくて済む。
 なんて良い事なんだろ。

「良いって……本当にそう思ってるんですか?」

 クラスの大半が嬉しそうな顔をしながら、
 スマホを弄ったり本を読みだしたり寝始めたりし始め、
 そんな光景を見て委員長の結がそんな事を言った。

「え?」

「この扉が開かないって事はずっと此処から出られないんですよ?
 お腹が痛くなったらどうするんですか?
 お腹が空いたらどうするんですか?」

「お、おう……」

「おう、じゃありません!」

「分かったよ。どうにかするから。
 頑張ろうな、トモ。」

「ああ。」

 あまりにもガツガツと言ってくる結に負け、
 俺とトモはクラスの皆と協力して扉を開ける方法を考える事にした。

 それから暫くどうにか扉を開けようと努力した。
 窓を割ってみようともしたが、
 まるで見えない壁でもあるかの様に阻まれた。
 他にもスマホで電話を掛けようともしたが何故か圏外になっていて
 どこにもつながらなかった。 

 全て無意味だった。

「んーどうしたものか……」

 皆が戸惑っていると、
 いきなり放送が流れ始めた。

「あーあーあー」

 その声は少年ぽい声だった。
 皆その声を聞き、なんだなんだ?
 とさらに戸惑い始めた

「やっと繋がった!――おっと、喜んでいる場合じゃなかった。
 えっと、今この声が聞こえている君達。
 君達は勇者に選ばれました!おめでとう。」

「は?何いってんだ?」「いきなりなんだ?」「餓鬼っぽい声だな。」
「ここから出しやがれ餓鬼!」

 クラスの男子達がそう言い放った。
 教室から出られ無くてイライラが積もり、
 口が悪くなり暴言を言って八つ当たりをする奴もいた。

「はあ、口が悪いなー。黙ってよ。」

――ッ!?

 謎の少年が黙ってよと言った瞬間、本当に喋れなくなった。
 声を出そうとしても喉が動かない。
 それ以前に体そのものが動かなかった。

 何だよ、これっ!
 どうなっていやがる!

「ふぅ、静かになった。では、説明するよ~
 君達にはこれから勇者として世界を救ってもらうよ。
 そして、なんと!君達には僕からスキルを一つ授けるよ!
 これから一人一人面接をするからね~。じゃあっ!」

 はぁ?こいつは何を言っているんだ?
 勇者?世界を救う?
 現実との区別が付かなくなった可哀そうな子なのか――なっ!?

 少年の雑な説明が終わると、突然クラスメイトの竹山が消えた。
 それから数秒おきに次々とクラスメイトが消えていった。
 そして、皆が消えて俺は一人ぼっちになり、
 それから数秒後真っ白な空間に移動した。

「――っ!?」

 どこを見ても、真っ白な空間だった。
 目の前には白い翼を生やした青髪の少年が立っていた。
 見た目的に年齢は12歳位だろう。

 何だこいつ。
 その小さな身長にそんな大きな翼生やしちゃって、
 バランス合ってないでしょ。
 かっこ悪い。

 と思っていると少年の顔が歪んだ。

「お前、気に入らないからスキルあげないわ。じゃあね。」

「え?」

 こいつ心を読んだのか!?それよりもスキルあげないって酷くね?
 たぶん俺だけでしょ

――突然目の前が真っ黒になった。

 気がつくと、周りにはザワザワと騒いでいるクラスメイト達がいた。
 周りを見渡し、全員いる事を確認した。
 そして、ここはどこだ?と思いさらに周りを見渡した。

 まず目に入ってきたのは、奥にある巨大な天使らしき像だ。
 かなり大きい、おそらく縦に15mはあるだろう。
 そしてその像の周りの壁には色々な絵が描かれていた。
 草原、川、海、火山、山など他にも沢山描かれていた。

 部屋を見渡していると突然木の扉が開き、
 偉そうな女が入ってきてその後に沢山の兵士が入ってきた。

 女の頭にはティアラらしきものがあった。
 恐らく女王か何かだろう。
 兵士達は槍などを装備していて、
 それを見たクラスメイトの一部が脅えていた。

 ……本当に異世界にきたのか。

 と心の中で思いながら、近くにいた結に話しかけた。
 理由は簡単だ。
 結はこういうファンタジー系が大好きだから良く異世界物の話をしていたからだ。

「おい、我が友よ。これはアレだよな?」

「そうですね、我が友よ。これはアレで間違いなさそうですね。」

 アレ、つまり異世界、ファンタジーの世界の事だ。
 俺と結は二人っきりの時に一々ファンタジーだの言うのが面倒だから
 アレ、と言う事にしている。

「やはりそうか。じゃああの女王見たいな奴は……」

「恐らく、テンプレを言いますね。」

――コホン。

 女王らしき人物が咳払いをすると先ほどまで騒いでいたクラスメイト達が静かになった。

「勇者の皆様、こんにちは。
 私はここリザリル王国の女王、カーラ=リザリルと申します。
 この度は、この世界を救うためにわざわざ召還に応じてくれてありがとうございます。」

「応じてだと?強制的に連れてこられたぞ!」「ふざけるな!」「さっさと返しやがれ!」

 一部のクラスメイト達がそう言った。
 それを聞いた女王は涙を流した。

 うわぁ、本当に結の言った通りの事いいやがった。
 それにしても……あの泣き方は無いだろ……

 俺にはそれが嘘泣きだと直ぐにわかった。
 何故って?そりゃ、恋愛ゲームを沢山やってるからだよ。

 だが、嘘泣きだと分からない連中は申し訳なさそうにしていた。
 中には謝っている奴もいた。

 おいおい、嘘泣きに騙されるなよ!
 あー、見てるこっちが恥ずかしい……
 此処は、ガツンと言ってやるか。

 流石に、見てられなかった俺は女王に向かって言った。

「おいおい、今時の女王様はこんなに 嘘泣き・・・が下手糞なのか?」

 俺は、あえて嘘泣きの部分を強調して言った。
 その言葉を聞いた女王は顔を真っ赤にし、嘘泣きをしながら睨み付けてきた。

 周りのクラスメイトから謝れだの色々と言われたが、
 俺は気にしなかった。
 どうせ女王は俺の事を無視して話を続けると予想していたからだ。

 これは結からよく借りて読んでたラノベで良く見る流れだな。
 まさか、自分がラノベの主人公見たいな事をする日が来るとはな……

 そして、女王は予想通りにソラの事を無視して話を続けた。

「此方の手違いで勇者様方には大変ご迷惑を掛けました。
 でもこの世界を救うまでは帰ることが出来ません……。」

 それから女王は色々と説明をした。
 この世界から帰るには魔王を倒す事、
 この世界の状況など色々な事を説明していた。

「それでは、皆様にはステータスを表示していただきます。
 ステータスは今からお配りするプレートを持ってステータスと念じれば出てきます。」

 全員にプレートが渡され、皆一斉にステータスと念じた。すると――

=============
名前:ソラ=コウリ
年齢:15
種族:人間
レベル:1

体力:100
魔力:60
攻撃力:20
防御力:50
素早さ:20
運:10

スキル

能力

称号


=============

 うぉっ!凄いな……
 流石異世界だ。

 ごく普通だと思われるステータスが表示された。他の人のステータスが気になったので隣にいる結のステータスを見せてもらった。

=============
名前:ユイ=タカナシ
年齢:15
種族:人間
レベル:1

体力:1000
魔力:2000
攻撃力:600
防御力:900
素早さ:200
運:20

スキル
大回復ヒールLv1
ファイアLv1

能力
神の加護:LV1

称号
勇者
=============

「は?」

 俺は結のステータスを見て唖然とした。
 あまりに差がありすぎる。

「どうしました?我が友よ。」

「あ、ああ。えっとな、俺のステータスを見てくれ。」

 結は唖然とした。そりゃそうだろう。
 結から見るとソラのステータスは雑魚同然なのだから。

 結はスキルはもらわなかったの?
 など色々聞いてきたので、正直に全て答えた。

「あの、ショタ神がっ。我が友をよくも……くそったれ」

「おーい、キャラ崩壊してるよ。」

「あっ――どうするんです?我が友よ。このステータスだと流石に……」

「ああ、わかっているさ――」

「皆様、今からステータスを確認するので出したままにしておいてください。」

 女王は一人一人のステータスを確認した。
 そしてソラのステータスを見てニヤリとして、
 「あなたは、ここに残っていてください。」
 と言って他の人のステータスを確認しにいった。

「はい、ステータスの確認が終わりました。
 流石勇者様ですね、皆さんとても強いです!一人を除いてですけど。
 では、これから部屋を移りますのでそこの兵士についていってください。
 勇者ソラは残ってくださいね。」

 この野郎。わざわざ皆の前で言う必要あるのかよ。
 さっきの仕返しか?器の小さい奴め。

 みんなが移動しているときにかおる達が心配そうに話しかけてきたが、
 俺からは説明しないで後から結に聞いてくれと言って別れた。
 そして部屋には数十人の兵士と女王と俺だけになった。

「勇者ソラ。貴方のステータスは雑魚同然です。
 そんな雑魚はこの国に要りません。
 なので貴方には消えてもらいます。」

 うわぁ、本性だしやがったな。

「消えてもらうだと?」

「はい。――やれ。」

「は?」

――グサッ!

「――っ!」

 突然背中に激痛が走った。
 何だ?と思い背中を見ると槍が突き刺されていた。
 槍は俺の体を貫通して床に突き刺さっていた。

 そして、それに気づいた瞬間、数本の槍が俺の体中を貫いた。

――ッ!!

 痛みのあまり声が出なかった。そして刺さっている槍が抜かれ、
 血しぶきがあがった。

 俺は立つ事ができず、その場に倒れた。

「よくやりました。……死体処理とか面倒なので後は亜空間に放り込みましょうか。」

 女王はそう言って、魔法か何かで暗闇を出し、
 俺の事を亜空間に蹴り落とした――

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