死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第58話〜対面〜

 モンブラン王国まであと少しというところで、巨大な何かが馬車の行く手を塞いだ。

「オークの王か!」

 このタイミングでこの場所を襲うのこいつしかいない。イチルは予測で発言する。

「ご名答」

 馬車を瞬時に下りたイチルを拳が襲う。振るわれた拳に反応することさえできずに、イチルは吹き飛び木に激突する。他の二体のヴァンパイアも同様に吹き飛ばされている。

 だが、ヴァンパイアに致命傷を与えることはそうできない。傷はすぐに癒え、イチル達の反撃が始まる。剣で斬りつけても皮膚が固く剣が通らない。

「「「ブラッド・ライトニング」」」

 三人が同じ魔法を同時に発動する。通常の生命体なら跡形もなくチリとなるぐらいの赤い雷がオークを襲う。

「こんなんでは死ねんな」

 皮膚は焼け焦げているものの、雷が消えた場所には五体満足の巨大なオークが立っていた。

「なんだと!」

 オークの王であってもここまで強い個体など見たことがない。そもそも、オークの王がこんなに大きいなんて話は聞いたことがない。イチルの顔に焦りが生まれる。

 一瞬、一瞬だがイチルが視線を外して考えを巡らせる。オークの王はそれを見逃さなかった。その巨体からは想像できない速度でイチルに近寄る。拳は確実にイチルをとらえていた。イチルは吹き飛びながら数本の木をへし折り、何とか速度がおさまる。最初に振るわれた拳とは比べ物にならない威力の拳だ。

 イチルは驚いていた。オークの王にではない。首より下が半身しかない自分にだ。ここまでの重傷を負うのはいつ以来だろうか。傷口に力を込めて再生能力を上げていく。

 だが、それはやってはいけない行動だった。久々に重傷を負ったせいか。久しく強者と戦っていなかったからなのか。安全が確保されていないのに回復を優先してしまっていた。
 
  気づけばオークの王が目の前に立っていた。逃げようとするイチルだが、回復にエネルギーを全て回したせいですぐには動くことができない。半身も再生が終わっていない。

 部下のヴァンパイアが急いでこっちに向かっているが、これは間に合いそうもない。イチルはそっと目を閉じる。イチルには分かっていた。次の拳が当たれば、自分は確実に絶命する。

「俺の名は ウズラ 手向けとして教えてやる。死ね」

 ドゴンッ

 イチルを叩き潰すように振るわれた拳は、イチルには届いていなかった。割って入った何者かの片手によって受け止められていた。

「俺の名はモンブランだ。よろしく」

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