死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第31話〜絶望〜

 遅くなってしまい申し訳ありません。最近忙しいので出せていませんが、必ず完結させますので応援よろしくお願いします!


 目の前に現れたウェアウルフ。咆哮によって放たれたのは、巨大な音だけではない。自分が魔王であることを誇示するような、強烈な威圧。司は、自分の心臓を鷲掴みにされているような感覚に陥り、意識を手放す。

「人間はやはり弱いな。俺の息子と同じ種族とは思えん。お前は楽しませてくれよ、サイクロプス。最近は退屈で困っているんだ」

「よくもモンブラン君を! 命の恩人をよくも!」

 バルクは一気に力を解放する。司に見せた時のように、赤黒いオーラがバルクを包み込む。

「なかなかだな。多少は楽しめそうだ」

 そう言ったシンの背後から、目覚めた司が一気に斬りかかる。完全に死角からの一撃。だが、シンには当たらなかった。頭を狙ったが、首を横に傾けられて回避されてしまったのだ。

「クソ!」

「モンブラン君! どうして!?」

「さっきの人間だよな? 確実に命を奪ったと思ったのにな。腕も治ってる。見間違いか?」

 振り返り際に放ったシンの拳が司の腹部を襲う。

 カハッ

 司は口から大量に吐血する。

「今度こそさよならだな」

 引き抜かれた手によって、司の腹部には大きな穴ができていた。再び地面に倒れこむ。強烈な痛みと共に、司は意識を手放す。

「さあ続きをしようか」

「どうしてモンブラン君が?」

 シンは一気にバルクに接近する。シンの振るった拳をギリギリでバルクが回避する。

「良い反応だな。もっともっと楽しませてくれよ」

 シンの攻撃がどんどん加速していき、徐々にバルクの傷が増えていく。

「クソが! だが、一族の誇りをかけて、命の恩人の復讐はさせてもらう。この命を懸けて」

「いい度胸だ。楽しませてみせろ!」


「ライトニング!」

 シンに向かって放たれる、隙をついた最大限の魔法。司の渾身の一撃は、一瞬で消し飛んだ。たった一振り。シンが魔法に向かって腕を振っただけで消し飛んだのだ。

「さっきからなんなんだ? 腹に開けた穴も治っている。分かった。超高速の再生能力か!」

 司も最大限神経を研ぎ澄ませる。だが、目の前に現れたシンに反応すらできない。

「じゃあな。今度こそ最後だ」

 シンの手の平に、小さな灰色の球体が発生する。

「少し本気を出してやるよ。消し飛べ!」

 司の胸に球体が押し付けられる。と同時に、巨大な爆発が起こる。爆発によって、司の体が消滅していく。

「強すぎる」

 バルクは目にする。司の背後にあった大きな山が消し飛び、綺麗だった滝が消滅している光景を。地形を変える力。バルクは魔王の恐ろしさを垣間見た。

「だが、逃げるわけにはいかん。それが王としての誇り。そして、一人の男に対しての敬意のためだ」

「体も温まってきた。そろそろ強めに行くぞ?」

 バルクは鬼人化を発動し、赤黒いオーラがさらに濃度を増す。尋常じゃないほどの殺気が放たれる。

「殺してやる!」

 バルクの全力で放った拳は、シンの顔をとらえる。衝撃でシンの首がおかしな方向に曲がる。ここぞとばかりに連撃を叩き込もうとするが、一瞬で反撃を喰らう。
 バルクはギリギリのところで防御態勢をとり、致命傷は回避する。だが、動ける程の体力は残っていない。

「なかなかいい拳だったな」

 シンは自分の首をひねって元に戻す。

「化け物………」

 そう言っているバルクの目には、シンの姿など映っていなかった。シンの後ろにあるドス黒いオーラの集合体。

「モンブラン君? なのか?」

 バルクの言葉を聞き、シンも振り返る。そこには薄らと司の姿が映る。

「何だあいつ? 人間なのか? あのオーラは嫌な感じがするな」

 もっともっと力がいる。もっともっと力が。あの魔王にも勝てる圧倒的な力が!

「鬼人化」

 オーラがはれると同時に、司の体が赤く発光する。それだけでなく、黒いオーラが司を包み込む。

「化け物はこいつだろ。これはとんだ掘り出し物を見つけたな」

 シンが真正面から拳を放つ。その拳は、司の手の平で止まっていた。

「!?」

 司が一瞬で蹴りを放つが、シンも防御態勢をとる。少しよろめくシンに追い打ちをしようとするが、それは届かない。

「舐めるなー!!!」

 気づけば、司の腕が体から分離していた。

「少し攻撃が止められたからって調子に乗るなよ。雑魚が!」

 来い! まだ終われない! もっと早く! もっと強く!

 司から離れた腕が、黒いオーラによって体にくっついていく。司の目には自信が満ち溢れていた。生き返るたびに力が増している。この調子でいけば必ず勝てる。

「気に食わない目だな。希望に満ち溢れた目だ。その希望をへし折るのはとても面白い」

 一気に距離をつめたシンに、再び体を貫かれる。だが、体が瞬時に回復を始めようとする。

 この力があれば、どんな敵だって勝てる。痛みなんて怖くない!

「すごい再生能力だな。体を木端微塵にしても蘇るときた。だが、それだけだ。お前自身が強いわけではない。何度でも何度でも蘇ればいいさ。その度に、俺が殺してやるよ」

 球体をぶつけられ、司は消滅する。

 もっとだ。もっと力を! 俺に力を!

 何度も何度も生死を繰り返した。だが、その度にそれ以上の力で叩き潰される。

(無理だ。もう逃げろ。このままでは、また暴走するぞ!)

 俺は逃げない! 俺は強くなると誓ったんだ。 守るためなら命を奪うことを躊躇しはしない。あいつを必ず殺す! 何度でも立ち向かってやる!

 さらに何度も繰り返し、司は自分にあふれ出る力を感じていた。これならいける! 俺は強い!

「鬼人化」

 司は赤くというより、黒さに飲み込まれていく。体が黒く飲み込まれ、顔の判別すらできないほどの色に変わる。

「本当に化け物だな」

「死ねえええ!!」

 正面からの、全身全霊の一撃。一回目と比べれば、天と地の差があると表現しても過言ではないほどの威力。

 勝った!

 そう思った司は現実を知ら占められる。

「お前は人間ではありえないぐらい強い。初めとは見違えて強くなった。俺の息子よりも強いだろう。だが、俺の本気を相手にするのは、まだ早い」

 全力に対しての、全力のカウンターが司に刺さる。司は顔がはじけ飛ぶ。痛みなんて生ぬるいものではないものが、司を襲う。

 やっぱり無理なのか。俺には………。

 再びよみがえった司は、動く気力がなくなっていた。どれだけ生死を繰り返したか。どれだけ強くなったかもわからない。だが、勝てない。その現実が司につらくのしかかる。

「やっと終わりか。だが、お前は使えそうだな。いい暇つぶしになりそうだ」

(おい! 何やってる! 動けよ!)

 シンの手が司に触れようとしたとき、シンを何かが斬りつける。とっさに避けたシンの顔からは、少しだけ血が垂れていた。司との戦闘で一滴も血を流していないシンが、血を流したのだ。

「この人間は勘弁してもらおう。彼は我らの【王となる】存在だ。流石に魔王シンと言えど、この数相手は厳しいだろう?」

 司を取り囲んだのは、貴族のような可憐な服を着た集団だった。

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