死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第23話〜因縁〜

 移動を始めて二日目の昼ごろ、司たちの目の前にそれは現れた。

「その人間をこちらに引き渡せ!」

 それはゴブリンだった。ルギス達はなぜそんなことを言うのか分からず、頭の上に?が浮かんでいた。だが司にはわかる。自分がゴブリンに呼ばれる理由。あのときの実戦訓練に違いないだろう。

「なぜそのようなことを言うのじゃ?」

「そいつとその仲間がロードと仲間をたくさん殺したからだよ!」

 オルドの質問に対して、激しい口調で返すゴブリンのリーダーらしき個体。

「それは勘違いじゃろう。つかさ………モンブランはそんなことをする人じゃないさ!」

 自信満々で相手の嘘を確信しているオルドの表情に、司は耐えきれなかった。別に隠すことではないが、そういえばこの話はしていなかった。実戦訓練という名目で魔物を殺したこと。

「俺の仲間は確かに魔物を殺したんだ!」

「「え?」」

 疑問の表情になっていくサイクロプス達。これでこの旅も終わりか。流石に魔物を殺す奴と一緒にはいてくれないだろうな。短い間だったけど楽しかったな。

「すまないが少し時間をもらう。無理にモンブランを奪いに来るなら、こちらも相手になるぞ?」 
 
 ルギスの威嚇のような言葉に、ゴブリン達は少し距離をとる。ステータス的にも遥かにサイクロプスの方が上。ゴブリンに勝ち目などあるわけがない。
 
「詳しく聞かせてくれるか?」

 オルドの言葉通り、皆にすべてのことを話した。実戦訓練で仲間がゴブリンを殺したこと。ゴブリンロードのこと。その時は魔物を殺したのを見て喜んでいたこと。魔物に知性があるのを知らなかったこと。

「モンブランは魔物を殺してないのかい?」

「そうですね。でもそれは殺す力がなかっただけで、力があれば殺していたでしょう。殺したのと何も変わりません」

「そうか、辛かったな。正直、魔物を殺したかなんてどうでもいいんじゃ。私たちは今のモンブランを知っている。それに、私たちも他の種族の命を奪う。世界に殺しは溢れている。仕方のない殺しというのも勿論ある。そんなに自分を責めなさんなよ」

「打ち明けてくれてありがとう」

 改めて考えてみると自分が怖くなる。教わったことを信じ、命を奪って喜ぶ。魔物が何をしたわけでもないのに。食べるわけでもなく、ただ魔物だから殺す。あの本を読んでいなかったら、自分もそうなっていたかもしれない。司を底知れない恐怖が包み込む。

「ゴブリン達よ、意見は固まった。我々サイクロプスはモンブランを引き渡しはしない! この人間はゴブリンの命を奪っていないし、なにより、俺の命の恩人だ! これ以上邪魔をするなら覚悟しろ」

 ルギスの言葉に司は驚く。魔物を殺しているのに、そんな自分を庇ってくれる。ありがとう。

「くそ! サイクロプスには勝てない。だが、時間なら稼げるぞ! 全員! 攻撃開始だ!」

「どうやらそうとうモンブランが気に入らないらしい。女とテウスは下がっていろ。ゴブリンごときに負けるわけがない! ゴブリンを殺せ!」

 ゴブリンとサイクロプスの戦闘が始まった。ルギス達が戦っているのに傍観するわけにもいかず、司も戦闘に参加する。だが、できるだけ殺しはしない。なるべく急所を外して戦意をもぐように立ち回る。

 しばらく時間がたち、ゴブリンの数は半分ぐらいになった。それでも百ぐらいはいるように思える。何かがおかしい。動きに連携などが入っていて、とても強く感じるのだ。実戦訓練のときのゴブリンロードでさえ、これほどの数は従えてなかった。そして、連携などをとっていた印象はない。王が死んだのにどうして、これが復讐の力か。

「そういうことか! 全員撤退だ! 王が来るぞ!」

 オルドが声を張り上げる! 何を言ってるのか司には理解できなかった。王は花音が殺したのに、何体も王がいるのか? 司がそう思った瞬間、オルドの言葉の意味を理解することになる。

「待たせたね部下たち。後は任せなさい」

 そういって現れたのはゴブリンロードよりもさらに大きな個体。その後ろにはゴブリンロードが何体も確認できる。ウソだろ?

「くそ! 間に合わなかったか」

「こいつが例の人間ね。必ず殺すから覚悟しなさい」

「死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く